平成28年7月6日
文部科学大臣 馳 浩 殿
文部科学副大臣 義家 弘介 殿
都立武蔵高校教諭 高橋 勝也 殿
横浜の教育を考える会 代表 湯澤 甲雄
横浜市南区大岡3-41-10電話045-713-7222
<公立学校における主権者教育の正道について>
7月6日産経新聞は、「主権者教育の今後の課題について」義家文科副大臣と高橋教諭の両公務員の意見交換が掲載されていました。
その授業方法について高橋教諭は「テーマ設定を明確に行い、生徒同士に議論を促す手法は効果的。生徒は他の生徒の本音を知りたがっているので、むしろ教員が話すより議論が活発化する」と議論重視の授業を提言しました。これに対し義家氏は、「若手教員の参考になるような優れた授業実践例を集めて全国に発信したい」とのことでした。
一般国民の立場からこの意見交換を見ると、副大臣も教諭も、換言すると、文科省本省も現場の教師にも、<憲法前文1項において「我が国は自由民主主義を原理とする政治を国是とし、これに反する法律は一切排除する」と立憲され、憲法第26条において「教育は法律の定めるところにより行われる」並びに、憲法第73条(内閣の事務)4項「法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること」と規定され、このような憲法の精神に則り制定された教育基本法第1条(教育の目的)「教育は、人格の完成を目指し、平和で自由民主主義国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とした>諸準拠法規を全く無視した法令違反の教育行政を行うことを良しとして疑っていない由々しき姿が見えます。
昭和21年連合国軍の占領下にあり、日本国民の主権即ち憲法で言う「国民の領土と基本的人権」が存在しない時代に制定された憲法は、「主権」の具体的内容は空白にされてきました。昭和27年サンフランシスコ平和条約により日本国に領土が返還され個別的、集団的自衛権が認められて「主権」の一部が回復しました。その後、昭和54年国際人権条約(社会権規約、自由権規約)を締結し、憲法第98条の最高法規としたことにより、「日本国民の基本的人権」が確立し、国民の主権の全体の法的枠組みがようやく定まりました。
主権である基本的人権とは、国際人権条約によれば<「基本的人権」(=fundamental human rights=recognition of the inherent dignity and of the
equal and inalienable rights of all members of the human family is the
foundation of freedom, justice and peace in the world,)「締約国が認定した国民の家族や共同体の人々が歴史的に形成した尊い習俗(習俗宗教、天皇制、伝統文化、法律等)や人間愛(道徳)等を世界の自由、正義、平和の基本とする」
>ことであり、締約国は国民のこれを尊重することと規定しています。
我が国では、領土と基本的人権の具体的内容に関する国会における認定(recognition)が未済です。なお、教育基本法第2条(教育の目標)にある「個人の価値の尊重」「他国を尊重し」は、中学校公民教科書の「個人の権利の尊重」を含め、国際人権条約は認めていない言葉であり、我が国が占領下の時代にあった特殊な誤った言葉であると理解されます。
また、国際人権条約には、主権者としての権利(=「基本的人権」)と並んで、主権者としての義務(国際条約3部にある「合計32条文」、憲法では第12条(「個人の自由と権利」と第14条から40条に至る条文)を定めていますので、教育公務員として主権者教育に当たりこれらの義務条文も必修させなければなりません。
即ち国際人権条約で言えば、次の教育です。
<国民の個人が天賦の自由を享受するために、国連は32の条件を創設して条文とし、これを国は「個人の自由と権利」として司法制度の充実等によりこれを保障し、尊重しないこと。
(the ideal of free human beings enjoying civil and political freedom
and freedom from fear and want can only be achieved if conditions are
created whereby everyone may enjoy his civil and political rights, as
well as his economic, social and cultural rights,>
<「天賦の自由をもって生まれた個人」は家族や共同体の人々に尽くす本分と基本的人権の増進擁護に努める責任を果たす義務を負うこと、(=the individual,
having duties to other individuals and to the community to which he
belongs, is under a responsibility to strive for the promotion and
observance of the rights recognized in the present Covenant,)>
我が国を含む国連憲章全加盟国はこの国際規範の遵守を既に国際公約しており、この国際規範は憲法の最高法規であることは前記の通りです。
以上は主権者教育には欠かすことのできない絶対的に要求されているものであるので、頭を切り替えて真剣に取り組み、国際社会に伍していける国際人を育Teigenn 成する教育を推進すべきです。
以上