普段からとっても素敵に呑まれるお客様、ある晩ふらっとおひとりでいらして「おまかせで」と一言、しばらくして、お隣りに久しぶりのお客様がおひとりで座って「今日は僕の誕生日なんです」なんて言われたら、御祝の御裾分けでとても幸せな気分になる 一期一会の出逢いの中に温かな空気が広がっていく・・・ そんな夜が理想 「好客三年店を変えず、好店三年客を変えず」とは食のプロデューサーサカキシンイチロウさんの経営の指針らしい 日本人にとってはあたりまえの「おまかせ」について茂木さんもツィートしていた そこには、サービスや料理店経営についての、日本人のすぐれた哲学があらわれていると 脳はサプライズを好む メニューから選んだ料理だと、何が来るかあらかじめわかっているから、出てきた時のサプライズが減じる 「次は牛ヒレのステーキが出てくるんだよな」と思っていて出るのと、「わっ、牛ヒレだ、びっくりした!」では感激が違う(笑) 海外のレストランにはあり得ない、この「おまかせ」の文化が発達した理由は、日本が「ハイコンセンサス」社会だからである そこにはお互いの人間関係、信頼関係が見え隠れする わたしのお店のスタイルもおまかせである といっても、大半のお客様の好みを把握しているだけであるが それがわかっているから、「おまかせ」というサービスのやり方が成立し、何よりも仕入れに無駄がでない 週末は、気分転換に山形へ・・・ 天気予報は雨だったがしっかり外れてくれて有難う 電車に乗り遅れても構わない しっかり冷えたハイボールとそれは美しい車窓からの山並みがあれば 一応予定を立ててはみてもその通りには行かない、シナリオのないローカルな旅がいい お気に入りの人気店に入って幸運にも席が空いてれば感動もの ここのお薦めの一品が売り切れてても、おまかせの旨い料理にありつければそれもまた好し そんな偶有性の旅が一番こころに残るのは何故だろう 人生もかくの如し どんな状況であれ、今ここを愉しむというこころが大切 一緒に愉しめる仲間がいれば言うことなし 今夜はあたらしいお酒が入荷する 最近お知り合いになった方の好みのウィスキーや、武田からのリクエストのベルモットたち 何も言わずにそっと出した一杯の酒に・・・みんなの驚きの顔を想像するとワクワクドキドキする この国の政治も安心しておまかせできる日がくることを祈りたい      
震災がなければ、今年もあの「藤原祭りお座敷列車」にワイン片手に乗り込んで行くはずだった平泉 平安末期、奥州藤原氏が造営した「平泉の文化遺産」が、第35回世界遺産委員会で遺産に登録されることが決定した(パチパチ) 五月雨降り残してや光堂 「ものを朽ちさせる梅雨のうっとしい雨もこの平泉の 光堂 だけは降り残してきたのだろう、今も昔の輝きを華やかに 見せている」という句を芭蕉が詠んだのは元禄2年(1689年)のことだが 先日前触れもなく、お店に中学の同級生軍団がやってきた 面影のある奴、まったく面影のない奴、でもあの頃・・・のはなしになるとあの頃の面々が浮かんでくるから不思議なものである 今は様々なバックグランドを持ち光り輝いている奴らだが、とおいあの頃を共有し、そして今再会できたことに感謝である 家に帰ると、高校の同窓会のお知らせが届いていて、今回は躊躇うことなく出席に○をつけて投函した 昨晩は、佐々木くんの人生の再スタートをお祝いしようと開店前に焼き鳥「くろ田」へ向かったがおやすみ ならば、立ち呑み「梵天」へと 久しぶりのモツ煮と生ビールで乾杯していると、お隣のおじさまのサバが旨そうで、つい類子して箸を出してしまいました 御育ちの良い佐々木くんはすかさずサンマをお返しに・・・そんなやりとりがあって、それはそれは光堂のような輝きを放つその紳士から「人生は常にアンテナを張り続けること 生涯学びそして愉しく生きることだよ」とのすばらしい言葉を頂戴して別れた まさしく人生の再スタートを切る彼にぴったりの餞のおことばなり 

その夜、高木ちゃんからお借りした「原子炉時限爆弾」を読む 筆者広瀬隆さんが警鐘を鳴らした、原発の危険性、地震による誘発、それらが目の前で現実のものとなったわけで鳥肌がたつ 植物の持つ自然の能力を利用して、環境の浄化をはかることを「ファイトレメディエーション」というが、過去最悪といわれるチェルノブイリ原発事故、その汚染地域であるナロジチというところで、菜の花を使って土地を浄化し、とれた菜種油をバイオディーゼル燃料に変えて利用する、というプロジェクトが実行された 福島でも同様のプロジェクトがいま立ちあがろうとしている 菜の花といえば・・・「菜種晴れ」山本一力の秀作である 3月11日の大震災直後に文庫として出版されたのは奇遇だろうか 我々東北人が苦難を乗り越えて夢と希望を求める主人公の姿から励ましを得られる書なり 一面に広がる菜の花畑を思い浮かべつつ、是非ともこの夏、平泉までの旅のお供に・・・

ナショナルジオグラフィックニュースに、「天の川に浮かぶオレンジの月」の写真が載っていた 美し過ぎたので明日の講習の教材にとゲットする 宇宙というものは、無常で且つ無情なものだ ある夜、二郎先生と佐々木くんと久々の分町パトロールを終えてタクシーに乗ると東の空がすっかりしらんでいた いつしか夏至を迎えていたことに慌てた 何故ならば我が家では夏至の日に物置から扇風機を取り出す いつのころからか扇風機の掃除は父の役割となっていたが今年からはこの私が引き継がねばならないからだ 翌日、ピカピカになった扇風機から心地よい風が部屋中に流れると、ふっと父の匂いがした これからまた暑い季節を潜らなければならないのかあ思うと、ぎっくり腰になりそう(少しなった) 誰もが上半期でことしのパワーをすべて使い果たしたような気分では? その上、今月25日に首都圏で、30日に宮城県沖で大きな余震が・・・との誰かの予言にまた不安が過る 杞の国のある男が、天が崩れ落ちてくるのではないかと心配し、食事ものどを通らず、夜も眠れずにいたことを心配した友人が、「天は気が固まってできているので、絶対に崩れることはない」といって安心させようとしたというはなしを思い出す 杞の国の男を安心させたことから取り越し苦労することを杞憂というようになったというが 想定外の巨大津波や原発事故を思えば、しばしの杞憂は必要かもしれないね そんなことを話しながら、週末、小雨の降る中、少しばかりだが賞与を貰った娘が、私と母をお寿司屋さんへ招待してくれた 親子三代で酒を頂くのは父の四十九日以来である 気持ちよ~くなった母がカラオケ♪カラオケ♪とはしゃぎ、家の近くのスナック?みたいなお店で二次会を 御近所の老人会の方々も昔の歌に酔しれててどこか安らぐ 父の好きだった曲を音を外しながらも愉しそうに歌う母を眺めてわたしも娘も安堵するが・・・父の歌声がどこか恋しい 翌日は、二日酔いの母を元気づけるかのようにモンスターがやってきた 夜、とおいむかしを思い出しながら、モンスターにおはなしをきかせて寝かしつけた それは、今朝の新聞に載っていた詩 彼に語りながら、父を想った


「星とたんぽぽ」  金子みすゞ

青いお空の底ふかく、
海の小石のそのように、
夜のくるまで沈んでいる、
昼のお星は眼にみえぬ。

見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。