こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

少し更新ができない日が続き、すいません…その一番大きな理由はまだお話できないものの、またもや色んな事が押し寄せる暴風雨期に突入

 

その1つが、とあるTVシリーズのBG仕事だった…このシリーズは長寿人気番組なので、クルーも慣れていてちゃんとオーガナイズされているし、BGも大体いつも同じ人達を使うので、何となく「気心知れた」という感じ…また実際撮影もサクサクと進むので、そのオファーが来た時も、深く考えずにOKした…

 

ところがその前日に、コールタイムなどの詳細が送られてきた時、思わず目が点になる…まず「ワードローブの着替えを2着持って来い」と言う?!…という事は、最低3つ以上の違うシーンを撮影する予定だと言うことである…しかも撮影場所は、何とヨンカーズ…これはマンハッタンから車で45分~1時間くらい掛かるかなり離れた場所である…という事は、車を持たない私は送迎バスに頼るしかないので、また朝メチャクチャ早い時間にピックアップの場所に行かねばならない?!…やられた…このシリーズはいつも大体NYC内の撮影が多いので、すっかり油断したが、これは長丁場確定である…

 

そのコールタイムは早朝6時?!…だいぶ日が長くなってきたので、せめてもう少し遅ければ地下鉄でも行けるのだが、やはり5時から地下鉄に乗るのは躊躇する…特に朝早い時は、地下鉄車両はホームレスさんの宿泊所になっていたりするからだ…(過去記事参照)

おまけに、その2着の着替えの中にはスーツも含まねばならないので、キャリーケースを転がしていかねばならない…これはもうLiftや!…と、カーサービスを使う事にする…多分今日は長丁場だから元は取れる!と言うタヌキの皮算用もある…

 

いつも予想以上に早く車が来て焦るので、その日はちゃんと出かける準備をしてから車をリクエスト…すると5分後に到着する…とすぐにメッセージが来たので、下に降りてアパートの外で待つことにする…

 

間も無く車は時間通りに到着し、着くなりさっとトランクを開けて、私のキャリーケースをさっと取り上げ、トランクに入れてくれた…普通のNYタクシーの中には、頼まないと中々やってくれなかったりするのも多いので、これで印象爆上がり思わずチップを多めにあげたくなるではないか

 

車だと、地下鉄を使った時の半分の時間で着く…まだ日の出前ではあったものの、5時半頃にはかなり明るくなっていた…

送迎バスは早朝のハドソン川沿いを走って行く…



最初は窓から景色の写真を撮ったりしていたが、すぐにそのまま爆睡…なんせ、その日は朝3時起きだったのだ…バスから降りると、やっと陽が上がっていた…



ホールディングに着くと、テーブルに「SAG」と「NU」というテープが貼られ、それぞれ座る場所が分けられていた?!…ちなみに「NU」というのは「Non-Union」つまり、ユニオンに入っていない人達の事だが、確かに昔はこんな風にユニオンとノンユニオンは、時にはホールディングまできっちり分けられていたりし、食事やクラフティにも思いっきり差がつけられていて、「SAG Only」と書かれたクラフティに行くと怒られ、「アパルトヘイトかい?!」と突っ込んだりした…しかし最近ではあまりそういう事もなくなってきていたのだが

 

そうこうする内に、ワードローブの用意ができた様だったので、何のアナウンスもされる前に、慣れたユニオンのBG達はさっさとワードローブのチェックに行く…今日は着替えも含めて3着分のチェックが必要なので、おそらく時間もかかるだろう…と思ったら、私は持参したもので全てOKが出た…

 

その最初の衣装に着替え、皆のワードローブが終わるのを待っていると、段々お腹が空いてくる…通常ならこの間に朝ごはん…と思ったら、何と朝ごはんはセットの近くで、そのセットまではまた送迎バスで行かねばならないと言う?!…そしてさらに、その最初のシーンに使われる予定なのは、ユニオンの人達だけだと言う?!…と言うことは、25人のノンユニオンの人達は、別にこんなに朝早く来る必要など何もないではないか?!…しかし1台のバスで全てのBGを運んでしまいたかったから、ノンユニオンも一緒に来させた…という事なのだろう…あんまりな話である…

さらに、セットに呼ばれない、と言う事は、朝ごはんにもありつけない事を意味する無駄に早く来させられた上、朝ごはんも抜き?!…それって人道的にどうよ?!

 

やがて準備ができたので、バスに乗ってセットへ…そしてバスから降りると、我々は一目散に朝ごはんのテントへ…そこで、取り敢えず取れるものを皿に取り、何とその場で立ったまま食べる?!勿論、写真を撮るどころではない…そりゃないだろ?!…と言いたくなるが、そうしてダッシュで食べている間に、PAが呼びに来る…そこでやっとの思いでその大半をかっこみ、コーヒーは熱くて飲みきれなかったので、そのままセットに持参…実際の撮影までには少し時間があるのが普通なので、その間に飲もう…と思ったのだが、そのプロダクションはやけに展開が早い?!サクサクと準備が終わり、あっという間に撮影開始?!…それでもコーヒーはかろうじて飲み干せた…


サクサク進むのはクルーだけではない…そのシーンも、ほとんど1~2テイクでOKが出、ドンドン進む?!…そして、何とそのシーンの撮影は、3時間も経たない内に全て終わった…

 

そこでホールディングに戻り、2着目の衣装に着替える…最初のシーンがこんなに早く終わるとは思わなかったが、このペースだと、下手をしたら全部8時間で終わるのではないか?!…いや、オーバータイムを期待したのだから、それは困るだろう?!…とホールディングでBG達の憶測が飛び交う…結局その次のシーンは結構時間がかかり、それが終わってからランチとなったが、そのランチも2時間ほど遅れる…それで我々ユニオンにはミールペナルティがつくが、ノンユニオンにはつかない…しかもランチの時には、クルーとユニオンBGが先で、ノンユニオンはさらに待たねばならない…朝ごはんも食べられなかったからさぞお腹が空いているだろうに…しかも、彼らが食べる頃には、目ぼしい料理はなくなっている可能性もあるのだから、気の毒な事ったらない

 

もっとも、これがプロダクション側の本音なのだろう…要するにプロデューサー達は、我々BGに人道的な扱いをしなければならない…なんてまず思っていないのだ(過去記事参照)…ただ、ユニオンのBGに対して最低限の事が守られているのは、これはユニオンが我々の代わりにうるさく言ってくれるからに過ぎない…そして、そういう労働者としての権利を得てきたのも、ユニオンがストなどで勇気を持って闘ってきたからなのだ…それがない時の自分の立場の弱さを改めて実感した…

 

 

★過去記事★