プロジェクトチームとライン組織を毛細血管でつなぐ | 続・ティール組織 研究会のブログ

続・ティール組織 研究会のブログ

ティール組織が話題になっているが、具現化するにはどうしたらよいか?
その研究を続けるにあたり、さらに次の形態である、続・ティール組織なるものまで視野に入れ、具体的な施策・行動内容を研究・支援する会。

先にチーム組織がいくつも同時期に立ち上

がることで、会社全体を動かすことが可能

になるかもしれないと記載した。

 

日産でカルロスゴーン社長により導入され

たクロス・ファンクショナル・チーム(CFT)が

横断的なプロジェクト・チームとして結成され、

「事業の発展」「購買」「製造・物流」

「研究開発」「マーケティング・販売」等の

テーマについて検討し、解決策を経営陣に

対して提案していったというものであった。

 

NRP 策定の原動力になったのは CFTであり、 

日産の再生に大いに寄与した。 大げさにいえ

ばCFT活動によって日産が再生したともいえる。 

CFT は 前述したように、 当時9つであり、 

1チーム約10人強であったので、 直接に CFT 

に係わったメンバーは比較的少人数であった。 

しかしながら、 迅速性 が要求される場合は

少人数が効果的であるが、 企業再生から次な

るステップに進むためには、 もっと多くの社員

のモチベーションを高める仕組みが必要である。 

そこで日産では、 全社的問題解決のために

用いられた CFT 考え方 を組織の下部に

下ろすことが検討された。 それにより、 部署

ごとの課題を改善する業務改善手法である 

V up プログラムが考案され、 2001年4月に、 

国内外の日産グループに導入された。 

 

関心はここからである。人間の部位の役割

を各CFTが担うとして、それぞれがどう連携

して、どう情報をやりとりして、会社という人間

が動くのであろうか?ここが知りたいのである。

以下、関西学院大学リポジトリ より抜粋

 

 

・V up プログラム

『V up プログラムは CFT と同様に、 部門横断

的に10人程度のチームを組んで実施される。 

それは、 日産本体だけで400以上ある各部署

の課題を洗い 出し、 長くても6カ月を目途に

解決する業務改善手法である。 実際にこれを 

用いて、 2005年3月までに4,400件以上の多く

の課題が解決された。 V up プログラムの特徴

は、 次の通りである。

 

①分析ツールを固定しないで、 課題に応じて

変える。 

 

② V up プログラムは、 課題の内容により 

V up と V FAST に分かれる。 V up は解決まで

に3~6ヵ月かかる大きな課題を扱い、 V FAST 

は1ヶ月程度ですむ身近な課題を扱うことにし

ている。 どちらで解くかは部長が決める。 

 

③部門横断的にチームを編成する。 部署ごと

の問題も他部門に影響を与え たり、 他部門の

影響を受けるからである。 

 

④ 課題は多様なルートから提案される。 CFT、

国内外の地域の経営会議である 「マネジメント・

コミッティー」、 部長や部下の直接提案、 事務局

が設置した提案箱 「イシュー・バンク」 から提案

される。 

 

⑤目標も結果も数値化する。 測定は

 「バリデーター」 とよばれる経理部社員が担当

し、 課題を解いて得られる効果を事前に予測

したり、 ライン組織 が実施した実際の効果を

測定する。 ただ、 V up の効果は必ず財務値

に換算しなければならないが、 V FAST の

効果は必ずしも財務値に換算しな くてよい

ことになっている。 測定される指標は、 売上

アップ、 コスト削減、 品質アップのいずれか

に明確に結びついていることが必要である。 

また、 指標は必ず2指標をセットでつくられる

ようにしている。 第1指標は主目的の指標で

あり、 第2指標は第1指標を達成することに

よって発生する可能性ある弊害を防ぐための

指標である。

 

 

2. V up チームと V FAST チーム 

V up チームのメンバーは、 

・V リーダー (1名) ……課題達成の責任者

   (部門長、 部長クラス) である。 

・V パイロット (1名) ……解決案作成の立役者で

  あり、 議論進行役 (課長ク ラス) を務める。

   V パイロットは CFT のパイロットと同様に、 

  大 胆で斬新なアイデアを出しやすくするために、 

  結果に対する責任を 問われないようにしている。 

  いかにチームのメンバーのモチベーショ ンを

  高めたり、 有効なアイデアを引き出すかの工夫

  が重要である。 

・V エキスパート (1名) ……V リーダーや 

  V パイロットのサポート役であ る。 V パイロット

 を経験した後、専門的な研修を受けた人が担当

 する。

・V クルー (平均6~8人) ……V リーダーと 

 Vパイロットが協議して複数の部署から選ばれる。 

・バリデーター……効果の事前の予測や、 ライン

 の実施結果の測定を担当する人である。 

 

から構成される。 V up チームのメンバーの役割

は、 CFT が全社的問題の解決案を提示すること

に対して、 部署ごとの課題の解 決の提示を目的

としている点で解決すべき問題が異なっているが、 

それぞれのメンバーの役割は類似している。

V up 活動の手順は、 次の通りである。 

 

① まず、 部門長、 部長が課題を掌握すること

から始める。 課題はさまざまなルートで 

V リーダーに提起される。 重要な課題を検討

するために、 自 らリーダーになり、 部下の中

から V パイロットを使命する。 

 

② V リーダー、 V パイロットに V エキスパート

とバリデーターも参加して、 課題の決定とその

課題を解いて得られる財務効果を事前に

予測する。 

 

③ V パイロットが V up チームを編成するため

に、 部門横断的に V クルー を選抜する。 

 

④ V up チームが詳細なデータを分析し、 課題

を解決するための根本要因 を特定し、 その

要因を取り除くための効果的な方策を作成する。 

その方策 についての検証試験を実施し、 有用

な方策を決定する。 

 

⑤ V up チームが立案した方策を、 ライン部門

がいかに実施するかを決め、 実行する。 

 

⑥バリデーターがライン部門の実施した効果を

測定し、 目標達成度を評価する。 約3年間は

継続的に効果を検証するようにしている。 

また、 活動内容をイントラネットで公開する

ようにしている。

 

これに対して V FAST チームのメンバーは、

・リーダー (1名)……課題達成の責任者である。 

・ファシリテーター (1名)……資料やアジェンダ

 を事前に用意し、 1日の集中討議で司会進行

 役を務め、 有効策をまとめる解決策提案の

 責任者 である。 

・エキスパート (1名) ……課題解決促進者

 であり、アドバイザーである。 

・クルー (平均6~8人) 

・バリデーター 

 

から構成される。これに対して

V FAST 活動の手順は、 

①課題設定、 

②チーム編成と集中討議の準備、

③集中討議 (チームでの議論は1日だけ)、 

④方策提案とライン組織による 実行、 

⑤定着と評価、 

の順で実施される。

 


3. CFT 活動と V up 活動の連動 

今までに述べた CFT と V up プログラムは

日産マネジメントウエイを支 える両輪である。 

CFT は全社的なマクロ的な課題を扱うことを

目的としており、 課題の報告先はCEOである。 

これに対して、 V up プログラムは部署ごとの

ミクロ的な課題を扱い、 その課題の報告先は、 

その部門のトップ (副社長クラス) である。 

 

NRP の策定時には、 他社の取り組みに追い

付けば よかったので参考にする改善の事例

があったが、 再生が軌道に乗った 「日産 180」 

以後では、 他社が実行していないことにも挑む

必要が生じた。 そのためには、 課題を細かく

分析する仕組みが必要になった。 また再生が

進んでく ると、 改革が実施され尽くし、 初期

ほどの劇的な成果を上げる施策が少なく

なってくる。 そのために成果を上げるため

には、 きめ細かな改善の積み重ねが重要に

なった。 その結果として、 きめ細かな対応を

可能にする V up プログラムが必要になった

と考えられる。 

 

CFT と V upプログラムの関係を示した図が、 

(図2) である。 CEO は CFT からの全社的な

観点からの課題とその解決策の提案を受け、 

その提案 の中から実施策を決定し、 ライン

組織に実行を命令する。 しかしライン組織 

では、 問題なくすぐに実行に移せる場合と、 

実施上の課題がある場合もある。

 

課題がある場合には、 V up プログラム 

(V up か V FAST のどちらかを用いて) で

課題とその解決策を検討することになる。 

その課題と解決策をラ イン組織の長に

提案し決定すれば、 それをライン組織が

実行することになる。』  抜粋終了。

 

 

このようにCFTからCEO経由で、もっとミクロ

な課題を扱うV upプログラムチームへと課題

が渡され、黄色の各V upプログラムチーム

が課題の解決方法を考え、400以上ある各

ライン組織へと毛細血管でつながれるように

伝えられていくのであろう。

大きな課題から、小さな課題へとバトンが

引き継がれていく様子がよくわかる。

そして、それらを実践するための解決策を

V upプログラムチームなるものが考えてくれ、

それをライン組織がやってみる!という、

画期的な方法で、毛細血管が整備されて

いったと言える。

なお、毛細血管とは、”情報”の伝達ルート

であり、”栄養”の伝達ルートはまた別の

業績評価という方向性から与えている。

バリデーターと呼ばれる人をチームに配属

させて、数値などに換算していくのである。

”栄養”に関してはまた別途分析したい。

 

いずれにしても、この毛細血管の張り巡ら

せ方が見事であり、経営課題が見事に

”情報”として末端組織まで届いたことに

なる。これはマネをするに値するであろう。

とくに素晴らしいのが、CFTであり、10人の

法則をチームだけでなく、チーム数も10という

10の法則を知っている、人間の10の部位を

知っている、かのような配置の仕方であった

のが驚きであった。

そして、CFTからV upプログラムチームへと

別のメンバーに入れ替え、ミクロな視点での

課題解決チームをまた同じく10人の法則を

用いて編成してあることも、とても素晴らしい。

 

そして、ライン組織が解決方法を実施するの

に、時間がかかりそうならV upチームを選び、

時間がかからなそうならV FASTチームを

選べるというのも、ライン組織長にとっては

とてもやりやすかったはずだ。

 

いかがであろう?

これで、CFTという短期的な課題チームから

V upプログラムチームという中長期的な

チームへと移行され、毛細血管が張り巡ら

されて、いざ、会社という巨体の人間が動く

様子がとてもイメージできるのではないか。

さあ、会社が動くぞ!という気配がリアルに

感じ取れるのではないかと思う。

そして、その動く様子を、イントラネットで

バリデーターの数字を集計して公開すること

でよりリアルに従業員が感じ取れるのだ。

これもティール組織らしい公開であろう。

 

これが、中規模以上の会社がLv5達成型組織

という既存組織からLv7進化型組織へと向かう

ための第一歩であるのだ。ここから徐々に

アメーバ式に組織を分割していくことになる

のであるが、まだ第一歩を踏み出したにすぎ

ない。先はまだ長いのでゆっくり記載して

いきたい。