「くるまの娘」宇佐見りん | 読書日記2016.10〜

読書日記2016.10〜

読んだ本の中で良かったものについて、簡単に感想を記録しています。

「推し、燃ゆ」で芥川賞を受賞した作者の作品です。エアレボリューションというYouTubeの番組で、臨床心理士の信田さよ子さんがこの本に言及していて、気になったので読んでみました。


推し、燃ゆも、くるまの娘も主人公は若い女性なのは一緒ですが、推し〜は主に女性本人の生活、内面が中心になっていて、くるまの〜は家族の話でした。

私にとっては、くるまの娘の方がよくわかる部分が多くあって読みやすく感じました。


17歳の高校生かんこ。高学歴で真面目だが、時に暴力的な父。脳梗塞で倒れて以来不安定なところがある母。兄と弟は既に家を出てしまった。

父方の祖母の葬儀のため久々に家族が集まる。


全体的にですが、後半特に、その通りだなと身に覚えがあるような言葉、文章が多くて、引き込まれて、一気に読んでしまいました。


自分を傷つける相手からは逃げろ、とよく言われるけれど、家族からはそう簡単に逃げられない。

「みんな傷ついているのだ。助けるなら全員を救ってくれ。」という文があり、とてもよくわかると思いました。

誰が悪いとか決められないというか、家族の歴史の中で色々連鎖したり絡まりあっていて、わからない部分もあると思います。


父親が弟に投げつける言葉や、かんこが過去に投げつけられた言葉に至っては、過去に自分も言われたんじゃないか?と思うくらいでした。


くるま、というのはこの話の家族が過去によく車中泊で旅行していたことが関係しています。

また家族の象徴というか、閉じられた空間とか、色んな意味も重なっているんだろうと思います。