オヤノコトネットという会社がある。首都圏の駅周辺でフリーペーパーを配っているようだが、その名もズバリ「オヤノコト.マガジン」。すごい名前だ。冊子の表紙には「(R)そろそろ親のこと…」と大書してある。(ちなみにオヤノコトネット社は「そろそろ親のこと…」という言葉を登録商標としているらしい。だから(R)となっているわけだ)
ところでオヤノコトネットによれば、”「オヤノコト世代」というのは、高齢の親をもつ30代後半から60代の子ども世代を示す、弊社の造語です”、ということらしい。このことばに、現在未曾有の少子高齢化時代を迎えているわが国の実態が端的に表現されている。そう、30代だけにとどまらず、60代までが「子ども世代」なのだ。
「60代が子ども世代」という、この言葉に違和感を感じないだろうか? 60代が子ども…これはどう考えても直観的には理解しがたい概念だ。定年退職するような団塊世代のおじいちゃんが「子ども」。これは、人間の正常な感覚からすると異常だ。この世代はリタイアする世代であり、次の世代に遺産を引き継ぐ世代であっても、相続する側ではないはずだ。
しかし、これこそがまさにわが国が未曾有の少子高齢化時代へ突入したという異常さを端的に示している証拠だろう。
偉そうに書いたが、じつはわたしは最近までこのへんの認識が甘く、小飼弾氏のブログエントリを読むまで、日本における世代対立は「老人vs若者」だと思っていた。だが、実は「超高齢者 vs 高齢者 vs 若年層」という構図だったわけだ。
景気の波より人口の波 - 書評 - デフレの正体 (dankogaiのブログ)
わたしはこの本はまだ読んでいないが、弾さんの引用によると
「(日本では)亡くなる側ではなく相続する側の平均年齢が六七歳だというのです。」
ということで、老人が老人に対して相続するというすさまじい時代に突入しているという。こうしたカオスな時代を象徴する「オヤノコトマガジン」。ここには、現代の日本人が目をそらすことのできないリアルな現実が書かれている。(といっても、中身は高齢者向けのビジネスが紹介されているだけですが)
ところで、少子高齢化に対する最後の希望であるはずの”団塊ジュニア”世代はこんな状況にある。
保育所の規制緩和はすぐに実現可能な少子化対策 - Joe's Labo
わたしも団塊ジュニア(正確には団塊ジュニアの少し下)だから他人ごとではない。かくして未曾有の少子高齢化社会はますますのっぴきならない状況に陥り、日本は老人だらけのものすごい国になってしまうのも時間の問題となった。もうそうなっているという見方もある。このような状況では、納税力のある優秀な知識層が今後どんどんと海外に脱出してしまうのではないかという危惧も、あながち杞憂ではないかもしれない。