前回の記事は、こちら─、
『 コンピュータグラフィックス vs コンピュータミュージック 』
私が思うに、コンピュータグラフィックスと、
コンピュータミュージックとの決定的な違いは、
扱っている "対象" にあると思われる。
コンピュータグラフィックスが扱うのは、
もっぱら─、
光の反射や陰影。または、
物体の運動といった自然現象。
さらには─、
海岸線や山、または、草木の形状などといった、
従来、数学的には扱いにくかった自然現象をも、
描き出す手法が発見されている。
しかし─、
音楽というのは、自然現象ではない。
人工構造物である。
よって─、
その構築には、意図した設計が必要である。
自動作曲ソフトの分野では、
『 Band in a Box 』という製品があり、
「 時間がない時にはプロも使う 」
などと言われたりしているようだが、
さすがにり、人間のプロレベルにはまだ、
いま一歩といったところだろう。
もっとも、完成形を生成できなくても、
"素案" や "原案" を提示してくれるだけでも、
それはそれで、役に立つ場面は少なからずある。
しかし─、
いくら自然界に存在する、
"数学理論" とやらを繋ぎ合せてみても、
そこから、ベートーヴェンの『 第九 』や、
ジョン・レノンの『 イマジン 』が、
生成できるとは思えない。
もちろん、これは私の個人的意見であり、
もしかしたら、そのような音楽を生成する "数学理論" が、
まだ発見されずに隠れているのかも知れない。
しかし─、
考えてみれば、音楽を生み出している人間の脳も、
結局は、電気信号のネットワークである。
ということは─、
いつか、コンピュータの世界に、
ブレークスルーが起きて、
人間に匹敵する人工知能が、
人間の作曲家に匹敵する音楽を作曲する、
時代が来る可能性もゼロではないわけだ。
2045 年には─、
コンピュータの計算能力が、全人類の知能を超える、
「 特異点 」を迎えるという見通しもある。
『 ポスト・ヒューマン誕生 ― コンピュータが人類の知性を超えるとき 』
( レイ・カーツワイル ) より
しかし─、
そのような SF もどきの話を持ち出さなくとも、
今日、我々が個人で所有しているパソコンは、
すでに、一面においては、
我々の脳の計算能力を、遥かに凌駕しており─、
言わば「 音楽スタジオ 」を、
各個人が所有しているかのような時代が到来している。
その中で、出来ることは、
まだまだ、たくさんありそうだ。
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