かつてここは | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

地球 未来 寒冷化 画像

地球外生命体 宇宙人 イラスト 画像

「かつてここは」


「水都……? 都はどこにあるんだ?」
「真下だ、俺たちのケツの遥か下にある。いまはサカナたちが住んでる」
 水平へと陽が落ちてゆく、彼ら二人を乗せたボートは中空に漂う羽根のように揺られ続けている。
 風は音すらあげず、そして遅れて波が届く。
 静謐は無音よりも多弁だ、そこが既に気配さえ失われた世界だと語り続ける。

 なんど見渡そうにも周囲には水面とそれを分ける水平線しかない。
 一定の間隔で送電線が伸びている、そしてそこには休む鳥が小さく見えた。

「行き先は……ねぇな、もうさ」
「好きな方角へ漕いでくれていいぜ」
「自由すぎるってのも困っちまうな」
「牢獄とどちらがいい?」
「……メシが食えることに関してのみ牢獄、それ以外はいまのほうがいいね。お前は?」
「どちらにしても同じ結果が待ってる。そう思えば、昨日よりは今日がいい」

 かつてここは。
 かつての此処は、栄華を極めた都市だった。古い地図にはそう示してある。発行年月日は滲んで読めない。
 だが、読めたところで彼らに年月日は意味をなさない。時間すらない、小窓から見る朝と夜しかなかったからだ。

「で。せっかく逃げ延びたんだ、せめてビールくらいなんとかならないか」
「何処かから流れてくるのを待つしかないな」

 ふたりは笑い合う。シャツは片袖を失くし、首に光るチェーンはその先端に羽根を模したヘッドがついている、だが、泥にまみれ酸化し、光沢はない。

「そろそろトイレを見つけないとな」
「周り全部トイレみたいなもんじゃないか」
「腹のなかに……腹のなかにカギがある」
「カギ……? どこかの金庫か、それとも……?」
「開いちまった空の蓋を閉めるカギだ。いまさら遅いような気もするけどな。でも、早いとこ閉めてしまわないと……」
「次の雨で俺たちがアウトってわけか」
「察しがいいな」

 見ろ、ひとりが言う。
 視線のさきには月が蒼く目覚めていた。
 夜の世界を冷たく支配するそれに空を閉める蓋がある。
「俺たちの祖先はあの裏側に住んでいたんだ。この地球って星に住んでた生命を絶滅させるために、空の蓋を開いたらしい」
「へえ……俺たち以外に知的生命が……」
「すべての生命がそう思ってるってことだ」

 無造作にチェーンを引きちぎる、そしてその羽根を掲げる。
 月の表面が点滅する。一定間隔ごとにそれは停止し再開する。
 その光は徐々に近づく、巨大な影が輪郭を伴い、やがてそれが何であるのかが目視できるまでに近づく。

 水面に浮くボートのうえのふたりの前に、現れたのは船だった。
 
船 宇宙船 使徒 画像



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