不思議な夜だった どこのバーでもそうだろうが、一年に一度いや二度くらい、自暴自棄にな呑み方をしてもう死にたいと涙を流す来客がいる その時にただ黙って酔いに付き添うか・・・悉く死を否定するか・・・父の最期を看取って間もないのもあり、私は後者を選択した 私は貴女の苦しみはわからないけれど死んではいけない死んではいけないと連呼しているうちに与謝野晶子の詩が浮かんできた 「ああおとうとよ 君を泣く 君死にたもうことなかれ」 もっともっと生きたかった時代の叫びが聞こえてくるようだ カウンターの隅ではツッシーがひとり酒 親友が癌で亡くなり週末は涙涙の通夜だったと語り始め・・・徐にカバンの中からCDを取り出し、彼の好きだった百恵ちゃんの曲を流してほしいという(笑) 傍にいた仲間たちも同世代ゆえ、懐かしいメロディに歌詞が思はず飛び出す それぞれの遠い昔に共に酔ってくれた そうこうしているうちに腹も減り、気になっていた近くの立ち鮨屋に行こうということになる 死にたいほど悲しく辛くとも腹は減るもんだ 生きるというのはそういうことである 

日曜日は父の書籍や洋服の整理に明け暮れた 背広やワイシャツはサイズがあるからと思い切ってごみ袋へいれた途端せつなくなる 母が長年セレクトしてきたネクタイは息子や弟に形見分け・・・こうして、少しずつ少しずつ片付けることでこころの悼みも薄れていくのだろうか そして翌日、貸切の電車に揺られ久しぶりの松島へ いつもの路面店で軽く一杯やったあと「小舟」のおかあさんのところへ 相変わらず元気なおかあさんと娘の面白い掛け合いに安堵する 私たちはふだん定食は注文しないが北欧系のカップルが注文したさしみ定食をみてその豪華さにびっくり 観光客相手の値段設定をしているお店も多いけれど、ここはおかあさんのお人側がメニューに表れているので是非一度覘いてみてほしい そういえばここ松島に本社がある松かまが、新しく手がけた満月限定かまぼこ「むう」かぼちゃを混ぜて満月の黄色を出したとか 明日は満月・・・このことろ、帰り道に夜空を眺めることをすっかり忘れてしまっていた 芭蕉の眺めた満月の美しさは今の世もかわることはない 

朝夜さを 誰まつしまぞ 片心 そう芭蕉の詠った愛しいひとへの想いというものも、またおなじである

何かに没頭していないと父を思い出して辛くなるから、マフラーを編む毛糸を買ってきてほしいと母 母にとって生涯一番大切なひとだった父 二人の58年間の想い出って私には宇宙のように無限なものに感じる 夕方、七夕のママのところへ顔出し どうも私の前のお店に新しい方が入るらしい 最後となるかもしれぬ黒いドアを眺めると、たった10年間だけど走馬灯のように出会った方々の顔が過る お店の酒豪横綱はかずえちゃんだ いつのまにか二人のお子たちは幼稚園に入り、先日仕事復帰したとの報せ そういえば7年前、日曜日を中野ちゃんにお願いして営業していたことがあったな その中野ちゃんが二世を連れて新しいお店に来てくれた 来月はご主人と沖縄旅行をするという なんと偶然にも遠く沖縄のつとむちゃんから旬のシークワーサーが届く 回るまわる時の交差の中、出会えた人たちのそのやさしさにこころから感謝です・・・ いままでの疲れがどっと押し寄せてきたのか、12時を過ぎると瞼が重くなってきた さとちゃんの声が流れる吉田慶子さんのメロディと共に子守唄に聴こえてしまってごめんなさい 明日はゆっくり休むとしましょう 今週もありがとう