デフレの正体 | One of 泡沫書評ブログ

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デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)/藻谷 浩介

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買って読み始めて、なんかどこかで見たことがあるなと思いながらページを繰っていたのだが、以前のエントリで書いたように、dankogaiが紹介していたのを断片的に読んでいたわけだ。わたしのしょぼいブログも備忘録くらいにはなるようだ。

本書のあたらしいところは、「絶対数」という視点で経済を論じているところだろう。その反動なのかどうか、「率」を持ちだすマクロ経済学をことさら敵視しており、随所で経済学者をdisるのが気になる。これについてはわれらが池田先生がすでに冷徹な評価を下していた。「こんな床屋政談はテレビのワイドショーだけにしてよ」と言わんばかりだw

ちなみに本書は講演を編集して書きおろしたというだけあって、文脈が散漫で、口語体で軽妙に語る形式であり、本を読み慣れていると逆に鼻につく。せっかくの内容なので、きちんと文語体で再編集してほしかった。(と言っても、マーケティング上、わざとそうしたのかもしれないが)


それにしてもこういう本を読んで思うのは、データを示されてもなかなかそれを検証することが難しいという事実だ。もちろんリテラシの高い個人は常に一次ソースに当たる癖がついているのだろうが、ほかに本業のあるわれわれのような俸給者が、ジャーナリストや学者と同じレベルでデータの検証をするのはなかなか難しいものがある。よく自分でデータに当たらないとダメだみたいな言説をみかけるが、自分の専門分野でもないところでそれをやるのは正直いって難しい。そういう意味で、経済理論は結局「誰を信じるか」、という問題なのかもしれない。