こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子などをお届けしています。

 

昨日、2021年のSAG AWARDが発表された。この受賞式は全てZOOMで、受賞者のスピーチは事前に録音されたもの…この方法だと、ライブ感はないものの、途中でネットのコネクションが切れたり、回線スピードのせいで音声が悪かったりするような事態は避けられる…ゴールデングローブ賞の際、一番最初の受賞者であったDaniel Kaluuyaのスピーチが、最初ミュートになっており、危うくそのスピーチも途中でカットされるところだった…少なくとも今回は、こういう事態は避けられるわけだ…ZOOMは非常に便利な機能ではあるが、こういうテク問題に振り回されるのが怖いところだ…

 

さてこのSAG AWARD、日本ではあまり知られていないが、実はゴールデングローブ賞と並んでオスカーこと、アカデミー賞の前哨戦として実は重要な役割を果たす、結構大きな賞だったりする…ただ、その対象は映画とTVの俳優(とスタント)のみ…というのも、その賞は俳優のユニオンSAG-AFTRAが主催し、SAGのメンバーの俳優によって選ばれるからで、その評価の対象はあくまで演技重視…なので、テクノロジーを駆使した特撮映画や、監督のセンスが光る作品が選ばれるBest Pictureの代わりに、Outstanding Performance by a Cast in a Motion Picture(映画のキャストによる卓越したパフォーマンス)、すなわち俳優達の優れたアンサンブルによる優れた映画…という評価になる…それだけに、俳優達にとって、この賞の意味は大きい…というのも、同業者の俳優達によって、あんたの演技は素晴らしい!と認められたようなものだからだ。

 

前にも言ったが、実は私は今年はこの賞の候補作品の選考委員を務めた(過去記事参照)のだが、その際に評価の基準の一つとして重視していたのは、Diversity(多様性)…つまり、白人俳優だけに偏らず、2種類以上の人種の俳優を使っているかどうか…というのも、密かに選考基準に入れていた…そして、そう思っていたのはどうやら私だけではなかったようで、候補作品はこれまでにない多様なものとなった…また、これは一つは制作側も、それが評価の基準になる事を予測し、頑張ってDiversityに努めたせいもあるかもしれない…少なくとも、白人ばかりのキャスティングに対して「ちょっとこれは不自然ちゃうか?!」という価値観が生まれるようになった…というのは大きい…もっとも、Diversityだけを売りにして、有色人種を使いさえすればいいか…というわけではない…しかし、以前は機会さえ与えられなかったそういう有色人種の俳優達にも、競争のチャンスを与える事で、結果的に作品のレベルも上がった…というのは言えるような気がする…これは贔屓目かもしれないが、今年は特に高レベルの力作が多かった。

 

ちなみに、私が選考委員を務めたのは映画部門のみで、TVはまた別である…実は毎年、候補作の映画を見るのに必死で、いつもTVはほどんどノーマークだったのだが、今年は映画の候補作をすでに見ていたので、TVの候補作も、少なくとも1話分は全て見ることができた…が、いかんせんこれは数が多すぎる…それに第一話には出てこないキャラももいたりするのだから尚更である…TVの選考委員は本当に大変だっただろうな…と思うが、ここでは映画に関してだけ述べさせてもらう。

 

以下がその映画部門のSAG AWARDの結果である。

 

最優秀映画賞 - 「The Trial of Chicago 7

 

主演男優賞 - Chadwick BosemanMa Rainey’s Black Bottom」

 

主演女優賞 - Viola DavisMa Rainey’s Black Bottom」

 

助演男優賞 - Daniel KaluuyaJudas and the Black Messiah」

 

助演女優賞 - Yuh-Jung YounMinari」

 

最優秀スタント賞 - 「Wonder Woman 1984

 

スタント賞が入っているのが、いかにもSAGである…というのも、スタントさんもユニオンのメンバーだからだ。ただ私は「このスタントはすごい!」と評価できるほど、実はスタントについてはそう詳しくないので、これについては言及を避ける。

 

そして御覧の通り、映画部門での受賞者の俳優陣はなんと全て有色人種である!…これはさすがに前代未聞だろうが、これらの受賞作品については、私もこのブログでご紹介している(過去記事参照)ように、私自身の選んだ候補者とも一致しているのが嬉しい限り…特に、「MInari」で絶妙な婆ちゃんを演じていたYuh~Jung Younの受賞は、同じアジア人として本当に嬉しい…

 

それに対してTVの受賞者は、ほぼ全員白人だったが、まぁ、これは受賞の対象になるには、ある程度大きな役でなければならず、そういう役にはまだまだ圧倒的に白人が多いというのもあるだろう…しかし、これもいずれは変わる事を期待する。

 

さて、この多様性が、果たしてどれだけオスカーに反映されるか…気になるところである。

 

★過去記事★

 

 

 

The Trial of Chicago 7」と「Judas and the Black Messiah」についてはこちら

 

 

Ma Rainey’s Black Bottom」についてはこちら

 

 

Minari」についてはこちら