不思議な夜だった どこのバーでもそうだろうが、一年に一度いや二度くらい、自暴自棄にな呑み方をしてもう死にたいと涙を流す来客がいる その時にただ黙って酔いに付き添うか・・・悉く死を否定するか・・・父の最期を看取って間もないのもあり、私は後者を選択した 私は貴女の苦しみはわからないけれど死んではいけない死んではいけないと連呼しているうちに与謝野晶子の詩が浮かんできた 「ああおとうとよ 君を泣く 君死にたもうことなかれ」 もっともっと生きたかった時代の叫びが聞こえてくるようだ カウンターの隅ではツッシーがひとり酒 親友が癌で亡くなり週末は涙涙の通夜だったと語り始め・・・徐にカバンの中からCDを取り出し、彼の好きだった百恵ちゃんの曲を流してほしいという(笑) 傍にいた仲間たちも同世代ゆえ、懐かしいメロディに歌詞が思はず飛び出す それぞれの遠い昔に共に酔ってくれた そうこうしているうちに腹も減り、気になっていた近くの立ち鮨屋に行こうということになる 死にたいほど悲しく辛くとも腹は減るもんだ 生きるというのはそういうことである