禁煙セラピー | One of 泡沫書評ブログ

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読むだけで絶対やめられる禁煙セラピー (ムックセレクト)/アレン・カー

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本書は、努力や忍耐というアプローチではなく、読むだけで禁煙に成功するというアプローチの本だ。内容は、まあ文字も少ないので読んでもらうのが一番良いと思うが、わたしはこれを読んだだけで完全に禁煙に成功するというのはは難しいだろうと思う。少なくともわたしは本を読んだ後も何度も禁煙に失敗した。着眼点は良いと思うが、実際には専門医によるカウンセリングや、二コレット等の薬物療法を組み合わせていかないとなかなかうまくいかないのではないだろうか。わたしはその後なんとなく煙草を止めることができたが、何か特別に理由があったような気がしない。周囲でだんだん吸う人が少なくなってきたので、なんとなく止めたというのが一番の理由だろう。もともとそれほどのヘビースモーカでもなかったので、ニコチン中毒の度合いも軽かったのもあるかもしれない。

そういう意味でわたしはこの本の効果には懐疑的だ。本当にニコチン中毒になっている患者はいわば麻薬中毒者と同じだ。そういう人たちが、セラピーだけで本当に禁煙できるものなのだろうか? 著者のカー自身はこの方法論で止めたそうだし、このセラピーによって多くの喫煙者を救ってきたという。確かにまったく無駄ではないので、止めようと思っている人の気休めくらいにはなるかもしれない。わたしが個人的に思うのは、最近は煙草が高いからとか、タスポの導入で買いにくくなったから、周りで吸う人がいなくなったから、喫煙所がなくなったからというような理由で止める人が多いのではないかということ。どちらかというと環境の要因が大きいのではないか。

ちなみに著者のカーは肺がんで亡くなったそうだ。禁煙に成功して何年かたった後に肺がんになるという、何とも言えない最期を迎えたようである。ご冥福をお祈りしたい。



ところで喫煙者vs嫌煙者の闘いほど不毛な”神学戦争”もないだろう。互いに利害がクロスする部分が一切ないのだから、理解しあえるわけがない。ある意味ではパレスティナとイスラエルの関係よりも悪い。だが中東と違うのは、その性質上、喫煙者が一方的な加害者であるという事実だ。一方で喫煙者もニコチン中毒者、いわば病人なのだから治療せずには完治しないだろう。したがって両者の住み分けのためには、「分煙」こそが文明国の取り得る唯一の方法だと思うが、喫煙所をつくる費用はだれが負担するのか? などと議論は収束する気配がない。もはや喫煙者は煙草を止めるのが最も合理的なのではないだろうか。森博嗣さんもやめたそうだしw