下記の記事は
2014年04月30日(水)掲載の危険な「駅前クリニック」に修正加筆したものです。
時折「心の病」に関する相談を知人から受けることがある。
先月の末、友人のAさんから電話があった。
部下のB子さんが「うつ状態」で病院に行ったのだが様子がおかしいので
相談に乗ってくれないか… という内容だった。
Aさんは上場会社の取締役/海外事業部長で、知り合ってからもう20年以上のお付き合いをさせていただいている方である。
私が「うつ病」を患い、精神科治療薬の副作用でゾンビになった経緯も知っておられる。
Aさんは、B子さんが薬局でもらった「お薬の説明書」をメールの添付ファイルで送っていただき
「Nicoさんの率直な意見を聞きたい、判断は私とB子さん、そして弊社の産業医でするから…」
と、電話で話されました。 このように言っていただけると気が楽になります。
Aさんにもう少し詳細をうかがうと、B子さんはAさんに
「最近眠れなくて体調が悪い、今の案件の目処がついたら数日間休暇を取りたい…」と相談しに来たそうです。
Aさんからの追加情報として、B子さんは
「所属する部署は3月が超繁忙期であり、最近人間関係で悩んでいるふしがある…」
B子さんの言動を尋ねると
「特に奇行などもなく、話も理路整然としている」との事だった。
添付ファイルの「お薬の説明書」を読んでみた…
B子さんはドグマチール、メイラックス、シンメトレル細粒の3種を処方されていた。
ドグマチール・1錠、シンメトレル細粒・1包は毎食後 1日3回、メイラックスは就寝時に1錠
ドグマチールは私も処方された「中枢神経刺激薬」、つまり「覚せい剤」類似薬物である。
メイラックスは「BZD系睡眠薬」、数週間で効きが悪くなり、BZD依存症の危険がある。
シンメトレル細粒は初めて聞く名前だったのでIFや医薬品サイト(1)で調べると
通常、脳梗塞後遺症の改善やパーキンソン症候群の治療に用いられる向精神薬だった。
抜粋すると…
脳内の神経伝達物質ドパミン、セロトニンなどに作用し、脳梗塞後遺症でみられる意欲や自発性の低下を改善します。脳内のドパミンの神経伝達を増強することでパーキンソン症候群の症状(手足のふるえなど)を緩和します。また、A型インフルエンザウイルスのヒト細胞内への侵入過程を阻害し、ウイルスの増殖を防ぎます。主な副作用として、めまい、ふらつき、立ちくらみ、不眠、幻覚、興奮、頭痛、便秘、食欲不振、吐き気、口の渇き、浮腫(むくみ)などが報告されています。
例によって「作用機序が曖昧」で、薬力の高い危険なクスリだと感じた。
B子さんが受診したのは昨年末にオープンした、いわゆる「駅前心療クリニック」だということである。
まだ患者数が少ないからって、いきなりこんな「処方」はないだろう!
初診の処方で「パーキンソン治療薬」?
血液検査はしたのか? 脳波は検査したのか?? MRIやPET検査はどうなんだ???
この精神科医は彼女を潰すつもりか!!
厚労省の「多剤処方注意勧告」や「うつ病学会の多剤処方の自粛」はこの精神科医には無関係のようだ…
一日だけ考える時間を頂いて、翌日Aさんに電話した。
私の意見を要約すると
・B子さんは「うつ状態」ではあるが、向精神薬を複数飲むような「うつ病」ではない。
・この処方は薬の相互作用もあり向精神薬3種類を長期間服用することは危険である。
・「うつ状態」の患者に、いきなりこのような多剤処方をする精神科医は信頼に欠ける。
・産業医と相談し、多剤処方をしない「カウンセリング重視」の精神科に転院するべきだ。
・今一番必要なことは「休息」である、「有給休暇」の申請をさせるべき。
Aさんからその後の連絡はまだないが、B子さんは、少なくとも私のように向精神薬の副作用でゾンビになることはないと思う。
Aさんのような精神医療の危険性を知っている方が「近くに居る」ということの重要性を痛感した2日間でした…
nico
(1) Qlifeお薬検索
http://www.qlife.jp/meds/rx11293.html
次回の記事 → 危険な「駅前心療クリニック」、その後のB子さん