ライフネット生命という働き方 | One of 泡沫書評ブログ

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世の中にいったいいくつの書評ブログがあるのでしょうか。
すでに多くの方が書いているにもかかわらず、なぜ書評を続けるのか。
それは、クダラナイ内容でも、自分の言葉で書くことに意味があると思うからです。

ライフネット生命というベンチャー企業がある。20代くらいの世代にはものすごく名前が売れているだろうが、インターネットに親しんでいない世代にはなかなかピンとこないのかもしれない。日本生命出身で、「生命保険のエキスパート」出口治明氏、そしてBCG出身、HBSでベイカー・スカラー(上位5パーセントの成績優位者に与えられる)を取得したという気鋭の若手岩瀬大輔氏とで興したベンチャー企業である。いわゆる「色のついていない」保険会社としては74年ぶりの創業ということで、その確信犯的、失礼、革新的なビジネスモデルは、既存の業界の常識を文字通り破壊(付加保険料の開示)しており、まさに「イノベーション」の名にふさわしいベンチャー企業である。

このお二人、おそらくゴーストライタの手によるものとは思うが、立てつづけにビジネス書を出しており、わたしのような「情弱」はつい手にとって買ってしまう。まあ、読んだところで行動に移さなければ意味がないわけだが、わかっていても買ってしまうのは情弱の本領発揮というところだw いくつか買ってしまったので以下に軽く備忘として残しておくことにします。



百年たっても後悔しない仕事のやり方/出口 治明

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2011年4月に丸善で本書の出版記念セミナをやるという噂を聞きつけ、無理やり時間をつくって丸の内までダッシュしたのだが、残念ながら「品切れ」で入れなかった。たった100枚の整理券(しかも電話予約可)では当然だろう。内容はすっかり忘れてしまったが、今の仕事に行き詰まりを感じていたため、多少の気休めにはなった覚えがある。



入社1年目の教科書/岩瀬 大輔

¥1,500
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もう結構なロートルになってしまったが、今更こんなのも買ってしまった。新人のときに買わなければ意味がない本である。ここに書いてある内容は素晴らしいが、30過ぎのオッサンが今更心を入れ替えても…時間は戻ってこない。それに、本書に書いてある内容は意外にハードルが高い。最近の学生は世代的に、我々の頃にくらべて「出来る」やつが多いと聞くが、それでもここまで意識をもって仕事ができれば、おそらくどの分野、業種においても成功できるであろう。こういうライフハックは仏教における「悟り」の境地と同じで、「極意を語るのは簡単だが、実行するのは難しい」という類のものである。実際、ここに書いてある生活を10年続けることができれば、おそらく岩瀬氏とまではいかなくても、上場企業の課長くらいにはなれるだろう。充実したサラリーマン生活を送りたければ、ぜひ新人のうちに、できれば学生時代のうちに読んでおくべきと言える。歳を取ってから読むような人はダメだw

それにしても売れているようだ。5月19日初版だが、6月7日で早くも3刷めである。これは日垣さんには及ばないが、ホンマモンのベストセラといっていいのではないか。気になるのは購買層である。まさかほとんどわたしのようなアラサーが買ってるんではないだろうな…。



132億円集めたビジネスプラン/岩瀬 大輔

¥1,260
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これはライフネット生命を創業するときの「業務日誌」のようなもの。起業するときの参考になるかもしれない。しかし、岩瀬氏のようなチートな経歴でなければ結局起業は難しいのではないか? と思ってやる気がなくなる効果もあるため、要注意だ。やはり人間、今日明日努力するだけではだめなのだ。継続してキャリアを積み、いざというチャンスを逃さず、リソースを一気につぎ込むという才覚が必要なのである。そして、何より重要なのが「人脈」。こればかりは、得ようと思って得られるものではない。しかし得ようと思わなければ、絶対に得られないのも事実である。人生は一筋縄ではいかない。



生命保険のカラクリ (文春新書)/岩瀬 大輔

¥819
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業界の暴露本ともいえる本。




余談だが、人生に迷い始めてビジネス書や自己啓発書ばかりを読んでいると、得も言われぬ劣等感や鬱的な感情にさいなまれることが多い。こういう本を書くような人は、どう贔屓目に考えても、やはりわたしやあなたよりは優れているのだ。そして、競争に身を置こうと思えば、こういう人たちと伍していかなければならない。「かれらは僕と違うよ…」などと敗北宣言をしても誰も一顧だにしてくれはしない。世界は広くそして厳しいのである。「世間はお前らの母親ではないっ…」とは利根川先生の弁だが、その通り過ぎて心が痛む。

と、いうことで、人生に疲れたときや仕事に悩んだときは、こういうビジネス書(や、それに準ずる自己啓発書)に救いを求めるようなことはしないほうがよいであろう。こういうときは、ぜんぜん関係ないノンフィクションや、古典を読むとか、あるいはジョギングにでも行ったほうがいいだろうw


なお、余談ついでにもうひとつ記しておこう。保険会社は、その保険料を算出するときに、ものすごく複雑な数理計算というを行っており、それを専門に担当する「アクチュアリー」という役職というか資格がある。一説によれば、司法試験に匹敵する難易度だというので、数学に自身のある方は受けてみるのも一興かもしれない。データが飛躍的に増加する現代のビジネス社会において、確率や統計といった専門領域は今後ますます重要になることはあっても、なくなることはないだろう。もしかしたら次のイノベーションはこの分野にあるかもしれない。同じ士業を選ぶにしても、会計士、弁護士ではなく、これを目指すのはなかなか良い戦略だと思うのだが、わたしは数学がダメなので、残念ながら見送っている。