今日はある投稿についての感想を元に
電子ピアノではピアノが上手くならないのか、
美しい響きの習得は不可能なのかについて、
私の思うところを書いてみようと思います。
No Music, No Life が人生の合言葉
【ピアニスト×研究者×音楽起業家】の
高島登美枝です

ことの起こりは
FBのフィードに流れてきた
とあるピアノ指導者の方の投稿。
電子ピアノの生徒相手のレッスンは粗悪品?
そのお方のお教室は
電子ピアノ不可。
アコースティックピアノの生徒しか
受け入れておられないそうです。
個人特定を避けるために
投稿本文の引用は避け
要旨だけを箇条書きで書きますが、
その方の主張は…
・生にこだわるのは美しい響きのため
・美しい響きの習得は電子ピアノでは無理
・電子ピアノ可とした方が余程儲かる
・儲けを度外視して生にこだわるのは
生徒のため
・ピアノ指導とはいわば
大量生産品ではなく職人の一点もの
・自分は粗悪品を売りつける職人には
なりたくない
・自分と違うこだわりのある指導者が
いてもいい
・と言いつつ、
電子ピアノに甘んじている生徒には
こっそり塩対応していることも記載
…だそうです。
うーむ
この方の主張に耳を傾けると
電子ピアノの生徒様が大勢いる
《高島ピアノ塾》は儲け主義の教室で
そういう生徒様を平気で教えている私は
粗悪品を提供する職人ということ?
…ていうか、実はこれまでも
そういう目で見られてたんかい
いやはや…
でもね、本当に電子ピアノでは
上手くならないんでしょうか?
私の生徒様には
子どもの頃から電子ピアノでしたが
音高に受かったコがいます。
(さすがにその後グランドを買いましたが…)
関西の音大卒の生徒様で、
結婚後東京に住むことになった際に
事情によりピアノを手放して
電子ピアノのみになったものの
プロとして演奏活動をしている方もいます。
それよりなにより、私自身が
ピアノ専攻学生時代の3/4の期間を
電子ピアノで過ごしました。
確かにこの3人とも
折に触れてグランドの練習室レンタルは
行っていましたけどね。
でももし「所有楽器は?」と尋ねられたら
電子ピアノと答えざるをえない状態。
もしこの投稿の先生のところに
この3人が入会お問合せをしていたら
(絶対あり得ませんけど…笑)
門前払いを食わされていた、
ということになります。
不動産価格と住宅密集度の相違
このお方のお住まいのエリアは地方。
おそらく戸建ての購入が容易な環境、
…というか、ありていに申し上げて
地価の安い地域なのだと推測いたします。
あいにく《高島ピアノ塾》の所在地は
東京23区のど真ん中。
(旧江戸市街地で古地図にも出てまっせ)
この辺りの不動産販売価格は
50~60㎡のマンションですら新築なら5千万台
戸建ては広さにより7千~1億ぐらいです。
ちなみに私の実家のあった大阪の豊中は、
投稿主様のお住いの地方よりも都会ですが
その豊中と比べても
うちのエリアの不動産価格は
3倍くらい高いです。
(実家を売却したときの安さったら)
ですから、うちの生徒様の大半は
マンションにお住いです。
必然的に電子ピアノ率は高いです。
しかも、この辺りは
超・住宅密集地域です。
マンションどころか、戸建てであろうと、
アコースティックピアノを入れるなら、
防音室は必須。
アコースティックピアノを買い
更に防音も施すとなると
最低でも200万ぐらいは
見積もる必要があります。
これを入会希望者に要求することは
私にはとてもできません
在籍者にだって言えませんよ。
せいぜい「生だと上達が早まりますよ」
と婉曲に勧める程度です。
良い響きを理解できる耳が必要
そう。確かに
良いピアノを使うと
「楽器が教えてくれる」面があるので、
上達が早まる可能性はあります。
但しそれには条件があります。
まずピアノを弾く本人が
響きの違いをを聴き分ける
耳を持っていること。
端的に言うと、
倍音をキャッチできる能力です。
この能力がなければ
どれほど良い楽器も猫に小判。
一説によると
倍音を聴き取れる能力がある人は
30%ぐらいだといいます。
この能力が
教育によって育まれるものなのか、
天性の素質なのかは
私にはわかりません。
ただ幼児期から
ピアノ・エリートとしての教育を
施されてきた方でも
倍音を聴き取れない方は大勢いますし、
全くの素人さんでも
聴き取れる人はいます。
ちなみに
私の受けた導入期ピアノ教育は
本ブログの愛読者様はよくご存じの通り、
実にひどいものでしたが、
私は倍音を聴き取れます。
自分でも聴こえてる実感があるし、
大師匠とアシスタントの師匠からも認定済み
だからこの能力は
教育の質の問題ではなく、
天与の才能である可能性が
高いのではないかと推測しています。
もちろん倍音が聴き取れるということは、
ピアノ上達に必要な能力の
ごくごく一部に過ぎません。
聴こえなくても上手くなります。
ただ倍音を聴き取れる子供は
間違いなく音楽好きになりますね。
楽音が一種の生理的な快感になるからです。
練習で自分の出す音が耳に心地よいので、
練習が苦にならない傾向が見られます。
タッチに繊細に反応する楽器が必要
もう一つの条件は、
そのピアノが超高級楽器で、
かつ良好なコンディションで、
弾き手のタッチの違いに
繊細な反応を返せるものであることです。
我が大師匠のレッスン室には
スタインウェイとベーゼンドルファーの
フルコンが鎮座ましましておりまして、
それはもう実に神々しい光景なのですが、
不肖・高島、
うちでばっちり弾けてるつもりでも
レッスンに行ってこの楽器で弾くと
「あちゃ~」ってことが
ままあるわけですよ
うちのピアノはヤマハのG3ですが、
2年前にハンマーをレンナーに交換し、
発音時の鍵盤の深さも、
上から2~3mmに調整してあります。
つまり、スタインウェイに近づけるよう
手を加えています。
おまけに、上に書いたように
私は倍音を聴き取ることができます。
大師匠のメソッドは
響きの美と多彩さの追求を
目的とするものなので、
自主練習時には注意深く響きを聞きながら
タッチを修正していますが、
それでも、うちの楽器よりも
遥かに繊細な反応を返してくる
高級ピアノに向かうと
自分の楽器では表面化しなかった欠点が
もろに晒されることになるのです。
逆に言うと、
国産の7桁程度のピアノでは
大味な反応しか得られない、
ということですね。
いわんやアップライトをや、です。
(↑漢文の構文と訳し方、覚えてる?)
ですから、
グランドを所有している私ですら
本当に練習の効果を上げようと思うなら
状態の良い欧州ブランドのフルコン楽器を
たまにはレンタルする必要が
あるということになります。
結局、最高級ピアノが
弾き手に教えてくれるものに比べたら
うちのグランドも、
アップライトピアノも、
電子ピアノも、
大して違いはない、ということです。
フルチューンナップしたF1車に比べれば
国産車だろうとおベンツだろうと
しょせんはただの普通車、
…と言えば、わかりやすいでしょうか。
そしてF1車は
わずかのハンドルさばきの狂いでも
大事故につながるのです。
↓藝大の第6ホール。
ピアノは当然スタインウェイのフルコン。
これくらいの音響空間と楽器で毎日練習出来たら
そりゃうまくなると思いますよ。
電子ピアノでも奏法に反応する
この話とは全く逆ですが、
安い(10万台の)電子ピアノだって、
いまどきの製品なら
タッチによって音は相当変わります。
実際、私、とあるバレエ講習会で
そのテの安い電子ピアノを
いやいや弾いていたことがあります。
(そりゃ、私だって電ピは好きじゃない)
その際に、講習会の主宰者の老婦人から
「あなたの音は
他のピアニストの音と違うわね。
こんな電子ピアノでも
人によってずいぶん変わるものなのね」
と言われた経験があるのです。
当時既に大師匠のメソッドで
奏法改善を始めていた時期でしたから、
電子ピアノを弾くときも
その弾き方を心掛けていたんですよね。
他のピアニストは
ロシアピアニズムではなかったので、
その違いが出たのだと思います。
電子ピアノでは、奏法によって
響きの豊かさ、つまり、
倍音の含有量と質、共鳴の多さが
変わろうはずもないのですが、
レガート奏法と
打鍵スピードや圧のコントロール、
打鍵時の夾雑音が少ないことなどが
関係していたのでしょう。
この指摘をくださった方ご自身は
音楽専門家ではないのですが、
その方のお嬢様二人は
プロのピアニストで、
お一人はアメリカで活躍中、
もうお一人の旦那様は
読響の団員という
音楽専門家だらけの環境で
暮らしておられる方ですから、
その評価は信頼できるものでしょう。
つまり、安物の電子ピアノであっても
良い奏法で弾けば、
その楽器なりに美しい音を
奏でてくれるということですね。
電子ピアノか生かは上達と無関係だと断言します
結局、指導する側が
出てきた音「だけ」からしか
響きづくりの指導ができない場合は、
アコースティック・ピアノ所持に
こだわらざるを得ないのだと思います。
出てきた音をよく聴くという
学習態度を教えることは
非常に重要です。
上に何度も書いたように
「楽器がタッチの良し悪しを教えてくれる」
面は確実に存在しますから。
しかし、よく考えてみてください。
楽器から出てきた音は
返却されたテスト用紙のようなものです。
それにより、自分のやった勉強が
正解だったのか不正解だったのかが
わかるというだけです。
それを見て(聴いて)
反省すべきところは反省して
次回の改善に繋げることはできますが、
既に出した答案も出した音も
もはや消すことはできません。
楽器が教えてくれることは
確かに重要な情報ではありますが、
しょせん後の祭りなのです。
本当に大切なのは、
テスト用紙に解答を記入するまでの
試験勉強の段階、
ピアノ演奏に話を戻すならば
打鍵前の身体操作と
打鍵に伴う楽器操作の過程です。
響きを整えるためには
奏法を変えねばならず、
奏法を変えるためには
身体使いを変えなければなりません。
これを裏返すと、
生徒が倍音を聴き取れない場合や
生徒の所有楽器が
高級ピアノでない場合(笑)は、
ピアノに向かう基本のフォームや
体軸や腕の軸の感覚、
全身の骨と筋肉のコントロールといった
身体の使い方からアプローチすることで
楽器の反応から学べない分を
カヴァーすることができるということです。
…てか、大師匠門下に入門するまでの
私がそうだったのですが、
響きを聴き分ける耳だけ発達していても
それをどうやって自分で作り出すかの
確実なノウハウを知らず、
偶然の幸運に頼るのは、
なまじ響きの良し悪しがわかるだけに
苦しいだけです。
指導者のやるべきことは
「こういう身体の使い方をして
こういう楽器操作をすれば
こういう音色が出せる」
…という公式を
生徒に体得させることです。
その前提として、
「自分の身体を繊細に感じ取る力」を
生徒の中に育てていくことが必要です。
大人でも、
舞踊やスポーツの経験が乏しい場合、
自分の身体なのに、
ちゃんと感じられない部分があることは
結構よくある話です。
子どもの場合は、
身体という乗り物に
魂がまだ馴染み切っていないので、
大人よりも難しいでしょう。
でも、バレエの子どもたちを見ていると、
さすがに幼児は無理ですが、
早いコだと小学校1~2年生で、
こういう感覚を発揮して
自分の踊りを
自分で修正できるようになり始めますから、
ピアノでも可能なのだと思います。
もちろん、出た結果(出した音)の
良し悪しを判別することも
指導者の実演を通じて
教えていかなければなりませんが、
当の生徒が倍音を聴けなければ、
結構な「賽の河原」になります。
そういう場合も、
身体使いからアプローチする指導ができると、
生徒側も耳ではなく身体を通して
良い響きを体感することが
できるようになります。
良い響きの出せる身体使い、楽器操作は、
力学的にバランスが取れているので、
釣り合いによって無駄な力がスッと抜けるのを
実感できるからです。
要するに「楽に弾ける」のです。
身体使いは、外見にも
相当に反映されますから、
現時点ではまだまだ音響のひどい
オンラインレッスンの場合でも
画面に映る生徒のフォームをもとに
それなりに深い指導を行うことが可能です。
そして、生徒の側も
身体操作からピアノを捉えるという
発想が身に付いてくると、
一流演奏家のYoutube動画からも
学びを得ることができます。
…というわけで、
電子ピアノでは美しい響きの習得は不可能
という言説は
嘘八百の「悪しき神話」なのです。
ピアノ指導者という専門家が
これをしたり顔で喧伝するのは
諸事情でアコースティックに手が出ない人に
いたずらに劣等感を抱かせる
奇妙なマウントでしかないと
私は考えてしまうんですよね…。
みなさんはこの問題、どう思われますか?


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