
見渡す限りは青白く、かすかな光を跳ね返す氷の大地でした、凍結したその上を、滑らないようにそろそろと彼は進んでゆきます。
まるで無音の世界でした。熱源や音などを感知するセンサーの作動する機械音だけが氷原に響き、その反射した音に反応してしまうほどの静寂でした。
GT400はまだ全機能を稼動できるほどに回復していません。
どれくらいの時間を活動停止してしまっていたのか、また、なぜ再起動に至ったのか、それもまだ自分では分かりません。

その地の表面温度はマイナス90度から150度と彼は計算しました。
特定の菌類を除けば、命が生存できる温度ではありません、また、空は泥を重ねたような雲が広がり、左眼を望遠レンズに切り替えても、眠りから覚めたばかりに見た星たちのきらめきは見ることができません。
「おかしいな」
彼は不思議に思います、最初に見たあの光はなんだったのか分からないからです。遠い記憶が瞬間的によみがっただけなのでしょうか。
見上げる空は夜なのか昼なのか、それさえも区別がつかないのです。
内蔵エネルギーの消費を抑えるため、GT400は進むべき方向を探るセンサーだけを働かせることにしました。
感覚を研ぎ澄ませ、熱、音、光のどれかを感知しようとしています。
北から吹く風、そのなかに微かな金属音が紛れていることに彼は気がつきました。
“同種の、発信信号の可能性が、あります”
頭についたセンサーが彼に告げます。
「同じ種類の音……僕と……?」
もしそれが正しければ、同じ星に彼と同じアンドロイドがいることになります。
「北々西へ約150キロ地点か」
彼は走行形態にギヤを変え、そこを目指すことにしました。
illustration and story by Billy.
<続く>
前回は……
星屑のロビンソン<1>