こんにちは。ニューヨークで役者やってます、まみきむです。

NYアクターの生活、オーディション、現場での様子などをお届けしています。

 

先日、2021年のGolden GlobeSAG Awardノミネーションが発表された。例年なら12月頃に発表されるのだが、今年はコロナ禍のせいで少し延期された…これらはアカデミー賞の前哨戦とも言われている賞だが、中でもSAG Awardsは俳優のユニオンSAG-AFTRAの主催する賞だけに、我々俳優にとってはより注目度が高い…というのも、その受賞対象は俳優とスタントのみ…Best Filmはプロデューサーやディレクターへの栄誉というより、俳優のアンサンブルが素晴らしい!…という点に重点が置かれる…もちろん、そういう俳優を選んだのはディレクターやプロデューサーでもあるので、全く蚊帳の外に置かれているわけではないのだが…しかし、受賞しやすいのは、CGを使いまくった映像…というより、個々の俳優の演技をじっくりみられるような作品が好まれるのがは確かである。

 

実は私は、この今年のSAG Awardsの候補作の選考委員に選ばれていた…これはユニオンのメンバーの中から毎年抽選で後ランダムに選ばれるものである…SAG Awardsは映画TVの2部門あるのだが、私が務めたのは映画の方の選考委員だった。

これまで何度か「訳あって映画を見まくっている」(過去記事参照)と映画を紹介してきたのはこの為だったのだ。

その仕事は「候補にして下さい」と送られてくる映画を片っ端から見まくって、そこから主演男優、主演女優、助演男優、助演女優、ベスト・アンサンブル(実質的にはベスト・フィルム)、そしてベスト・スタントの候補を、それぞれ5つずつ選んで投票するのが仕事である…

それで、この3~4ヶ月の間に、70本以上の映画を見た…これまでの人生の中で、ここまで集中して映画を見まくったのは初めてである…これは実に贅沢で、幸せな経験ではあったが、実はかなり大変でもあった…もっとも対象はアメリカ映画だけなので、外国映画やドキュメンタリーを含むオスカーよりは楽だったかもしれないし、もしTVの方の選考なら、それこそ見なければならない番組数は膨大なものになるのだが…

 

その任に当たり、私は送られてくる映画はできる限り見よう、そして見るからには必ず最初から終わりまで見よう…と決心していた。見ていない作品は候補にできないし、せっかく多くの人達の労力によって作られた作品なのだから、せめて最後まで見るのが礼儀というもの…それにそれが選考委員の責任でもある…と思ったからだ。

とはいえ、さすがに70本以上も見ていると、最初の15分くらいで、その映画が面白いかどうかが、何となく見当がつくようになる…これは恐ろしい事に、「最初は面白かったけど、後になってからつまらなくなる」というのはあっても、「最初はつまらないけれど後になってから面白くなる」というのは不思議とない…大体面白い作品というのは、最初の5分から観客を離さないものなのだ…

 

例年なら、そういったスクリーニングは、映画館やスクリーニングルームなのだが、このコロナ禍で映画館等は全てクローズ…そこで、その大半はネット配信で、後にDVDが送られてくるものもあった…なので大画面の迫力は経験できなかったが、個々の俳優の演技を見るなら、小さいコンピュータのスクリーンでも私は一向に平気…もっとも、その前に我が家のネット環境が改善された過去記事参照)のは本当にラッキーだった。

 

SAG Awardsの候補に送られてくる作品は、一応名の知られた映画祭で評価を受けている作品や、話題になった作品がほとんどなので、メジャーやインディに関わらず、比較的良質なものが多い…とはいえ、中には最初の30分間で、もう後は見るのが苦痛になるようなハズレもあったりする…しかし、ポリシーに乗っ取って最後まで我慢して見ると、終わり近くに、1シーンだけ出てきた女優さんに目が引き寄せられる…調べて見ると、なんとブロードウェイのベテラン女優ではないか?!友情出演という奴かもしれないが、そういう事もあるから、やはり最後まで見よう…と肝に銘じた…

 

ベスト・アンサンブルの候補作を選ぶ際に、私が最も重要視したのは、「Diversity」つまりどれだけ多くの人種が画面に登場するか…主要キャラは白人ばかりでも、サブキャラに黒人やアジア人、ラテン系、中近東系の人達が大勢いるか…これを評価の基準にした。

 

そういう点から見ると、今シーズンは以前にくらべて、全体的に随分Diversity(多様性)が進んだような気はする…「Inclusion」過去記事参照)の効果はあったようだ…とはいえ、アジア人のスクリーン上の人口密度は、他に比べるとまだまだなのだが、この調子で頑張って欲しい…という希望を込めて、私自身はDiversity反映されている作品から多く選択した。

 

もっとも、皆が私と同じ基準で選んでいるわけではないので、私の基準では「これはマストでしょう!?」と思ったものが、最終の候補作に入ってなかったり、かと思えば、私は最初の30分で嫌になった作品の俳優が入っていたりし、「何で?!」と思ったりもしたが、逆を言えば、捨てる神あれば拾う神あり…これもまた多様性の1つなのかもしれない…

 

これらの候補作品の中から、今度はユニオンのメンバーが投票して受賞者を決めるわけだが、今年は映画に関しては候補作は全て見ているので、TVの方を頑張って見よう…例年は、映画の候補作をカバーするのに精一杯で、TVまで手が回らなかったのだが、今年はそれができそうだ…

 

もっとも、本音を言えば、できる事なら今後は鑑賞する側より、作る側の方にいたいものである…

 

 

★過去記事★