年末ムードも盛り上がってきましたね。と言っても先にクリスマスなのです
が。そのクリスマスもいよいよ今週末…。もうプレゼントは決まりましたか。
私は決算処理で、滅茶苦茶はスケジュールで動いています。
このブログは息抜きに休憩時間に書いてます(笑)
年内に何話かけるかな…(笑)
さて、今日は冬の海での話です。
冬の海はきれいに住んでて、海の底まで見える事が多いのですが…。
そして実は冬の海は暖かいんですよね…。そして妙に静かだったりもしま
す。私は冬の海…好きです。
若い頃、朝までよく友人たちと何処へ行くでも無く、フラフラと遊んでいまし
た。皆さんにもそんな経験があると思いますが。
その日も酒も飲むでもなく、ファミリーレストランで何時間もしゃべっていて、
「海へ行こう。」
と誰かが言い出したので、行く事に…。
海が珍しい訳でもなく、車で5分も走れば海なのだ。
寒い中、好んで海に行くのも、釣好きか若い頃だけの話だろう…(笑)
車を降りると雪がちらついていた記憶がある。
車を空き地に停めて、男ばかり数人で冬の夜の海へ。
その場所は船台があり、漁船が十数隻、陸にあげられていた。
「ちょっとションベン…。」
一人の友人がその漁船の陰に回り、小用を足している。
私たちは、波打ち際に近いところまで行って、缶コーヒーを飲んでいた。
友人が数名集まれば、昔話は尽きる事はない。
その海で、不良に絡まれただの、彼女とデートに来ただのとそれぞれに
話をしている。
「誰かおるで…。」
小用に行っていた友人がそう言いながら戻ってくる。
「なんでやねん…2時過ぎやで…。」
そう、時間は2時過ぎ。そんな時間にその場所に人がいる訳もない。
「ホームレスが漁船で寝てるんちゃうか…。」
「いや…防犯のために、交代で泊まってはるんちゃうか…。」
などと友人たちは言っている。
確かにそうかもしれない…。
しかし、私はその場所に来た時から、妙な胸騒ぎを感じていた。
何かいる…。
それを私も感じていたのだ…。そしてそれは人の気配ではないのだ…。
「夜中にこんなところで人見たらびっくりするやん…。」
口々にそう言って笑っている。
「どこで見た…。」
私は友人に聞いた。
「あの船。」
友人が一隻の船を指さす。
並んでいる十数隻の船の中で、一番傷みの激しい船だった。
たぶんもう海に出る事が出来ない船だろう…。
私は気になって、飲みほして灰皿代わりに使っていた空き缶を置いて立
ちあがった…。
ゆっくりとその船の方へ…。
「おいおい。お前また幽霊とか言うなよ~。」
友人が私をそうやって茶化すが、私には確信に近いモノがあった…。
何かいる…。
私はその船の周囲を回る。
音を立てないように…。
いた…。
その老人はその傷んだ船の舳先に座って、自分の船を見るかの様に
静かに、そして静かに焦点の合わない目だった…。
その目まで、視覚で見えた訳ではないのだ…。しかしその老人の寂し
そうな想いまで伝わってきた…。
私は見上げるようにその老人を見ていた。
すると、その老人は私に気づき、私を見て微笑んだのだ…。
悪意を感じる事はない。ただ寂しそうにその老人は船を見ているだけ
だった…。
「何かおるんか…。」
一人の友人が私のいる場所にやってきた。
「なんもおらんやん…。」
私が見ている場所をその友人は見たのだが、老人には気がつかなか
ったらしい…。
見えてないのだろう…。
「兄ちゃんたち、漁師に怒られるで…。」
隣の船の陰にあった段ボールの中から一人のホームレスが出てきた。
これか…。友人の言ってた「誰か」は…。
「ワシは船の番してやる代わりに、ココに住まわせてもらってるんや。
船に触るなよ…。ワシが怒られるがな…。」
「あー。大丈夫。そんなつもりで来た訳じゃないから…。」
私はそう言ってみんなが座る波打ち際に戻った…。
ちょうど買い出しに行ってた友人が帰ってきた。
肉まんを大量に買い込み帰ってきた。
「お前…。こんなに誰が食うんじゃー。」
などとみんなに言われている(笑)
そこで男数人でワイワイやっていた。
「うるさいなー。兄ちゃんたち。寝られへんやんか…。」
とさっきのホームレスが私たちのところへやってきた。
「すんません。」
とりあえず謝った。謝る必要があるのかどうかは不明だったが(笑)
「肉まん食べますかー。」
友人はそのホームレスに余った肉まんを渡している。
それでそのホームレスはご満悦なのだ。
私はそんな事よりさっきの船が気になって仕方ない。
ゆっくりと視線をその船に向ける。
誰もいない。
「タバコくれへんか…。」
ホームレスは調子に乗って友人にタバコをねだっていた(笑)
私は二本目の缶コーヒーを飲みながら立ちあがり、その船を見ていた。
友人たちは、「誰かいる」と言ったのはこのホームレスの事だろうと思い
もうそんな話は忘れているようだった…。
しかし、実はもう一人いるのだ…。一人と言っていいのか…。
私の感じる気配と友人たちの感じる気配は別のモノだった…。
「兄ちゃん。」
友人からもらったやけに甘い匂いのするタバコを吸いながら、ホームレ
スは私の方に近付いてきた。
「なんですか。」
「見えるんか…。」
そのホームレスは小声で私に言う。
「え…。」
「あの船の老人が見えるんやろ…。」
ホームレスはニコニコしながら私に言う。
「見えるんですか…。」
私は逆にホームレスに聞いた。
「初めは見えんかったんやけどな…。ここで暮らしていると見えるように
なった…。寂しそうに船をいつも見とるんや…。」
このホームレスには見えているらしい…。
「漁師に聞いたんやけどな。あの船はあの老人の船やと言う事やわ。
老人は冬に時化の日に海に落ちて死んだらしいわ…。でも、気は船に
乗ったままと言う事なんやろうな…。」
ホームレスは説明してくれた…。
「ワシも昔、岡山で漁師してたんや…。小さな島やったけどな。こんな船
よりもっと大きな船持ってたんやでー。」
そう言ってタバコを消した…。
「まあ、あんまり関わらん事やな…。漁師の船への執着は半端やないか
らな…。」
そう言うとホームレスは友人たちのところへ戻り、更に肉まんをもらってい
た。
実は私も、元造船所の息子である。漁師の船への執着はよくわかる。
もう一度その船を見た。
やはり誰もいない…。
私は友人たちのところへ戻り、
「そろそろ行こうかー。このおっちゃんも寝られへんでー。」
そう言って空き缶を拾った。
ホームレスに残った食べものを私、ゴミを拾った。
「あー、食いもんもらったから、ゴミはワシが捨てとくわ。」
ホームレスも気のいいオヤジだった…。
私たちは海岸を出て道へ出た。
みんながそれぞれに車に戻る。
私は今一度、あの船を見た。
老人は立ちあがって、ゆっくりと私の方を振り返った。
そして私に頭を下げた様に見えた…。
冬の海…。老人は死してまだ自分の船を守りたかったのだろう。
数年後。
仕事の合間に、その場所に行った事があった。
その船はもうそこには無かった・・・。
TODAY'S BGM 「粉雪」 レミオロメン