入社後に「試用期間」を設け、本採用するか否かを見極める期間を設けている事業者は多いです。
というより、全く設けていない就業規則は見たことがありません。
あまり知られてはいませんが、「試用期間」は、法律上存在しません。
休職と同様、事業者が任意に設けている規定です。
解雇するのは難しいということはそれなりには知られていますが、試用期間もさほど変わりません
少しは変わるというのが実際のところですが。
つまり、
「試用期間満了での本採用拒否は簡単にはできない」
ということです。
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そもそも「試用期間」とは?
試用期間とは、本採用を前提に雇い入れ後の一定期間、その人の勤務態度や性格、能力などをみて本採用するかどうかを決めるために設ける期間です。
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試用期間の法的な性質
最高裁判所判決(三菱樹脂事件 最大判 昭和48年12月12日)によると、この期間の本採用の見送りは「客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」としています。
これは、解雇に関する記載のある法律である労働契約法の第16条
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
と特段変わりません。
というより、上記の三菱樹脂事件はじめ、蓄積された判例を基に作られた法律なので、当然ですが。
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実際のところ
本採用拒否は、裁判などの司法の判断を仰いだ結果、通常の解雇よりも幅広く認められるケースは多く、参考判例に挙げました高裁判決(空調服事件 東京高判 平成28年8月3日)のように、
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従業員の勤務態度の悪さ
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経験者として応募し採用されたものの実際にはスキルが足りなかった
などを理由に本採用としないことが認められることはあります。
ただ、「大して指導も注意もせず、単に試用期間満了だから終わり」が許されるわけではないというのが実情です。
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試用期間満了を有効とするためにできること
それぞれの段階で、やるべきことがあります。
- 採用
自社の求める共通の資質や採用ポジションにあった資質を基に、採用基準を作ったうえで、多面的に判断できる手法を取り入れて、本採用拒否になりうるような人物を採用しない。
※たまに散見される、採用権限がある人の「面接で印象が良かったから」だけでの一発採用は、割とすぐに失敗だとわかり、試用期間満了で解雇したいという相談が多いような気がします…。
- 入社後
・本人に、何をどの基準以上にできるようになってほしいときちんと伝える。
・日々の日報や指導などを通じて、できていないことについて、どうしてもらいたいかを伝え、できるように助力・指導する。
・指導の実績を記録しておく。
簡単に書きましたが、シンプルに言えば
「採用した人が自社で活躍してくれるためにするべきことをする」
ことが必要です。
「もうちょっとがんばれ」・「なんかイマイチなんだよな」、気持ちとしてはわからなくはないですが、そのようなフワッとした姿勢では、せっかく採用した人材も、宝の持ち腐れになりかねません。
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まとめ
試用期間だからといって安易に雇用契約解除をしないように気を付けてください。
引用判例
三菱樹脂事件 最大判 昭和48年12月12日
空調服事件 東京高判 平成28年8月3日