漢字では「無花果」と書きますが、花がないわけではありません。
いちじくは実の中に小さな花をつけるために、外から見ることができないだけなのです。
いちじくの実を半分にカットすると赤い粒々がたくさん詰まっていますが、あれが花なのです。
いちじくの起源
いちじくは旧約聖書や古代エジプトの壁画にも登場します。
アダムとイブの物語に出てくる「禁断の果実」とはいちじくのことですし、
アダムとイブが裸を隠すのに使ったのがいちじくの葉です。
これらのことを考えてもいちじくは歴史の長い果物だと思います。
いちじくはイラクサ目クワ科イチジク属の落葉樹木で、原産地は西アジア、アラビア南部とされます。
その後ヨーロッパからペルシャ、中国へと伝わり、日本には江戸時代に中国から伝わりました。
いちじく 名前の由来
中国では「映日果」と書きますが日本語読みで「エイジツカ」がなまってイチジクとなったという説の他、
一日一個ずつ熟すから、または一カ月で熟すから、「一熟」となったという説などあります。
最初に書いたとおり実の中に花をつけ外からは確認できないために「無花果」と書くこともあります。
いちじくの主な品種
日本国内で現在、主に流通している品種の約8割は「桝井ドーフィン（ますいドーフィン）」
という品種です。その他には「蓬莱柿（ほうらいし）」や「とよみつひめ」、
「ビオレ・ソリエス」などがあります。
また最近では、バナーネやキング、コナドリアなど海外の白いちじくの栽培もされるように
なってきました。
いちじくは大きく分けると夏果専用品種と秋果専用品種、夏秋兼用品種の3種類があります。
前出のキングは夏果で大玉品種になり、蓬莱柿は秋果となりやや小さめの品種になります。
主に流通している桝井ドーフィンは夏秋兼用品種となります。
夏秋兼用品種の「とよみつひめ」は2006年に交配育成された福岡県のブランドいちじくで、
福岡県と栽培契約を締結した生産者と生産団体にしか栽培することができません。
フランス原産のビオレ・ソリエスは幻の黒いちじくと言われ、
9月中旬から10月に収穫される秋果専用品種です。
栽培が難しく日本国内では限られた生産者しか栽培しておらず、
果皮が弱くキズ付きやすいので流通にも難があるためにあまり見かけることはありません。
主な産地は私が確認したものでも佐賀県と新潟県佐渡市のみです。
佐渡産のものは新潟市などで見かけますので興味のある方は注意して見てください。
桝井ドーフィン
桝井ドーフィンはクワ科イチジク属のドーフィンという品種です。
では何故「桝井ドーフィン」というのでしょうか。
ドーフィンを日本に持ち帰った桝井光次郎氏に敬意を表して、
日本では「桝井ドーフィン」と呼ばれているのです。
桝井氏は広島県の種苗業者で北米産の苗木を持ち帰り兵庫県川西市で栽培・育成し、
栽培のしやすさと日持ちの良さから全国に広がっていきました。
収穫時期は8月から10月頃です。
【ドーフィン（埼玉県産）】
果皮は赤褐色となり、白い果肉の中心が淡い赤色になります。
ほどよい甘さがあり、さっぱりした風味です。
蓬莱柿（ほうらいし）
【蓬莱柿（福岡県産）】
江戸時代に中国から伝わったとされる品種で「日本いちじく」ともいわれています。
主な産地は関西以西で広島県尾道が最大の産地です。
蓬莱柿はお尻の部分が割れやすく日持ちがしないため、関西以外にはあまり出回りません。
果実はやや小さめですが、甘味の中にほどよい酸味があり、ねっとりとした口当たりが特徴です。
（ブログ管理者より 新潟県内の直売所やスーパーでたまに見かけます。新発田市産のイメージ。）
とよみつひめ
「とよみつひめ」の（みつ）は蜜のことである。つまり甘いということです。
糖度は約18度ですが、ただ甘いだけでなく酸味や苦味、香味のバランス、
さらに温度や湿度によって食味の感じ方が変わってきます。
ビオレ・ソリエス
フランス原産で新潟県佐渡市など一部の地域で少量生産されています。
佐渡産は「小木ビオレー」という商標で販売されています。
果皮の色が深い紫色をしていて、果実はやや小さめです。
果肉は柔らかく糖度は20度以上にもなるものもあります。
【小木ビオレー（佐渡市産）】
（野菜ソムリエプロ 木村純一）