Life in the Lone Star State -129ページ目

シンジケートローン契約 (Vol.1)

今日から不定期でアメリカのスタンダードなシンジケートローン契約における各条項及び目新しいコンセプトについての検討をしていこうと思います。(完全に個人的な趣味の世界です。色々説明を端折ってるので分かりにくいと思います。すみません。。)

教科書として主に使用する書籍はこちら。

The LSTA's Complete Credit Agreement Guide
$Life in the Lone Star State


まず、LSTAという機関について解説すると、正式名称はThe Loan Syndications and Trading Associationといいます。アメリカの金融機関を正会員、大手法律事務所を準会員として、アメリカのシンジケートローン市場の発展に寄与することを目的として設立された機関です。具体的な活動としては、シンジケートローン契約や債権譲渡契約等シンジケートローン市場に関連する契約書等のスタンダードフォームを作成して公表したり、シンジケートローン市場の動向を会員向けに配信したりしています。

上記書籍は今年の3月に刊行されたもので、そういう意味ではアメリカの最新のスタンダードが解説されていると言っていいと思います。執筆を担当しているのは、Milbankの弁護士です。

さて、第1回目に取り上げるトピックは、Competitive Bid Loanです。

その前にシンジケートローンについて、ごく簡単に説明します。

金融機関が借入人に対して資金を貸し付ける場合、借入人と相対(1対1)で金銭消費貸借契約を結ぶのが最もシンプルな融資の形態ですが、複数の金融機関がシンジケートを組み、借入人に対して同じ条件でそれぞれ資金を貸し付けるのがシンジケートローンです。なぜこういう形態を取るかというと、ある借入人に対して、一金融機関では与信枠の制限から借入人の希望融資額全額を貸すことができないという場合に、複数の金融機関が集まることで、各金融機関は自己の拠出金額が希望融資額の一部で済むことになり、つまりクレジットリスクを抑えた形で融資することが可能になるというメリットがあるわけです。他方、借入人としても、一金融機関からだけ借りたのでは希望する額の融資が受けられないけれど、シンジケーションを組むことによりそれが可能になるため、双方にメリットがあるということで、近年日本でも急速に拡大している融資形態の一つです。そして、貸付人が複数存在することから、その取りまとめをする当事者としてエージェントと呼ばれる金融機関が存在します。エージェントは貸付人を兼ねているのが通常ですが、形式的には、借入人、(複数の)貸付人、そしてエージェントの三者がシンジケートローン契約の当事者ということになります。

融資の形態としては、大きく分けてTerm LoanとRevolving Credit Facilityという2つのタイプがあります。前者は、ある特定の日に特定の金額を貸し付けて終わりといういわゆるシンプルな金銭消費貸借です。後者は、一定の借入可能期間と借入可能金額を設定し、その期間内であればいつでも借入可能金額を上限として何度でも好きな額の融資を受けられるというものです。「何度でも」というのは、一度融資を受けると、その時点ではその分だけ借入可能金額は減りますが、弁済期が到来してその金額を返済すると、またその分だけ借入可能金額が増えるという建付けになっているという意味です。

概略はこの程度にして、後は追々関係する部分で書いていきます。

というわけで、本題のCompetitive Bid Loanのサンプル条項をLSTAより。

Subject to the terms and conditions set forth herein, from time to time during the Revolving Credit Availability Period the Borrower may request Competitive Bids and may (but shall not have any obligation to) accept Competitive Bids and borrow Competitive Loans; provided that the aggregate outstanding principle amount of the Revolving Credit Loans plus the aggregate outstanding principle amount of Competitive Loans shall not at any time exceed the total Revolving Credit Commitments.

これは、Revolving Credit Facilityを出している場合に、コミットメント期間内に借入人が当該ローンの参加金融機関に対して、当該ローン契約に定められてる金利よりもより低い金利でお金を借りたいのだが、誰か融通してくれる金融機関はいませんか、という趣旨でBidを行い、その結果、最も低い金利を提示した金融機関が融資を行う権利を得るというものです。ただし、借入人がその金利水準に満足しなかった場合には、やっぱりやーめたと言ってもいいという、非常に借入人にとってFavorな規定です。借入人のBargaining Powerが相当強い(かなりの優良企業)場合でないとこんな条項は認められないと思いますし、Bidをしても誰も入札しないでしょう。こういう優良な借入人に対する融資契約では、他の金融機関からの借入を禁止するような規定もないでしょうから、放っておくと他の金融機関からどんどん低金利で融資されてしまいビジネスチャンスを逃してしまうので、こんな規定を入れて、自分たちにも声をかけてくださいねという規定にしているということなんでしょうか。

契約上の制約としては、Revolving Credit LoanとCompetitive Bid Loanの合計額が当初の融資枠の上限を超えてはならないという点ぐらいです。これは当初の上限枠以上に融資がなされると、各金融機関の与信判断に影響があるからということなんでしょう。

ちなみに日本では、このCompetitive Bid Loanの規定はあまり普及してないと思います。法律上は日本でも導入することはできると思うんですが、まだシンジケートローンの歴史が浅いのか、ここまで強気の要求をする借入人はまだ現れてないように思います。

次回はSwingline Loanについて書きます。