佐野元春の『Back to the Roots~ビートの原点を探す旅20,000キロ』 | 新時代のリアル

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佐野元春のBack to the Roots~ビートの原点を探す旅20,000キロ
http://www.bs-j.co.jp/backtotheroots/

昨夜、BS7で21時から23時にかけて佐野元春の『Back to the Roots~ビートの原点を探す旅20,000キロ』が放送されていました。
内容は、ニューヨーク、トリニダード・トバゴ、セネガルの3カ国を舞台にビートの原点を辿っていくというものでした。

最初のニューヨークは、佐野元春が1983~1984年の1年間音楽活動をした都市として知られています。
ニューヨークのブルックリンで、トリニダード・トバゴの移民達が奏でるスティールパンという楽器に出会います。
スティールパンは使用済みのドラム缶を改良して作られています。
その頃、街ではカリブ海移民の祭典でのスティールパン大会と、翌日深夜に行われるパレードで賑わっていました。
パレードの最中では粉を掛け合う儀式がありましたが、それは白人への揶揄を意味していると語られていました。
全身全霊で踊り歩き、笑顔ではしゃぐ彼らの姿は見ているこっちまで熱くさせるほど迫力がありました。

次のトリニダード・トバゴは、スティールパンの発祥の地で奴隷として大西洋を渡って来たアフリカ系移民が数多く住んでいます。
そこで、佐野元春はスティールパンに魅力を感じ、実際に一から練習を始めます。
スティールパンはリズムの強弱とメロディーの強弱のバランスをとるのが難しく、悪戦苦闘しながらも何とかものにしようとする姿が強く印象に残りました。

最後は、ビートの原点とも言われているセネガルの地を訪れます。
セネガルにはかつて黒人奴隷貿易が行われていたゴレ島があり、負の世界遺産として有名です。
そこにある奴隷の館では、2.5平方メートルの1室に20人が閉じ込められ、トイレの使用は1日1回しか許されず、母と子は別々の所に収容される、など残虐極まりない仕打ちが行われていました。
さらに、奥底には『帰らざる扉』があり、この扉を通って船に積み込まれたものは二度と生きて故郷の地を踏むことはなかったという伝説があります。

セネガルは無文字文化で、伝統伝達者であるグリオは音楽という手段を用いて生活教訓などを語り継いできました。
グリオの長老であるドゥドゥさんは84歳と高齢にもかかわらず、世界各地でグリオ文化を伝え続けています。
佐野元春はセネガルに向かう前から、自作の詩を長老に捧げ、彼らとコラボレーションできないかと考えていました。
コラボの前は詩の朗読が演奏の音にかき消されるのではないかという不安がありましたが、朗読の最中は演奏の音量を下げることで話がまとまりました。
東洋とアフリカの異色のコラボでしたが、上手くマッチし素晴らしい化学反応が起こりました。

この番組を見て、佐野元春は音楽のルーツを大切にする人だという印象を受けました。
番組内で「自分はポップの世界で生きていて日々新しい音楽が生まれているが、ルーツミュージックにはやはり敵わない。」と語っていました。
先人達に敬意を称し、次世代へ音楽をどう継承していくかを常に考えている。
佐野元春は音楽に対してとても真摯なアーティストだと思います。