こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。
NYアクターの生活、オーディション、現場での様子などをお届けしています。
コロナ禍以来、定着したホームスタジオでの録音…少し前までは、「ホームスタジオがある」というだけで、「おおっ、この人はテクに強いんやな!」とポイントが高く、「普通はないわなぁ~」というのが、まぁ常識だった…VOのオーディションを自宅で録音…というのがたまにあったが、「携帯のボイスレコーダーでもいいよ」…てな感じで、そのクオリティまで問われる事はほとんどなかったのだ…もっともそうい言いながら、あまりにも音が悪いものは不利になったが、「それをさっ引いて」という感覚が存在した時代があった…なので、私のなんちゃってホームスタジオ(過去記事参照)でも、さほど問題はなかったのだが、それがコロナ禍で、レコーディング・スタジオで録音できなくなると、ホームスタジオへの要求レベルが格段に上がった…
ともかく、仮にも声の仕事をするなら、ホームスタジオは当たり前…それも高度なマイクやインターフェイスを揃え、防音やエコー対策も完備…さらに、インターネットのスピードも大事…という、テク&ハード面への要求レベルも無茶苦茶上がる…そしてそこで録音されるものは、すぐに現場で使えるプロのクオリティのものでなければならない…って、そんな無茶な!…と言いたくなるが、事実それができなければ、声の仕事も来ない…と言っても過言ではない…
正直のところ、私は「ちょっと待ってぇなぁ~!」と言いたくなる…私は声優としてなら、ちゃんとプロレベルの技術も経験も持つが、音響技師としてはド素人なのである…「インターフェース、何それ?」とちょっと前まで思っていたし(実は、今もよくわかっていない…)、インターネットも電話回線のDSLからケーブルに変えたのは、比較的最近の事というくらいのテク音痴である…なのに、そのテクの仕事もしろと?!…しかも、ホームスタジオでの仕事は、声優としてのギャラしか支払われないのに…
しかし、背に腹は変えられない…というわけで、テク音痴の私も、うちのなんちゃってホームスタジオのアップグレードを試み、それのおかげで何とかコロナ禍を生き延びる事ができた…(過去記事参照)
しかし、正直のところ、私はもしレコーディング・スタジオで録音できるなら、喜んでそちらへ行く…レコーディング・スタジオでは、技術方面の心配をする事なく、声優の仕事だけに専念できるからだ…完全防音されているから、救急車が通ってNG…という事にもならないし、ネットのコネクションのせいで、音声がDrop offやDigitalizedされてしまう事もない…(ちなみに、これがどういう状態で、何がいけないのか私にはさっぱりわからない…ただ、この2つのせいで、再録音させられる…という事だけわかっているだけである…)
今日の仕事はアニメの吹き替えだった…そのアニメのシリーズは、現在4シーズン続いており、私はずっとそのレギュラーのキャスト(および、大人の女性の声全て)と、シーズン2からは翻訳も担当してきた…今日はそのシーズン4最後の録音で、実はシーズン5もやることになるのかどうかは、実はまだわからない…つまり、そのシリーズとの関わりは今日で最後になる可能性もある…その録音も最初は勿論スタジオ録音だったのだが、やがてコロナ禍でホームスタジオに移行し、現在に至る…ひょっとしたら最後になるかもしれないから、できるだけいいものを作りたいな…というわけで、最初は少し感傷的になっていた…
…のだが、やがてその感傷も吹っ飛んだ…そういう時に限って、天はいつも信じられないような障害をもたらす…この日は、あろうことか、うちのアパートのすぐ前で道路工事が行われていたのだ!…幸いドリルを使うような作業は午前中に終了していた様だが、その後コンクリートミキサーなどの大型車がずっと居座り、セッションの後半は、その騒音に絶えず悩まされる事となった…
それも、救急車の様に一瞬にして通り過ぎるものはまだその間待てばいいのだが、このミキサー車はずっと居座り、何やらゴロゴロ回し続ける…それでも時々その音が止まるので、その時に「よし!」と録音…その短いチャンス内に録音を終えなければならないので、トチリなどは許されない…そうして、やっと録った!…と思ったら「Digitalized!」…さっきも言った様に、それが何なのかわからないけれど、その録音が使い物にならないのでまたやり直し…という事はわかる…そこで、一瞬静かになった時を待ち、録音をスタート…するや否や、今度はオートバイが通る!…思わず窓の外に殺意が芽生えるのは、こういう時である…
それでも録音自体は何とか時間内では終わったが、出来栄えに関しては、なんともスッキリしないものが残った…
おそらく、これがもしレコーディング・スタジオでの録音なら、もっと短時間で終わったはずだし、その分納得のいくテイクでもっといいものになったはずだ…
アニメの仕事なので、このセッションは、絵と録音した音を合わせるプロの技師とオンラインで繋がった、ライブでのセッション…その分、自分で編集しなくていいのはありがたいが、こういう風に騒音がひどい…という様な時に、「なら別の日に…」というわけにいかない…
特に、前回のレコーディング・スタジオでの録音(過去記事参照)で、その楽さを思い出してしまった後のホームスタジオでのライブ録音…しかも、これが他に手段がないから仕方ない…という頃ならまだ諦めもつくのだが、今はもうスタジオ録音でも大丈夫ではないか?!…と思ってしまうだけに、今後ホームスタジオの録音はより辛く感じた…
しかし、考えてみたら、去年の今頃は、レコーディングスタジオでの録音は勿論、地下鉄に乗るのさえ怖かったのだ…その事を思えば、ワクチンのおかげとはいえ、普通の状態へ、本当に少しずつではあるが、近づいている…のかもしれない…
★過去記事★