長い夜は始まった。メインは今からなのだった。 | 自分に勝ちに行く!!

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聞くことは、人を豊かにする。話すことは、人を機敏にする。書くことは、人を確かにする。自分の心の内側を、書くことで確認して行こうと思います。つれづれなるままに、テーマもなく...?.。心の引き出しを増やそうと思います。

 

 

 

3連休と言えばじっとしていられない。

 

今回はシマフクロウが見られる宿がある、ということで、へえー。シマフクロウ、見てみたい。と、北海道羅臼へ。

 

東側はねー。雪はあんまりないと思うんだー。とはチャリの言い分。

女満別空港からレンタカーを借りた。

そしていざ、羅臼へ。

 

道中、美幌峠と、お天気の摩周湖にも立ち寄る。

展望台からみえる群青色の摩周湖と、周りの樹氷の白いコントラストが見事である。

旅のしょっぱなから、こんなに心躍る景色に出会えるなんて、やっぱり北海道はすごい。

 

海沿いの道に入ると、今年の流氷は浜にびっちりと接岸している。ただ空と流氷だけの景色なのに、飽きもせず車の窓から海を眺めていた。

 

https://youtu.be/y9I3U7cyCUc

 

鷲の宿へは3時に到着。小屋にはすでに窓際に三脚を立ててセッティングしている人などがいる。

おおよそ予想はしていたが、やっぱりシマフクロウを見にくる、イコールいい写真を撮りたい、という人たちが訪れる宿なのだろう。

 

バカチョンカメラ+iphoneしか持ってないわたしたちは完全にアウェイなのである。

 

うちらの部屋は別館と言われ、スタッフのおばさんの車についていく。距離として1.5キロくらいの場所にあった。

お部屋は暖められていて、窓を開けると流氷の海が目の前にある。

完全武装で持ってきたありったけの防寒具を身につけ、用意ができるとすぐに本館の方へ戻った。

 

中へ入ると食堂が、観察小屋のようである。

大きな窓の前には30cm幅くらいの棚が設てあり、簡易なテーブルにもなるし、カメラのセッティング時の荷物台にもなる。それが細長く作られた小屋にびっちりと大きな窓が並ぶ。

窓の前には川が流れていて、その中央に石を並べていけすのように形作っている。そこに岩魚が集まるのを、シマフクロウは知っていて、毎日ここに現れる、というワケらしい。

そのいけすをポイントにしてライトが照らされるように川に向かって照明器具がセッティングされていた。

 

宿のおかみさんが、タツヤマさんはここの席二人ね。一つの窓に3人なのでもう一人来ますからね。と、言われた。

ちゃんと決められた席があるんだ。と、ちょっとほっとする。なぜなら、写真を撮る気まんまんでいる人たちの熱気が、なによりもすごいのである。。。。

 

夜行性のシマフクロウが夕方から姿を現すはずはないのに、なんだかわたしもワクワクして、ただ流れる川とその前に立つ木を眺めて飽きない。

テーブルには観察ノートなるものがあり、それをぱらぱらめくると、何月何日、6時 シマフクロウ1羽 魚獲りにくる。

9時 シマフクロウ2羽 キツネ来て逃げる 12時 シマフクロウ 4時 シマフクロウ 魚とる 4時45分 シマフクロウ 子供などと書いてある。

 

キツネが来たりすると、絶対シマフクロウは来ないからね。そういう時はあそこのバケツに石が入っているからキツネの近くに投げて追い払うのよ。と、宿のおかみさんが教えてくれる。キツネもシマフクロウを狙うのではなくて、魚を獲りにくるのだから、その仕打ちはかわいそうと言えばかわいそうだが、ここにくる人たちは、とにかく、シマフクロウを撮りたいのである。

 

そのうちに夕食の時間となり、席について食事。

外を見るとすっかり暗くなっている。外の照明も点いて、雪と、川と、木が、美しく照らし出されている。

 

さて、いよいよシマフクロウ本番である。わたしとチャリもフリース着て、ダウン着て、レインジャケットを着て手袋と帽子を被る。

他の人たちはお宝のバズーカカメラを取り出して、試し撮りなどを始めている。

 

食事が片付け終わると、ずらりと並んだ大きな窓のサッシをおかみさんが外し始めた。

大きな窓ガラスである。下に落とさないかとヒヤヒヤしたが、ものすごいチカラで外していく。

横に立てかけたサッシを移動させようとしたら、わたしでは持ち上がらなかった。

恐るべし。おかみさんのバカヂカラ。。

 

窓の上にビニールシートが丸めてあり、それをロールカーテンのようにするすると下ろすと、少しは寒さが和らいだ。

 

泊り客だけなのかと思いきや、そのうち外からも次々と予約していた人たちがやってきた。ガイドさんに連れられた白人グループの9人ほどと、中国人の家族連れやカップル、外からの参加者はほぼ外国の人たち。驚くなかれ、そのひとたちもみなバズーカカメラを持ってゾロゾロと中に入ってきた。

 

小屋の中は、20人ほどにもなっただろうか。

 

みんなやる気満々である。

真似してわたしもiphonを覗き、ちょいと外を映してみる。ズームを最大にしても、たいした写真は撮れなさそうだ。

 

シマダさんという若い女性が隣の席であった。とてもかわいらしい。彼女もバズーカカメラを持参していた。聞くと、ここに来てカメラにハマり、バズーカレンズも大枚をはたいて手に入れたそうな。

6月に初めて訪れて、9月と、そして今回と。3つの季節のシマフクロウを撮るのだと言う。

 

前に来た時はカメラの扱い方や、生き物を写す時のコツなどをここで会った人に教えてもらったと話していた。

生き物を写す時はその被写体が動いたら、カメラをその動きに合わせて一緒に動かしていくのだそうな。露光は外の照明の80ヘルツ?に合わせるらしい。

 

長い夜は始まった。メインは今からなのだった。

 

シマダさんとは暗闇の中でいろいろ旅の話などあれこれと話が弾み、眠くもならずに時間を過ごした。

9時、、、シマフクロウは出てくる気配はない。。10時、、、無の境地で川の脇にある木を見つめる。。。11時。。。ぽろぽろと脱落し、部屋に寝に行く人や自分のホテルに帰る人が出てきた。。。

 

私たちもその日の朝は3時起き。完徹できるのか、不安になる。。。

 

そんな時に、にわかに後ろで小競り合いの声が、、、。

ガイジンさんグループの一人が、寝に行った人の空いた席につこうとしたのを、関西弁の女性が咎めたことから言い合いになったらしい。

 

泊り客は最初から席が決められていて、外からの人たちは当然端の方の場所になる。

3脚をたててセッティングしている彼女の場所は1人抜けて2人で使っている。

ガイジンさんが、いなくなったのだから、ここはフリーだ。というのに対し、違う!!ここはリザーブシートだ!!と、激しく抵抗。

 

結局彼女は勝ち抜いて、ガイジンさんは引き下がった。これは、シマフクロウに対する気持ちが、彼女の方が優った、ということだと思った。主張するガイジンに対して、怯まずに抗議出来る人、すごいぜ!と思った。

 

そんなこんなでワサワサして、小屋の気配を感じるのか、感じないのか、シマフクロウは一向に姿を見せず。

 

わたしとチャリも限界を迎えていて、席を取られてしまうかもだが、部屋に戻って仮眠してこようと決めた。

シマダさんは徹夜を決めていて、わたしたちは車で別館へ戻った。

 

部屋に戻るとお風呂が入れるとわかったので、ほぼ行水で温まり、3時に目覚ましをかけて寝る。一瞬で熟睡の境地に入った。

チャリはほんとに戻るとは思っていなかったらしいが、わたしは3時の目覚ましで飛び起き、すぐにあれこれ着込んで準備、しかたなくチャリもまた服を着込んで車で戻る。車で乗り込むと、ライトでシマフクロウが逃げてしまうと言われていたので、途中で停めてこようと思っていたが、停められる場所がない。ライトを消して走れないタイプの車で、ライトも消えてくれない。仕方なくそのまま入っていったら、宿のおじさんが出てきてめっちゃ怒られた。

 

還暦過ぎの2人が小学生みたいに怒られることがあるんだなぁ、と思いながらも、すみません、すみません、、。を繰り返しながら小屋に入った。

 

中に入ると外してあった窓ガラスは はめ込まれていて、中は思ったより暖かかった。

 

外から来ていた人達は全員撤退していて、ガイジンさんもいなかった。残っているのは4〜5人くらい。

みんな、ギリギリな感じで机に突っ伏して寝ていた。

 

小屋の中はひときわ静かで、シマダさんが起きて、小声で、まだシマフクロウは来ていません。と、教えてくれた。

 

そこからまた流れる川と雪と木をひたすら眺めながらシマフクロウを待つ。日の出を過ぎると、イッツ、タイムである。残るチャンスはあと2時間。。

 

しかし、わたしは来る!と確信していた。

 

観察ノートを見ると、明け方の4時5時にはシマフクロウは必ず姿を見せていた。おそらく、小屋の中の熱気が消えないと、シマフクロウはやってこない。。。

 

6時、9時、12時にも現れた日は、平日だったり、来客が少ない時だったんではなかろうか。。

今日のように、あれだけ人数がいて、ワサワサしていたら、シマフクロウも気になったはずだ。

 

おかみさんの弟さんらしい、わたし達を怒ったおじさんが、みんなの代わりに寝ずにずっと窓の外を凝視している。

 

そのおじさんが突然、カム!と囁くように言った。

 

その瞬間、寝ていた全員ががばっと起きてカメラを構える。窓が一斉に開く。全員がカメラを覗いた。

息を殺して木に止まるシマフクロウを見つめる。

 

シマフクロウは、しばらく川の方を見ながらこちらの窓も伺って、川の後ろの方へ移動した。いつ来たのか、全く見えていなかったが、そこにはもう一羽のシマフクロウがいて、2羽で並んで話しているようにも見える。それから、意を決したように1羽がいけすの中に飛び込んだ。そして一瞬で魚を掴んで上がって来た。

 

捕まえた魚を、シマフクロウは食べずにそのまま足で掴んで飛んで行く。

後からもう1羽が後を追った。。

 

その間3分くらいか。

後で聞くと、今頃はシマフクロウの求愛期間で、オスはメスに魚をプレゼントするらしい。

 

思った以上にシマフクロウは大きく、その存在感は強烈であった。

 

そのショットが撮れると、カメラを片付けて寝に行く人もいた。あと残すは1時間ほど。

わたしはシマフクロウを見られたことで目がらんらんと冴えた。

 

さぁー。また。来い!来い!と念をかける。

 

来るぞ来るぞ!と心で叫ぶ。。

 

5時30分くらいだろうか。

視界に大きく広げた羽が見えた。

 

今度はわたしが

カム!と言った。(おじさんのマネをした。)

 

まわりにも緊張感が走った。。

 

1羽のシマフクロウが枝に止まる。

しばらくは動かない。窓を開けたこちらにも警戒しているのか。表情は読めない。

 

息を呑むようにシマフクロウを見つめる。

 

静寂の中、シマフクロウは羽を広げて川沿いに降りて、じっといけすを見つめる。ライトが照らされて彼には見えにくいのだろうか。

 

それから彼はいけすに飛び込み。一瞬にして上がって来た。気がつかなかったが、片方の足に2尾の魚を捕らえていた。

1尾が爪から逃れて雪の上で跳ねている。

シマフクロウにはそれは見えなかったのか、その魚には目もくれず、爪に食い込んだもう1尾の魚を嘴に移し、それを飲み込んだ。

 

そして去って行った。。。羽を広げると、その姿はいっそう大きい。。

 

それは、静かな、静かな感動であった。

 

自分が、何か、自然のひとつに、なったような気がした。。。