青空の広がる日曜の昼下がり 駅3階にあるキリンシティの一番奥のテーブル席を陣取る ここは新幹線の乗降コースに隣接しており、旅に出ずとも旅の雰囲気にそっと包まれる私の隠れ場所である 早速ハーフ&ハーフを注文、佐野史郎×鶴岡真弓さんの対談を読みながら相方を待つこと一時間 以前、ヨーロッパ文化の基層にある、ケルト文化研究の第一人者である鶴岡さんの講座を受講したことがあった その時の、オークニー諸島の伝説を思い出す 確か主人公は、美しい姫と一人の若者 常日頃、海の大怪獣が勝手気ままにあばれて海にシケをおこし人々を苦しめるのをみて、美しい姫を怪獣に捧げ安泰な日々を約束させようとする それを知った若者 彼は、きままに暮らす怠け者だったが、美しい姫のために小船にピート(泥炭)を積み込んで、怪獣退治に出撃 船と共に怪獣の腹の中に飛び込むと、腹の中でピートを燃やした 怪獣は、もだえ苦しみ死んでしまった そのときこぼれちったものが、オークニー諸島の小さな島々となったのだという、どこの国にもあるようなおとぎ話 オークニー諸島といえば、ストーンサークルで有名だが、ウィスキー党なら一度は訪れてみたい、最も北にあるウィスキー蒸留所、あのハイランドパークがある処 「北の巨人」ともよばれ、ピートの効いたその風味は私の好みである 本日お誕生日である、東名の阿部さんとこの牡蠣との相性は抜群ぜよ!それ故、講義の内容はすっかり忘れたがこの話だけはずっと残っている 我々はどこからきてどこへ向かおうとしているのか・・・ケルト文化には再生のテーマが込められていると彼女は語る さて、今宵はどこへ旅するとしましょうか?こころは遠くオークニーの海へ、その前にまずは酒を仕入れねば・・・   

お店を始めてからこの十数年、いろいろな人と出会い、さまざまな事があったが、その時その時私の人生のシナリオとして刻まれ、壮大な物語の一ページとなっていく 振り返れば今はただただ、それぞれの出会いに感謝している そして日々、お酒とのSerendipityも同様 先日入荷したセレクシオン・ロホ、1年に一度だけリリースされるスペイン・イザギレ社の最高級ヴェルモットは格別だった(日本に入ってくるのはたったの100本、ちなみに残り3杯ほどございます)

そして昨晩は、ここ日本での新酒利き酒会のお話を伺う・・・東日本の王者は「仙禽」はて?今まで聞いた事のない銘柄である 仙界に生息するといわれる霊鳥、鶴の別称を意味するらしい かつて栃木を代表する老舗として首都圏にも進出していた仙禽酒造だが3年前に倒産 その後、弱冠30歳の兄弟が生き残りを賭けて高級酒路線へと再建の舵を切る マスプロダクション時代にあって、あえて「木桶仕込み」「袋しぼり」「斗瓶囲い」などといった、手間もコストもかかる伝統的な手法を用いた少量多品種プロダクツに注力した、と専門家の方のお話 どの世界も、ひとの情熱や努力はいつの日か必ず形となっていく・・・そう、信じたい 近いうちに「仙禽」を是非味わってみたいものである 今日はどんと祭 冷え込んだ夜には常夜鍋でもつつきながら まだ自分が足を踏み入れたことのない処の、誰かの旅の話などを聴きながら身もこころも温まりたいものである 

寝坊したけど寒くて飛び起きた 冬は我慢を、夏は情熱を訓えてくれるとの父の言葉を実感する こんな時はやっぱスーラータンメンでしょう 犬の散歩から戻り、クックドゥを使って簡単に仕上げ、母と頂きながら日経サイエンスを読む テーマは「結晶」 貝殻は炭酸カルシウムでできているが、海にはカルシウムイオンが豊富にある だから海にいる生物は、脱皮をすると、殻は捨ててしまう しかし、ザリガニは海にいない カルシウムを取れないザリガニは、脱皮するんじゃなくて、殻を溶かして胃の中で蓄えて、もう一回結晶にして再利用、うまい省エネをしているという また古代ローマ時代の神殿は、全部コンクリートでできているが、古代コンクリートは1000年以上も持っていて、現代のコンクリートは、100年も持たないのはなぜか・・・「ローマ人の物語」の小説の背景がぼんやりと見え隠れする 世の中、知らないことがいっぱいあって、それを考えているだけで人生があっという間に終わってしまいそうで怖い 昨晩は、馬場ちゃんにいただいたローズマリーの香りが充満するお店で、遅くまでふたり語り合っていると、帰ったはずの佐々木くんから立ち寿司屋の特製折の差し入れが、御馳走様! お腹がいっぱ~いになるとなぜか女は幸せになって、語り部に加速が増すようである 時間を忘れてしまいそうなので、場所を変えたが結局無駄、5時過ぎまで語った 先日、馬場ちゃんが管理している店舗で突如退職の申し出があったそうな 彼女は、自分の経験を通して、世の中は人と人との縁で繋がっていること、辞めるにしても人生の先輩として後輩たちから惜しまれ、何よりも自分が納得のいく辞め方をすべきであると懇懇と説得を重ねたという 必死に生きている馬場ちゃんに共感し、多くのことを学ばせてもらった夜・・・空を見上げるとなんと星が美しすぎた たった300km上空に行くだけで、そこには無限の宇宙が広がっているんだな そんなことを思ったら今度は胸がいっぱいになった