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映画版の方である。
わたしは(自主制作?の)漫画版を読んだことでこの作品(?)を知ったので、どうしても登場人物を漫画のそれでイメージしてしまう。といってもわたしが読んだ時点ではまだ藤田さんの過去は明らかにされておらず、かといってまとめスレでストーリを追うのも億劫だったので、じつは途中までしか知らなかった。そういう手合いにとって、品川祐の「リーダー」はもちろん、「中西さん」役のマイコなんかはものすごく違和感がある。まあそういうキャスティングの妙は実写化につきものなので、それはさておき、手っ取り早くあらすじをなぞるには映画版が最適だろう。
最初はもちろん「2ちゃんねる発の物語を映画化か。また電車男の二番煎じかよ」と思ったのだが、時代の流れとプロフェッショナルの手腕というのは想像以上に素晴らしく、スレッドの盛り上がり的なノリや、孔明ネタの演出などは秀逸と言うしかない出来だ。そういう2ちゃんっぽさを出しながらも、ちゃんと盛り上がりを用意し物語として完結させている。タイトルや出自は”色もの”的だが、ビルドゥングスロマン(成長譚)としてのカタルシスは十分にある。これは現代の若者の冒険物語と評したい。
これは思うに、視聴者側(つまりわたし)がニコニコ動画的なノリにどっぷりと浸かっているから違和感を感じないだけなのかもしれないが、一方でクリエイタ層がこうした2ちゃんねる的なバックグラウンドに慣れてきているというのもあるだろう。そういう意味ではタコ壺的な映画ではある。
ところで先ほど「成長譚」と書いたが、必ずしも希望があるわけではない。小池徹平という”アイドル”を起用し、見た目ポップな作風でうまくまとめてはいるけれども、扱うネタは労働市場の矛盾そのものだ。結局マ男はブラック企業に残り続けるわけだし、ブラック企業がホワイトになる可能性は少なくとも作中では描かれない。うがった見方をすれば、こうして自己解決できる若者が増えれば増えるほど、ブラック企業がますます増え、労働市場が硬直化する原因になってしまうとも読みとれる。こうした作品が自分語りの域を超え、政治色が出てくるようになれば、世の中の流れも変わってくるのだろうが、そういう時代は来るだろうか。