電子記録債権法-根質権が規定されてるんですね
今日は、日本の一部の業界関係者のなかで話題の電子記録債権法についてです。電子記録債権法というのは、例えば通常の金銭消費貸借取引で発生した金銭債権(原因債権)を、行政の指定を受けた民間の電子債権記録機関に電子的に記録することにより、原因債権とは別個の電子記録債権を発生、移転、消滅させることができるということを定めた法律です。これによって、債権譲渡の活性化、円滑化を図ることにより企業の資金調達を容易にするということが立法の目的とされています。
原因債権とは別個の電子記録債権を発生させ、原因債権とは切り離して譲渡ができるという点で手形債権に似た制度であることを想像させますが、金銭債権の内容として多様な条件を付すことが認められていて、その条件を記録しさえすればそのとおりの内容の電子記録債権が発生するという点で、手形債権よりもより多様性があるようです。特にこの制度を使うことによってシンジケートローン債権を簡易に譲渡できるようにするということが立法段階から想定されていたようで、東京三菱UFJ銀行は電子記録債権機関を早速設立し、行政の指定も取得して事業を始めているようです。実務上の運用方法については、ある程度民間の電子記録債権機関の裁量に委ねられている部分もあるようですので、徐々に方向性が見えてくることでしょう。(個人的には電子化でそんなに債権譲渡手続きが簡便になるようにも思えないのですが、ここはよく分かりません。)
本題ですが、法律を読んでいて気になったのが、質権設定に関する条文(第37条)です。同条では電子記録債権上に質権を設定する場合の効力要件を定めていますが、第1項及び第2項で質権について、第3項及び第4項で根質権について定めています。これは、細かい点ですが非常に画期的というか気になる規定で、これまで日本の法律で「根質権」という概念を規定している法律はありませんでした。(不動産登記規則・登記令で「根質権」という用語が出てくるだけです。)
質権については民法に定めがありますが、現在の民法は質権と根質権を分けて規定していません。実務上は、被担保債権のなかに不特定債権が含まれるケースでは、「根質権」を設定すると契約書に書く場合が多いと思いますが、条文がないので、根質権の有効要件が何なのかは明確ではありません。ただ、抵当権・根抵当権という2つの概念の存在から類推して、根質権も当然有効だろうという前提で実務は動いています。そういう意味では、今回この法律で(電子記録債権に限ってではありますが)根質権の効力要件を明確に規定したのはある意味画期的なわけです。
そして、これに関してもう1点注目すべきなのは、根質権を登録するにあたっては「極度額」を併せて定めなければならないと規定している点です(第37条第3項第4号)。
現在の実務では、根質権を設定する場合、多くのケースでは極度額を設けていないと思います。根抵当権は法律上極度額の定めが必須ですので、それとパラレルに考えると根質権を設定する場合にも極度額を定めるべきということになりますが、他方で極度額を定めるのは後順位の担保権者の利益を保護することが主目的であるところ、質権は本来的に対象となる質物の占有を取得する担保権であることから後順位の担保権者の存在が抵当権に比べてあまり想定されていないという事情があり、後順位担保権者の利益保護を図る必要性は低いと考えられてきました。おそらくかかる理由から、根質権の場合には極度額については設定しなくても有効だろうという判断のもと、このような運用が一般化しているのではないかと思われます。しかしながら、今回の立法により、少なくとも電子記録債権上に根質権を設定する場合には、極度額を定めなければ効力要件を満たさず、有効な根質権は設定できないということになりました。
ただし、このことをもって、これまでの極度額を設定していない根質権は実体法上無効かといわれると、それはそうでもないと思います。電子記録債権以外の通常の債権の上に設定される根質権の有効性の要件が、今回の立法で決まるわけではないからです。
ここで、「電子記録債権法の中間試案に関する補足説明」(法務省のサイトにあります。)を読むと、次のように書いてあります。
(以下引用)
電子記録債権については、(注)にあるとおり、後順位質権の設定登録を原則として認め、また、登録を効力要件としており、登録の際に、極度額を記録することが可能であることからすると、包括根質を認めずに、後順位者保護のために極度額を記録しておくことが相当であると考えられる。そこで、根質の場合には、「被担保債権の範囲及び極度額」を必要的申請事項とすることとしている。
(引用終わり)
これだけ読んでも、実体法上、極度額を定めない根質権を有効と考えているのか無効と考えているのかよく分かりません。「極度額を記録しておくことが相当」というのは、有効・無効とは別のレベルで議論しているようにも読めます。(ただ、少なくとも電子記録債権に根質権を設定するには極度額を定めないと要件不充足という立法になりましたが。)
この根質権(及び根譲渡担保権)については、実務が先行しており民法の改正が遅れているポイントでもあります。また別の機会にこのブログでも触れるつもりですが、民法上、根担保制度について統一的に整備する必要があるということだと思います。
原因債権とは別個の電子記録債権を発生させ、原因債権とは切り離して譲渡ができるという点で手形債権に似た制度であることを想像させますが、金銭債権の内容として多様な条件を付すことが認められていて、その条件を記録しさえすればそのとおりの内容の電子記録債権が発生するという点で、手形債権よりもより多様性があるようです。特にこの制度を使うことによってシンジケートローン債権を簡易に譲渡できるようにするということが立法段階から想定されていたようで、東京三菱UFJ銀行は電子記録債権機関を早速設立し、行政の指定も取得して事業を始めているようです。実務上の運用方法については、ある程度民間の電子記録債権機関の裁量に委ねられている部分もあるようですので、徐々に方向性が見えてくることでしょう。(個人的には電子化でそんなに債権譲渡手続きが簡便になるようにも思えないのですが、ここはよく分かりません。)
本題ですが、法律を読んでいて気になったのが、質権設定に関する条文(第37条)です。同条では電子記録債権上に質権を設定する場合の効力要件を定めていますが、第1項及び第2項で質権について、第3項及び第4項で根質権について定めています。これは、細かい点ですが非常に画期的というか気になる規定で、これまで日本の法律で「根質権」という概念を規定している法律はありませんでした。(不動産登記規則・登記令で「根質権」という用語が出てくるだけです。)
質権については民法に定めがありますが、現在の民法は質権と根質権を分けて規定していません。実務上は、被担保債権のなかに不特定債権が含まれるケースでは、「根質権」を設定すると契約書に書く場合が多いと思いますが、条文がないので、根質権の有効要件が何なのかは明確ではありません。ただ、抵当権・根抵当権という2つの概念の存在から類推して、根質権も当然有効だろうという前提で実務は動いています。そういう意味では、今回この法律で(電子記録債権に限ってではありますが)根質権の効力要件を明確に規定したのはある意味画期的なわけです。
そして、これに関してもう1点注目すべきなのは、根質権を登録するにあたっては「極度額」を併せて定めなければならないと規定している点です(第37条第3項第4号)。
現在の実務では、根質権を設定する場合、多くのケースでは極度額を設けていないと思います。根抵当権は法律上極度額の定めが必須ですので、それとパラレルに考えると根質権を設定する場合にも極度額を定めるべきということになりますが、他方で極度額を定めるのは後順位の担保権者の利益を保護することが主目的であるところ、質権は本来的に対象となる質物の占有を取得する担保権であることから後順位の担保権者の存在が抵当権に比べてあまり想定されていないという事情があり、後順位担保権者の利益保護を図る必要性は低いと考えられてきました。おそらくかかる理由から、根質権の場合には極度額については設定しなくても有効だろうという判断のもと、このような運用が一般化しているのではないかと思われます。しかしながら、今回の立法により、少なくとも電子記録債権上に根質権を設定する場合には、極度額を定めなければ効力要件を満たさず、有効な根質権は設定できないということになりました。
ただし、このことをもって、これまでの極度額を設定していない根質権は実体法上無効かといわれると、それはそうでもないと思います。電子記録債権以外の通常の債権の上に設定される根質権の有効性の要件が、今回の立法で決まるわけではないからです。
ここで、「電子記録債権法の中間試案に関する補足説明」(法務省のサイトにあります。)を読むと、次のように書いてあります。
(以下引用)
電子記録債権については、(注)にあるとおり、後順位質権の設定登録を原則として認め、また、登録を効力要件としており、登録の際に、極度額を記録することが可能であることからすると、包括根質を認めずに、後順位者保護のために極度額を記録しておくことが相当であると考えられる。そこで、根質の場合には、「被担保債権の範囲及び極度額」を必要的申請事項とすることとしている。
(引用終わり)
これだけ読んでも、実体法上、極度額を定めない根質権を有効と考えているのか無効と考えているのかよく分かりません。「極度額を記録しておくことが相当」というのは、有効・無効とは別のレベルで議論しているようにも読めます。(ただ、少なくとも電子記録債権に根質権を設定するには極度額を定めないと要件不充足という立法になりましたが。)
この根質権(及び根譲渡担保権)については、実務が先行しており民法の改正が遅れているポイントでもあります。また別の機会にこのブログでも触れるつもりですが、民法上、根担保制度について統一的に整備する必要があるということだと思います。