こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子、また独断によるツッコミなどをお届けしています。

 

少し前に、仮押さえ日を何度も変えられたVOプロジェクトのお話をした(過去記事参照)が、最終的に録音日が決められた後は、拍子抜けするほどあっさりブッキングとなり、そのまま変更される事なく収録日となった…

 

これは西海岸のプロダクションなので、最初エージェントに「あなたはホームスタジオを持っているか?それともレコーディングスタジオが必要か?」と聞かれる…

実は私も一応ホームスタジオを持っており、コロナ禍中は全てそのなんちゃってホームスタジオで録音していた過去記事参照)のだが、いかんせんニューヨークのアパートでは騒音対策がレコーディングスタジオ程完璧ではない…また、レコーディングの間は、在宅勤務している夫は、その間別室で音を立てないように潜んでいなければならず、トイレにも行けない…またセッティングなど技術的な事に関しては、どうしても私は専門外なので、よくわからないし、それがストレスになる…そこで、エージェントには「できればレコーディングスタジオを希望するが、どうしてもそれが無理ならホームスタジオもある」と伝えた…バジェットによっては、NYでわざわざレコーディングスタジオを確保するのが面倒なので、それなら別のホームスタジオを持っている人を選ぶ…となる可能性もゼロではないからだ…もっとも、そんな風にタレントよりバジェットの方が大事なら、こっちだってお断りや!と言える程の度胸は私にはない…場合によっては私が仕事をしたNYのレコーディングスタジオを紹介してもいい…と思っていたのだが、その必要もなく、先方からあっさりNYのレコーディングスタジオの住所を送ってきた…案ずるより産むが易しである…

 

これは一応ユニオンの仕事だったが、一般のコマーシャルではなく、カリフォルニア州のとあるサービスについてのお知らせと説明…というもので、カテゴリーはIndustrial(企業ビデオ)と同じものである…その多言語バージョンの1つの日本語を私が担当したわけだが、この手の外国語のビデオは大体Non-Unionなのに、ちゃんとSAG-AFTRA契約にするとは、さすがUnion State(ユニオンの力が強い州)カリフォルニア?!

 

ちなみに今回録音するビデオは3本…という事で、その為に3時間ブックされていたのだが、これも送られてきた英語版ビデオをみると、一番長いビデオでも5分、後は30秒と15秒?!…これに3時間もいるんかい?!下手したら1時間で終わるんちゃうか?!…と、正直のところ思ったりもしたが、まぁ、短い程難しい部分もあるし、ものすごくこだわるディレクターなら時間かかる事もあるから、そういう時の為にも時間が十分とってもらえるのはありがたい…

 

それにギャラも、最初は、「一般のコマーシャルよりはやや安いが、それでもまぁ、そんなに悪くないな…」という印象だったが、送られてきた契約書をよく読むと、それはビデオ1本分のギャラ?!…という事は、3本分のビデオだと、実際はその3倍だった?!さすがユニオン!…というか、カリフォルニア州、太っ腹?!

しかし、これだけのギャラを支払うという事は、それなりのレベルを期待されているのだろう…勿論、それまでだっていい加減な仕事をした事などないし、オーディションに受かったわけだから、私がどの程度のものかは先方にもわかっているはずなのだが、何だかやけに緊張し、いつにも増して念入りに準備をした…

 

レコーディング・スタジオはミッドタウンのタイムズスクエアのすぐ近く…

 

 

録音のテクニシャンがブースの隣の部屋にいてくれ、西海岸のディレクターと日本人のモニターさんがZoomで繋がっている…モニターというのは、日本語のわからないアメリカ人のディレクターの代わりに、私の日本語の発音や滑舌をチェックする役割なのだが、その人は何と関西弁だった?!…普段なら同じ関西人同士話が弾むところだが、この場合は少し困った

 

実は私も母国語が関西弁なので、関西弁を話す人がそばにいると、ついついそのイントネーションに引きずられ、ただでさえ最近怪しくなっている標準語が一瞬わからなくなったりするのだ…なので私はもし自分がモニターをやる時は、絶対標準語で話すようにしているのだが、どうもこのモニターさんはその辺りは無頓着…というか、そもそも標準語が話せないのかもしれない…となると、もし私が標準語のアクセントで迷った時も頼れない?!…もっとも、誰かに頼ろう…というのがそもそも間違っていたのだ…プロならちゃんと自力で標準語を喋れないでどうする?!…とはいえ、何だか命綱をいきなり外された様な気もしないでもない…

ただこのモニターさんが、あまり自分で仕切りたがるタイプの人ではなかったのは、ラッキーだった…モニターの中には、「仕事してるよアピール」のために、不必要に「No」を連発したり、ディレクターがちゃんといるにも関わらず、勝手にダメ出ししてくる奴もいたりするからだ…

 

それでも、最初は不安と緊張で心臓バクバクこれマイクが拾ったりせんよな?!…と少し心配になったほどだが、勿論そんな音が入る事はない…しかし日本語なのに録音の前にこんなに緊張した事は、これまでなかったと思う…

 

かくして録音が始まった

 

(その2へ続く)

 

 

★過去記事★