思い出の花 -29ページ目

白樺湖


黒髪に見付けし白き小枝
朝靄の立つ湖に小石を投げ入れた心地よ
抜いてしまえば誰も分からず底に沈みゆく心と波紋
鏡のやうな湖に面持ち映し見れば朝靄で頭が白んで見えた
悲しきかな白樺に囲まれた湖のほとりで月は霞み日は昇らず朝靄の中
吾が影は薄く白樺に紛れる

出羽の灯


毎年この時期に
見上げる空
遠く遠く
浮かぶ竿燈火

もう直ぐ訪れる
三夏の終わり
熱を冷ます風が
ススキを揺らす

砂利道が走る故郷を
裸足で歩く勇気はない
蝉鳴く声に
故郷の夏を重ね
見上げる空
遠く遠く
太陽は山へ傾く

傷心


言葉のナイフを
携えた女
鋭く見詰める男
鋭く言い放つ女
切り捨てられる男

刺さる言葉に切れた男と
さして痛くも無い女

返す言葉が
無くなった男
さじを投げる女
物に当たる男
無言で涙を零す女

傷口が開いた男と
傷が上手い女