妊婦検診はずっと順調だった。
一般的には、
胎動を感じるようになるのは、
妊娠五ヶ月あたりからと言われている。
私は四ヶ月の時すでに胎動らしきものを感じていて、
「この子は絶対男の子だ。」
と思っていた。
夫は常々、
男の子がほしいと言っていたので、
毎月の妊婦検診も楽しみでしかたなかった。
妊娠五ヶ月に入ると、
胎動はより一層頻繁に感じられるようになった。
毎日、
私のお腹の中で元気に動いている。
しかし先月から、
私は腹痛に悩まされるようになった。
もともとお通じがあまりなく、
腹痛はいつものことであったため、
気にもとめずに過ごしていた。
6ヶ月検診が近づくにつれて、
私の腹痛は激しさを増してきた。
特に階段を登ってるときや、
ノンを抱っこしたときに限って腹痛がおこる。
「…一応、次の検診で先生に言ったほうがいいかな?……」
私は若くして結婚したため、
まわりはまだ結婚しておらず、
すぐに相談できるママ友がいなかった。
知識もなかった。
私はおとなしく検診を待つことにした。
6ヶ月検診の三日前、
ノンが三歳の誕生日を迎えた。
三人でケーキを囲み、
色んな話をして盛り上がった。
「ノンはねぇ~、アカチャン妹だったらいいな!」
「…パパは男の子がいいなぁ…」
お腹の子が産まれてくるのを、
皆楽しみに待っていた。
六ヶ月検診は三人で行った。
この時も変わらず、
「順調です。」
と言われ、
安心して帰った。
私は家に帰る車の中で、
「そういえば腹痛のこと言うの忘れてたなぁ……ま、いっか…問題ないって言われたし……大丈夫だよね。」
そんなことをぼんやりと考えていた。
六ヶ月検診からわずか五日後、
私は朝から激しい腹痛に襲われた。
またいつものお通じかな?
と思ったが、
すぐに痛みがひいたこともあり、
わずかな出血など気にもとめずに、
この日もノンを連れて家を出た。
久し振りに、
隣町に住む母と一緒に買い物に出掛けた。
お昼頃、
やはり腹痛……
なんか変だな……
私はここにきてやっと異変に気がついた。
母に心配かけたくない…
いつも通り、
お昼を実家で食べたら、
家に帰るふりしてすぐに病院に行ってみよう……
実家でお昼を食べたら帰るのがいつものパターン。
しかし、
食べている間にもまた腹痛が襲ってきた。
なぜか、
これはヤバイ!
と感じた。
ダッシュでトイレに駆け込んだが、
プクーッと膨らませた水風船のようなものが、
股の間から出てきてしまった……!
とっさに、
「羊膜と羊水だ!」と直感した。
だが私はどうすればいいかわからず、
『ばーちゃん!、ばーちゃん!!』
とトイレから叫んだ。
母はビックリして駆けつけると、
私の姿を一目見るなり、
『あ、あんた!そのまま動かないでよ!今、救急車呼ぶから!!』
と、母はすごい剣幕で怒鳴りつけ、
電話が置いてある居間へと駆け出した。