シンジケートローン契約(Vol.32)
前回の続きで第三者による債権侵害の問題ですが、日本の判例は、第三者による債権侵害の成立を比較的狭く解しています。例えば内田先生の本(民法Ⅱ)では(旧版ですが)、次の2つの事例を挙げて、これらはいずれも自由競争の範疇で第三者による不法行為は成立しないと解するのが判例だと説明されています。(ちなみに内田先生は設例Ⅰについては不法行為成立させるべきとの立場)また、学説上も、故意を超える害意がなければこれらの事例について不法行為は成立しないという考え方が有力のようです。
(設例Ⅰ)
BがAの土地を5,000万円で購入する契約を結んだのを知りつつ、CはAに6,000万円の対価を申し出て二重に買い受け、先に登記を移転した。このとき、Cの行為はBに対する不法行為となるだろうか。
(設例Ⅱ)
俳優AがB会社と専属契約をしているのに、Cはより高い給料でAを引き抜いた。Cの行為はBに対する不法行為となるだろうか。
本件の利害関係を設例Ⅰ風に書いてみると、
BがAから第三者から追加の借入をしないという条件で5,000万円の融資を受けていることを知りつつ、CはAに6,000万円の新規融資を行った。このとき、Cの行為はBに対する不法行為となるだろうか。
となります。Ⅰ及びⅡは1つの物件又は1個人を取り合う競争の結果他方の債権侵害が問題になっているのに対して、Ⅲは必ずしも1つの対象を取り合っているわけではないという点が上記2つの設例とは異なる点です。Cが直接に侵害しているのは、BがAに対して有している貸付債権ではなく、追加借入をしないという不作為を求める債権に過ぎません。そしてこの不作為の債権というのは、本来的には貸付債権が回収できなくなるリスクを避けるために設けられたものですから、貸付債権に対する侵害は間接的なものに過ぎないということになります。そう考えると、この場合も単なる新規貸付の意思だけでは不法行為としての故意としては十分ではなく、害意まで必要な事例ではないかと思います。またこれは損害の有無ともかかわる問題で、少なくともこの権利が侵害されただけの段階では、実質的な損害はまだ発生していないと言わざるを得ないでしょう。
そう考えると、Ⅲの事例で不法行為が成立するのは、新規の貸付人が既存の貸付人に損害を与える目的で追加融資を行った場合(無担保貸付の場合ではこのような状況はかなり考えにくいですが。)のように、主観的な害意がある場合で、かつその結果、実際に既存の貸付人の債権が回収できなくなって実損害が発生した場合に限られることになるのではないかと思います。ただ、追加貸付を行うこと事態は必ずしも借入人の財務状態を悪化させるものとは言えませんので、損害との因果関係の立証も簡単ではないでしょう。
いずれにしてもこの表明保証を落とすということは有り得ないので、あまり深く考えてもしょうがない話ではありますが。
(設例Ⅰ)
BがAの土地を5,000万円で購入する契約を結んだのを知りつつ、CはAに6,000万円の対価を申し出て二重に買い受け、先に登記を移転した。このとき、Cの行為はBに対する不法行為となるだろうか。
(設例Ⅱ)
俳優AがB会社と専属契約をしているのに、Cはより高い給料でAを引き抜いた。Cの行為はBに対する不法行為となるだろうか。
本件の利害関係を設例Ⅰ風に書いてみると、
BがAから第三者から追加の借入をしないという条件で5,000万円の融資を受けていることを知りつつ、CはAに6,000万円の新規融資を行った。このとき、Cの行為はBに対する不法行為となるだろうか。
となります。Ⅰ及びⅡは1つの物件又は1個人を取り合う競争の結果他方の債権侵害が問題になっているのに対して、Ⅲは必ずしも1つの対象を取り合っているわけではないという点が上記2つの設例とは異なる点です。Cが直接に侵害しているのは、BがAに対して有している貸付債権ではなく、追加借入をしないという不作為を求める債権に過ぎません。そしてこの不作為の債権というのは、本来的には貸付債権が回収できなくなるリスクを避けるために設けられたものですから、貸付債権に対する侵害は間接的なものに過ぎないということになります。そう考えると、この場合も単なる新規貸付の意思だけでは不法行為としての故意としては十分ではなく、害意まで必要な事例ではないかと思います。またこれは損害の有無ともかかわる問題で、少なくともこの権利が侵害されただけの段階では、実質的な損害はまだ発生していないと言わざるを得ないでしょう。
そう考えると、Ⅲの事例で不法行為が成立するのは、新規の貸付人が既存の貸付人に損害を与える目的で追加融資を行った場合(無担保貸付の場合ではこのような状況はかなり考えにくいですが。)のように、主観的な害意がある場合で、かつその結果、実際に既存の貸付人の債権が回収できなくなって実損害が発生した場合に限られることになるのではないかと思います。ただ、追加貸付を行うこと事態は必ずしも借入人の財務状態を悪化させるものとは言えませんので、損害との因果関係の立証も簡単ではないでしょう。
いずれにしてもこの表明保証を落とすということは有り得ないので、あまり深く考えてもしょうがない話ではありますが。