真冬だった。雪も降った。
体はびしょびしょで、凍えた。
古めかしーボディチェックだって潜り抜ける達人だった。
昔のドラマとかであるでしょ、やたら体を触るやつ。
今だと、ただのセクハラだ。
そんなところに、録音用のMDを隠していたのか!
スマホなんて存在しないからね!
人には言えないが。
それは、別として、ある夜、
偉大な芸術が生み出されようとしていた。
一番偉大だったのは、はっきり言うと俺だ。
あの状況下でぐっとこらえた。耐えた。
周りは、歌っているのにぐっと我慢して歌わなかった。
やった!ついに最高の芸術作品の完成だ!
すべてが終わってからホテルに戻って聞きなおすと
音は割れて、MDは、途中で止まっていた。
と言うように物事は上手く行かない。
当時、若くてお金もなかったよ。
石油ストーブの上のヤカンでお湯を沸かして
カップラーメンを食べて、貯金して、海外に行った。
海外では、観光なんてしなかった。
一途だった。
いまだに、観光に行く連中には、I wish you lonelyと言うことにしている。
そして、あんなことをしていた。
なぜ、あの時、あんなに幸せだったんだろう。
当時は、何も考えず打ち込んでいた。
この瞬間にすべてが終わって、
すべてが犠牲になっても良いぐらいの勢いがあった。
全身全霊をかけてやっていた。
今ダメなのは、観客もそうじゃないし、本人もそうじゃないし、
リア充な人が増えすぎたことによる堕落だな。