自己組織化とは?⑩ | 続・ティール組織 研究会のブログ

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ティール組織が話題になっているが、具現化するにはどうしたらよいか?
その研究を続けるにあたり、さらに次の形態である、続・ティール組織なるものまで視野に入れ、具体的な施策・行動内容を研究・支援する会。

複雑系としての現象を理解するためのモデルに、

自己組織化現象がある。複雑系の構成要素の

モデルをエージェントといい、エージェントの行動

ルールがエージェントの相互作用で自己組織化

されて、より上位のシステムで思いがない行動

を生む。この思いがけない行動が、日本語では

深い読みが必要な「創発」と訳されている。


複雑系の研究で有名なモデルをボイドと呼び、

それにはたとえばコンピュータ画面で飛ぶデジタル

バードがある。鳥の群れを研究するときの従来の

仮説は、群れのリーダーとなる鳥がいて何らかの

コミュニケーション信号を発している、というもの

であった。このような中央制御システムのモデルを

いくら精巧に設計しても、現実の鳥の群れのような、

整然としたリアルな群れ飛行は再現できなかった。

それがただ三つのボイドの行動ルールを設定する

ことで、現実の鳥の群れと同じボイドの群れが出現

した。その三つのルールに必要な制御情報は、

周辺の数羽のボイドの動きと全体の重心の動きの

情報のみである。物理現象でも水蒸気がハリケーン

に変わるための熱力学・流体力学の非線型ダイナ

ミックスは相変移する臨界温度のみであり、また

DNA(遺伝子情報体)や細胞のエネルギー代謝や

物的代謝によって自己組織化される生命現象も、

同じアナロジーでの複雑系の創発現象といえる。

 

経済も生命と同じように、企業(生産者、流通業者)

と消費者をエージェントとした複雑系のモデルで

説明できるという。サプライチェーンのエージェント

は、各オペレーションを実行する人や設備やトラック

などの資源である。そのオペーレーションのボトル

ネックに合わせた同期化のルールと、ボトルネック

を改善するルール化が組織文化の中に組込まれる

と、連続的に進化・改善するジャストインタイムの

システムが自己組織化される。トヨタのジャストイン

タイムの大野耐一氏の「気が付いたらトヨタ方式が

できていた」の発言は、(創発)そのものである。

米国の生産台数の一〇分一しかない日本の自動車

産業が、生き残りをかけてキャッシュフローを上げる

ために、リードタイム短縮という行動ルールを設定

することから生まれた自己組織化といえなくもない。

 

 

創発性とは

以下、こちらより抜粋

生命・生物系を対象とするとき、ミクロである下位

レベルの作用により生じるマクロである上位レベル

の動作との関係において、上位レベルの動作は

下位 レベルの法則によっては説明できない。
そして上位レベルは下位レベルに対し、境界条件を

設定するものとし、これを周縁制御の原理と呼んだ。

わかりやすい例でいえば、機械の構成要素について

は物理・化学法則により説明できるが、上位レベル

の特性である機械としての作動原理は(人間の与える)

合目的性により定まるものであり、下位レベルの法則

からはでてこないということである。そして生命・生物系

においてはこの上位レベルは”創発”によりうみだされる

という。それが生命・生物系の特徴であるが、人工系

なら、上位レベルの境界条件を与えるのは人間である。

 

右脳、左脳の研究でノーベル賞をうけたR.Sperryも

同時代に”創発”を論じている。彼の論点は脳における

意識の役割にある。ここでも下位の存在としての神経

細胞と上位の存在としての精神や意識について、これ

らを別々のものと考える二元論を否定し、双方向の

因果的関係をもつとし、その関係を”創発”ととらえて

いる。

 

これは、会社組織でも全く同じで、個人というミクロの

世界と、会社組織としてのマクロの世界、この両方の

立場で、我々は仕事をしているのだが、これをまったく

別物の二つとして二元論的に考えるのではなく、その

関係を”創発”と捉えて双方向の何がしかの因果関係

を持つものとして、その因果関係を分析していこうと

しているということだ!

 

「自律的に振る舞う個体(要素)間および環境との間の

局所的な相互作用が大域的な秩序を発現し、他方、
そのように生じた秩序が個体の振る舞いを拘束する

という双方向の動的過程により、新しい機能、形質、

行動などが獲得されること」 、この創発過程は、

フィードバック系となっている。具体的に創発現象と

みえる例として、アリの群れによるフェロモン場の形成、

自由市場における価格形成、あるいは個人の集団に

よる世論形成などがよくあげられる。

 

 

自己触媒性とは

以下、こちらより抜粋

ハーケンは、自己組織化現象の簡単な例として、

レーザーを取り上げている。レーザー管の中でポン

ピングと呼ばれる操作によって励起状態に置カ亙れ

た原子は、もとの基底状態に戻る際に誘導放出に

よって光を放出する。この場合、外からの光と同じ

位相の光が放出される。
ポンピングによって与えられるエネルギーが大きく

なると、励起状態の原子の密度の高い不安定構造

となり、誘導放出が連鎖的に起こり、原子の状態

変化が協同的に進行する。その結果、レーザー管

の両端に取り付けられたミラーの働きで、レーザー

管の軸方向に位相の揃ったレーザ一光(マクロな

秩序)が発生する。このとき、誘導放出の働きで、

原子のミクロな運動が、マクロな秩序であるレー

ザー光に同調することになる。この誘導放出は、

マクロな秩序に自己のミクロダイナミクスを同調

させる性質による。すなわち原子の運動のもつ

自己触媒性に基づくものと解釈される。

 

位相の揃った光の波というマクロな秩序は、多数

の原子の内部運動というミクロダイナミクスから構成

されている。またその一方でミクロダイナミクスは、

マクロな秩序に隷従している。つまり、マクロな秩序

とミクロダイナミクスの聞にはフィードバックループが

存在する(図 2.4参照)。ハーケンは、秩序形成に関し

て、このような隷従化現象が起きているときに、

スレイビング原理 (slaving principle) が成立すると

いい、レーザーばかりでなく幅広い領域での自己

組織化現象において成立するものと主張している。

 

 

組織における自己触媒性とは

上記のとおり、あらゆる自己組織化現象において、

マクロな秩序とミクロダイナミクスの間にフィード

バックループが存在すると仮定する。そうすると、

どのようになるのだろうか?見てみたい。

 

会社組織には、部署があり、そして個人がいる。

おおまかには3次元構造になっているのだが、

マクロな秩序とは、会社の経営方針であろう。

ミクロダイナミクスとは、個人の各行動であろう。

個人の各行動には、環境、情報の取捨、感情、

人間関係、スキル、判断力、などあらゆる要素、

つまりはミクロダイナミクスが働いている。

 

今までの経営理論であれば、経営方針を明確

に定めて、その方針を下へ下へおろしていく。

下は、その方針に奴隷のように従うのみである。

この仕組みでは、ミクロダイナミクスを十分に

生かしているとは言い難い。

そうではなく、各個人を尊重し、各個人からの

ボトムアップ的な目標設定を統合して、経営の

目標とすれば、今度はどこに向かうのか分から

ない会社となり、崩壊する危機にも向かうかも

しれない。ボトムアップでもなく、トップダウンで

もない理論がフィードバックループということに

なるのであろう。

 

ミクロダイナミクスの代表的なものが、”自己”

と”非自己”の選択ということになるが、ある

行動が”自己”と認められれば、正のフィード

バックが増幅されるし、”非自己”となればゆり

戻しにあい、その行動は消滅してしまう。

各個人がこのON-Offを繰り返すことで、信号

となり、組織にその信号が増幅された形で伝達

されていく。その信号はさらに各組織間通しでも

ON-Offを繰り返して、さらに増幅されていき、

会社組織の方向性となっていく。

 

 

人間の体が行っている仕組みと同様の仕組み

を会社組織にも取り入れれば良いということは

理解できるのだ。

これは、各個人が意図した結果でもなく、経営側

が意図した結果でもない、予期せぬ結果として

様々なアプトプットが出力され続ける自己組織化

現象と言われる。そう、ボトムアップでもなく、

トップダウンでもない仕組みなのだ!

 

この仕組みの根幹が、フィードバックループという

ことになる。つまり、一つの増幅された信号に対し、

①まず組織として増幅するかどうかを判断する。

→ この時点で、組織として増幅すると判断されな

  ければ、その行動は消滅する方向へ向かう。

②次に各組織間で増幅するかどうかを判断する。

→ この時点で、事業部や会社として増幅すると

  判断されなければ、その行動は組織に戻され、

  修正を求められるのか、消滅するかへ向かう。

③今度は会社にまで増幅された結果を各個人が

  判断する。

→ この時点で、会社にまで増幅された結果により、

  各個人はそれを受けて行動を続けるか、修正

  するか、止めるかを判断する。

このような①~③のループ構造になっているのだ!

 

このように一つの信号ごとに、フィードバックループ

を回していき、それを組織は増幅するのか?会社

は増幅するのか?を判断していき、増幅していく。

この増幅の過程で、新たなアイデアや方向性が

加わることも珍しくない。これにより、予期せぬ方向

へと増幅されることもあるが、そのゆらぎの幅は、

1/f ゆらぎの幅であれば、会社組織として維持でき、

そのゆらぎの幅が、カオスとなるほどであれば、

会社組織として崩壊へと向かうということだ。

 

これが、フィードバックループの仕組みであり、

いかに1/f ゆらぎの幅に抑えられるか、環境設定

が極めて大切ということになるのであろう!

どのような環境設定をすればこのようなフィード

バックループが機能するのか?ここが問題だ。

当方が考えているのは、すべてを1/f ゆらぎの幅

に抑えていく環境設定ということ。つまり、社長に

しろ、部署の管理職にしろ、すべての人が1/fと

いうゆらぎに収まるように、緩すぎず、締め付け

過ぎず、ちょうど1/f 特性を満たすような割合で

管理していけば、その環境設定が可能となる!

と考える。言葉でいうのは簡単だが、実際にその

1/f特性を満たすように緩すぎず締め付け過ぎず

管理するのは、とても難しい。

ただ、そうすれば、1/f ゆらぎにより相転移(進化)

が生まれ、1つ上のステージ、さらに上のステージ

へと昇って行けるということだ!

 

なお、このフィードバックループこそが、生命体と

して機能する根幹の仕組みということだ。まるで

生きているかのように組織が振る舞うためには、

このフィードバックループを的確に運用すること

なのである!

 

 

いかがであろうか。これで、おおよその組織運営

の仕組みが明らかになってきた。会社組織として

の経営でも同じである。これで、実際に組織を

ティール組織へと向かわせることができる!