
彼の左眼に映っているのは遥か遠く、空の上に浮かぶ星たち、その光をずっと眺めていた、だけど彼はそれが何なのか、よく分からないままで、しばらくそれを見続けていました。
ここはどこなんだろう、彼はそう思う。記憶が失われていることが分かる。
名前は……そう名前も分かりません。
そもそも名前なんてなかったのだろうか、そして目覚めてから何時間が経ったんだろう……。
“……連続活動可能残存時間は48時間、です……”
頭部にあるアンテナは彼が動くことのできる時間を冷静に計算していました、充電の必要があるようで、彼は望遠になっていた左眼を通常に戻し、そして各部を点検しました。

右眼は故障しているようで、何も映っていませんでしたが、それ以外に大きな故障はなく、腕も動き、そして車輪もパンクはしていないようでした。
一番の問題は左眼の奥から繋がる記憶の回路が断線してしまっているようで、彼は自分が何者であるかを理解できなかったのです。
だけど僕はまだ動ける、それが分かると、動き出そうとしてみました。
間接の各部が凍結しているようでした。
見渡す限り、その世界は青白い氷の世界で、なぜ彼はひとりここにいるのかもわかりません。
彼はその名前を仮に「GT400」とします。胸部のハッチにそう書かれたタグがついているからです。
GT400はアンドロイドです。人間ではありません。
課せられた目的もすでに記憶から消えてしまっているようですが、彼は少しずつ動き始めました。
まだ時間が残されているうちに。
<続く>
illustration and text by Billy.