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后前弐時のブランチ

少し特異な体験を中心に書いています。
背中がゾクッとするのが苦手な方は片目で
読む様にして下さい(笑)

朝は神戸も冷えてます・・・。

なぜか体中が痛いのですが・・・(笑)また天候崩れるんですかね~。


今朝もそんな事を考えながら、病院へ向かっていました。




すると途中にあるバス停のところで一人の老婆と2人の主婦


が何か話してました。



私はすぐ横にある信号が変わるのを待っていたのですが、


どうも様子がおかしいのです。


「どこに行きたいの。」


主婦は老婆に大きな声で聞いてます。


「じいさんの所や。」


老婆はそういいます。


「だからおじいさんはどこにおるの?」


かなり老婆は耳が遠いようです。


「じいさんは死んだ。」


ん・・・。死んだじいさんのところに行きたい・・・。


それはまずい話ではないか。



私は少し意識をその人たちの会話に集中。


「おじいさんのお墓に行きたいの?」


主婦は2人で困った様子。

「じいさんが来いってゆーとんねん。」


老婆はどうやら痴呆が入っているらしい。


よく見ると、その老婆は寒い日なのにそんなに着込んで無い。


そして左右の履物が違うのである。しかも右足に左の靴をはいている。


そこに、自転車でご近所の人なのでしょう。一人の男性が通りかかる。


「○○さん。なにしてる。」

どうやらその老婆を知っているらしい。


主婦たちがその男性に説明している。


「どうやら亡くなったおじいさんのところに行きたいって言われてる


みたいで・・・。」


「えっ。○○さんの旦那さんは生きてるで。」

その男性は驚いたように言う。「さっきも裏の畑におったけど。」



え・・・。生きてるの・・・。どういうこと・・・。

私は気が付くと信号をやり過ごしてしまってた(笑)


「あーじゃあ、おじいさんところに行きたいって言うのは、裏の畑に

って事かな・・・。」


主婦はそう言っているが、その横で老婆は、

「じいさんは死んだんや・・・。」

それを繰り返している。


「いやいや。じいさんは生きてるでー。」

男性はそういうと呆れ顔で携帯を取り出し電話をかける。


多分自宅へかけたのだろう。奥様か誰かに・・・。

「○○さんところ行って、ご主人か息子さん呼んできて。◎◎のバス停。」

男性は自転車から降りた。

「○○さんのおばあちゃんがバス停のところでおるんや。」

男性が電話を切ったあと、すぐにバスが来て停車した。

その老婆はそのバスに乗ろうとしている。しかし2人の主婦とその男性

が老婆を止める。

「おばあちゃん。このバスに乗ってもおじいさんには会えないのよ。」

主婦は必死に言う。

この老婆、かなり力があるようだ。

「乗車されますか。されませんか。」

バスの運転手がマイクで言っている。

「大丈夫です行ってください。」

男性が老婆を羽交い絞めにしながら、バスのマイクに言ってた。


すると老婆とその男性は後ろに転倒し、歩道に倒れた。


流石に私もその場に行き、男性と老婆を起こし、老婆をベンチに

座らせた。


「救急車とか呼んだほうがいいですか。」

主婦はあわててそう言っている。

「いや・・・ご家族が来られますから。」

男性も携帯を片手に持ったままそう言ってた。

「怪我ないですか・・・。」

私は老婆に聞いた。

「大丈夫や。こけたくらいで、怪我するほど歳じゃないわ。」



ん・・・。なんかさっきと老婆の様子が・・・(笑)

そう思ったのは私だけだろうか・・・。


2分くらいだったか。

軽自動車でその老婆のご主人と息子さんがやってきた。

バス停の前に大きな不動産屋の駐車場があるので、そこに

車を停めていた。


「すみません。朝から知り合いの家に行くって言って聞かんので、

バスで行けって言ってたんですけどねー。」

その老婆のご主人。年齢は老婆と変わらないのだろうが、しっかり

としている。


「いや。おじいさんのところに行くって言われてたので。」

主婦は身振り手振りで説明している。

車を停めた息子さんがそのとき、近くにやってきて、

「ジイさんって言ってました・・・。」

ニコニコしながらそう言ってます。

「えぇ。おじいさんのところって。でもおじいさんは亡くなったって・・・。」



ご主人と息子さんは顔を見合わせて笑っている。




「うちのばあさんが行きたかったのはジイって人の家なんですよ。」



は・・・。落ちのある話になった(笑)


「テライって書いて、寺井さんって知り合いがおるのよ。そこに行こうと

してたんよ。」



えぇー。

そんな馬鹿な・・・(笑)


「えー私たちって余計なことしたんかな・・・。」

主婦たちは笑い出した。


「いやーおじいさんは亡くなったって言うし・・・。」


「寺井さんのおじいさんは一昨年亡くなったんよ。」


「私もそう言ってるのに・・・。」

老婆ははっきりそう言ってる。


思ったほどの痴呆って訳でもない口ぶりで老婆は言う。




取り越し苦労なのか・・・。(笑)



「もう、ばあさん靴がマチマチやで。一旦帰ろう。あとで送ってやるから。」

息子にそう言われて、軽自動車に乗り込んでいた。


息子さんは恥ずかしいのもあったのだろう。

ご主人をおいてさっさと帰ってしまった。




「迷惑おかけしてすみません。」

みんなで笑っていた。私も笑ってしまった。




じいさんと寺井さんね・・・(笑)



すんなりバスに乗せてりゃなんの騒ぎにもならずに老婆は寺井さんの

家に行ってたのだろうな・・・(笑)


老人だから痴呆が入っているかもって言う先入観がありますよね。

それが良くないんですね。




「じいさんのところへ行く。」

って言われると危ないって思うよなぁ・・・(笑)






TODAY'S BGM 「はがゆい唇」 高橋真理子

忘年会が続いてますね…。極力お断りする事にしてるのですが、断れ


ないモノだけでも結構大変ですね…。


今日も先ほどまで、取引先の社長と顧問税理士と一緒に飲んでました。


美味しいお酒をたくさん頂きましたよ。



12月に入り、流石に寒さも本番ですね。外に出ると息も白い。


この刺さるような寒さ、実は意外に好きなんですよね…。



そして、今日の話は、こんな風に寒い中で出会った老人の話です。



何年くらい前か忘れましたが、友人たちと忘年会をした日の話です。



安い居酒屋で鍋を食った後に、友人がよく行くというスナックへ行き、


その後、深夜まで開いている居酒屋へ行きました。


電車が無くなったので仕方ないのですが…。



その頃には10人近くいた友人も3人ほどになってました。



居酒屋に入ってももう食えもせず、飲めもせずで(笑)


1時間ほどで外に出たかと思います。


神戸の街はその日もキンキンに冷え切ってましたが、私たちも若かった


のですね~。メリケンパークという公園まで行こうという事になりました。




しかしあまりの寒さで、途中元町に24時間営業の喫茶店があり、そこに


入る事にしました。



朝まで、その店にいようという事になりました。



半分寝てしまっている様な3人。


それぞれに飲み物を頼んで席に座ってました。



まだ、時間は3時過ぎ。始発までは2時間以上はありました。



他愛もない話をしながら時間を過ごしていました。


すると一人の老人が1人で入って来ました。



その老人はコーヒーを持って隣の席へ。


店の中はそんなに客がいる訳ではないのですが、喫煙席は結構人が


いた様に思います。



そして私たちの横でコーヒーをすするように飲んでました。



私の位置からはその老人がよく見えました。


その老人は右手の親指と人差し指の間に大きな瘤のようなモノがあり、


カップが持ち辛そうにしていました。



なんだろうか…。なにか仕事で出来たタコのようなモノなのかな…。


私はそう思いました。



老人はポケットからタバコを出して、テーブルに置きました。そして今度


はライターを探してます。


私のテーブルにはお店のマッチが置いてありました。


そのマッチを私は老人に渡しました。


「どうぞ。」


「ありがとう…。」


老人はそういうと瘤のある右手でそのマッチを受け取りました。



老人はそのマッチでタバコに火をつけました。



タバコを口に運ぶためにその老人の手にある瘤が気になります。



「おい…あのじいさんの手の瘤でっかいな…。」


友人もそれに気がつき、小声でそう言います。


「ホンマやな…。」


「何か職業柄出来たタコじゃないかと思うんやけどな…。」


私は友人にそう言いました。



「聞いてみるか。」


「やめとけよ。」


そんな話を私たちは小声で繰り返します。



「これはな…。」


老人は私たちの方を向いて、ニコっと笑いながら右手の瘤を見せました。



その瞬間私たちはその老人の瘤に釘付けでした…。



ちゃんと瘤の全貌を見たのですが、その瘤は星型の様に見えました…。



しかし、老人は


「ほら、人のカタチに見えるだろ…。」


そう言って手を私たちのテーブルの方へ伸ばして来ました。



確かに、星型ですから、見ようによっては人型にも見えるのです。



「この瘤はな…。もう50年近くなるかな…。」


老人は手を引っ込めてコーヒーを飲みながら言います。



正直、私たちだけでなく、近くにいた客はみんな見ていたのではないか


と思います。



「まだ戦時中やったな…。」


老人は語り出しました。少しかすれた声で、聞き辛い声でした。



「当時は戦時中で食うモノもなくてな、私は友人と一緒にいろんな事をし


て食ってたんよ。親は戦争で死んで、母親は出稼ぎに行っとった。」


私たちはその老人の声に耳を傾けて、無言でした。


「ある日な、友人が墓を掘って、棺桶の中から小銭だのなんだのを盗も


うと言いだしてな…。それが金持ちの棺桶には結構、銭が入っててな。」



老人は墓を掘り返した話をします。



墓を掘り返す…。小説やドラマでは見た事があった。しかし本当にそん


な事をやった人の話を初めて聞いた。



当時はもちろん土葬である。埋めてすぐであればそう遺体の傷みも少


ないのだろうが…。



「金歯なんかも取った事があったな…。」


老人はコーヒーを飲みほしたようだった。



「俺、おごりますよ…。」


友人がコーヒーを頼みに行った。そしてすぐにコーヒーを持って帰って


きた。



老人はうれしそうに礼を言って、そのコーヒーにたっぷりと砂糖とミルク


を入れ飲んでいた。



「おかげで、戦時中でも私たちは結構金を持ってた。食うのにも困らん


かったな…。」



老人は少し誇らしげだったような気がする。



「何百も墓を掘ってはいろんなモノを盗んだ…。」



「けどな…墓を掘った友達全員の同じ場所にあざが出来ている事にあ


る日気が付いた。それがコレだよ…。しかも人型のあざ…。」


老人はそういうとまた手を見せる。


「そのあざがいつの間にか腫れモノのようになって、こんな瘤になった


…。」



私たちは声も出なかった…。ただその老人の話を聞いてました。


老人は関西弁ではなく、標準語に近い言葉だったような気がします。



「その時一緒だった友人たちはみんな死んだ。残ったのは私だけだ。」



「みんな死ぬまで手に瘤を持ってた…。」



「病院とかで見てもらったんですか…。」


友人の一人が聞いた。



「何度も見てもらったよ。切った事もあったけど、そのうちまた出てくる。


罰が当たったんだろうね…。」


老人はそういうとまたニッコリ笑った。



「私は一生、この瘤がある限り、自分のやった事を忘れる事は出来な


い。多分自分たちのやった事を一生忘れるな…という事なんだろうな。」




私は言葉がなかった・・・。



その老人のやった事、それは良い事ではない。しかし、戦時中。どんな


事をしても食って行かなければいけないという時代だったのだろうと思う


と、なんとも言えない感覚だった…。



老人は何本かタバコを吸って、2杯目のコーヒーを飲みほした。



「コーヒーごちそうさま。」


そう言うと老人は立ちあがった。終始年季の入ったコートを着たままだ


った…。



「今の話。信じるも信じないもお兄ちゃんたちの自由だよ…。つきあって


くれてありがとう…。」



そういうと老人は店を出て行った。




老人が去ったあと、私たちは正気に戻るまで時間がかかった…。



「ホンマやろか…。さっきの話。」


友人の一人はどうも信じ切れなかったようだった。


「でもあの瘤見たらな…。」


「お前どう思う。」


友人は私に聞いてくる。




私は本当の話だと思ってた。今でも思ってる。



老人に何かの呪いの様なモノがあるのかどうかなんて、私にはまったく


わからない。


しかし人型をした瘤。何度切ってもまた出てくるという…。




そして、何よりも老人に生気が感じられなかったのが気になった。


死ぬのを待っているような…。そんな気がした…。




その日、始発で帰った気がする。




仕事納めの日。


私は会社を出て歩いていた。そして偶然、自動販売機で缶コーヒーを買


うあの老人を見た。



その瘤はその日も老人の右手にあった…。


まだあの老人はどこかで生きているのだろうか…。


今も戒めの瘤を手にしたまま…。







TODAY'S BGM 「PUZZLE」 森口博子

冷え込んできましたね。完全に冬だと言って良いですよね。


今日は一日バタバタしてました。


中学時代の友人と地元で飲んでたのですが、久々で楽しかったです。


時間を忘れて飲んでたので、帰宅したのが2時頃。


そこから眠れずに今に至るのですが…。



寒い季節は大気が澄んでいるせいか、星がきれいに見えますね。


無数の星が空一面にさっきも広がっていました…。


やっぱり空と海は、冬が一番きれいです。



さて、今日の話はやはりこんな寒い季節の話で、その日も空に星がい


っぱいに広がっていました。



その日私は飲んで帰り、朝方タクシーで帰宅したのですが、自宅の前


で空を見上げて白い息を吐きながら星を見てました。


するとさっきまで一緒に飲んでいた友人から電話が鳴りました。



朝の4時。自宅の外で電話をするのも近所に迷惑かと思い、少し自宅か


ら離れて電話を取りました。



「今日はお疲れさん。」


「お疲れ。」


お互いに飲み疲れです(笑)



私は、ただのお礼の電話かと思っていたのですが、その電話の様子は


違ってました。



「あのな…。少し聞いて欲しい事があってな…。」


友人の口調は妙に神妙でした。


「なに…。何かあったか。」


私は早朝の冷え込みに耐えきれず、少し歩いて温かいスープを自販機


で買いながら話をしていました。



「実はうちのオヤジが「こけし」を集めててな。この間東北に出張に行った


時に、珍しいこけしがあったから、お土産に買って来たんよ。」


友人は小さな声でそう言う。


「来週、実家に帰るからその時に渡そうと思ってな…。部屋に置いてたんや


けど…。」



こけし…。旧家によく飾られているイメージがある。


私はこの「こけし」にあまり良いイメージは持っていない。



昔、誰かに聞いた事がある。


こけしとは、貧しい家で食っていくために子どもを減らす事を余儀なくされた


時代があり、「子を消す」の意味から「こけし」という名前がついたと言う話を。


要はいなくなった子どもの代わりに家に一つ「こけし」を飾り、その子どもの


事を忘れないようにするという風習だったようだ…。



「それでそのこけしがどうかしたの…。」


私は自宅の方に向かいながら、友人にそう言った。



「それがな…。部屋のテーブルの上に置いてたんやけど、今日帰ってみたら


床に落ちててな…。」


友人の声は上ずっていた…。


「気のせいじゃなくて。」


「うん…。実は初めてじゃなくてな…。数日前も同じ事があったんや。その時は


何にも考えずに元に戻したんやけどな…。」


友人は目の前にそのこけしを置いて話しているようだ。



私は寒くて仕方なかったので、とりあえず小声で話しながら自宅に入った。


「とりあえず、今日、起きたら電話するから…。床に置いて寝たら…。」


私はそう友人に言って、電話を切った。



その後私は風呂に入って寝た記憶がある…。



昼前に起きて、携帯電話を見ると、朝方電話してきた友人からの着信が何度か


あった。


私はその友人にコールバックした。



呼び出し音は2回と鳴らずに友人は電話に出た。



「待ってたんや…。」


「ごめんごめん。完璧に寝てた。」


私は友人に謝った。



どうやら友人はちゃんと寝つけなかったらしい…。



「今から来れるかな…。」


友人はそう言う。


私は準備して友人のマンションに行く事にした。




結局友人の部屋に着いたのは昼過ぎで、車を近くに停めて部屋に向かった。



部屋に入ると友人と、友人の彼女もいた。どうやら二人とも昨夜から一緒だっ


たようだ。



彼女が気味悪がって、朝から何度も私に電話してきたようだった。



部屋に入ると、リビングのテーブルの下に箱があった。


立派な木の箱に入っているようだった。



私はリビングに座り、その箱を手に取った。そして蓋を開けた。



中には、古そうなこけしが一つ入っていた。


箱にもこけしの裏にも筆で書かれたサインの様なものが入っていて、少し高そ


うな感じはした。



「すまんな…。休みの日にこんな事頼んで…。」


友人も私の横に座った。



「いや、ええけど。昨日あれから何かあったんか…。」


私は友人に聞いた。するとキッチンでお茶を入れてくれていた彼女が、


「そうなんですよ・・・。」


と言いながら私にお茶をさし出す。



3人でテーブルの上に置かれたこけしを囲んだ…。



友人と彼女が言うには、正直、気味が悪くてなかなか寝付けずにいたらしい。


そして浅い眠りの中で二人とも夢を見たと言うのだ。




小さな女の子が出てくる夢…。




その女の子は友人と彼女に同じ事を言っていた。





「私はどこに連れて行かれるの…。」





友人も朝、彼女と話して驚いたと言う。同じ夢を見ていた事に…。




私は前述した「こけし」の名前の由来を友人たちに話した。




「マジで…。怖っ…。買わんかったら良かったな。」


友人はもうこけしを見ようともしない。


彼女も少し震えていた。




「あくまでそれも言い伝えやけどな…。」


私はそう言って二人をなだめた。「今では立派な民芸品やで…。」




問題はそのこけしをどうするかなのだ…。



友人はそのまま父親に渡すかどうするかを迷っているみたいだった。


彼女は、


「どこかでお祓いとかしてもらった方がええんと違うかな…。」


と言ってた。




「中学の同級生の実家がお寺やから、そこに持って行ってみようかな。」


友人はそう言うと携帯で電話をかけた。


その中学の同級生に電話をしていた。



友人の同級生は実家のお寺に連絡を入れてくれると言う事だった。



すぐに友人の携帯が鳴った。



「すぐに持っておいでって言ってくれてるわ…。」


友人がそう言うので、3人でそのお寺に行く事にした。



そのお寺までは私の車で行く事になった。


車中ではこけしの箱を紙袋に入れて友人が手に持っていた。




お寺に着くと、友人の同級生の父親が待っていてくれた。


コタツのある部屋に通され、そこで少し待っていた。



そのお寺の住職である友人の同級生の父親が入ってきた。



「こけしだそうですね…。」


住職はそう言うと友人が持っていたこけしの箱を開ける。


そして、こけしを手に取り数分間、じっと見つめていた。



妙に静かな時間だった。友人が唾を飲み込む音まで聞こえていた。



友人は今朝見た夢の話を住職にしていた。



「しばらくお預かりしても良いですか…。」


住職はそう言う。



「はい…。」


友人はそう言って頭を下げた。



その後住職の説法を聞いて、お寺を出た。




その後、数週間経っても、住職からの連絡はなかった。





こけし。前述したこけしと言う名前の由来はあくまで一説でしかない。


しかし、友人と彼女が見た夢は事実。


奇妙な話だった。




私もその事を忘れかけていたある日、もう年末だったと記憶するが…。


友人から電話があった。


その電話でこけしの事を思い出した。



「実は住職から手紙が来てな…。」


友人はそう言う。


友人はその手紙を電話で読んだ。




やはり、あのこけしは何らかのいわく付きのこけしのようだった。


友人が出張した地方の住職の仲が良いお寺に問い合わせてくれたようだ。


そして、その結果、そのこけしはそのお寺に送る事になったと言う。




それ以上の情報はなかった・・・。



ただ事実として、友人が買ったこけしはいわく付きのこけしであった事。


そのいわくが友人と彼女に夢を見せた事。



そして、住職は手紙の末尾をこう締めくくっていた。



「むやみに古いモノを買わない方が良いと思います…。」


と…。




そのこけしは友人の元に戻る事は今後もなさそうだった…。








TODAY'S BGM 「ボーイの季節」 尾崎亜美