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「どうして経済を勉強する必要があるのか?」その問いに、本書を読了して自信を持って答えよう。
有隣堂で新書コーナをうろついていたら平積みになっていたので、つい手にとってぱらぱらめくってみた。すると、冒頭に面白そうな設問が書いてある。
「あなたが漁師だったとしよう。あなたは、サラリーマンのように毎日八時間漁に出かけるような仕事の仕方をするだろうか。」
この問いかけに対する回答はプロローグを読めばすぐわかるので、ここに記すのはあえて控えておく。経済学を知っている人からすると問題ですらない問いかけなのだが、門外漢や初学者にはなかなか意外な回答だと思われることだろう。意外というのは直観、あるいは社会的な常識や慣習に反するという意味だ。本書はこのような日常的なできごとを題材に、直観や習慣でおこなう仕事のやり方に対して、経済学的な考え方をするとどうなるかを平易に教えてくれる。素朴な疑問に対する経済学からの回答といっていいだろう。
また最近注目のニューロエコノミクス(神経経済学)や行動経済学などもさりげなく紹介してくれており、入門書としてはこれ以上にない手軽さで最新の(?)経済学に親しむことができる。データもふんだんに使用しているし、根拠となる元ネタ(引用)も端的に示され、学問的に深堀りしたい向きにも役立つ。
ともあれ、おそらく経済学をやっている人には無用の本だろう。書いてあることはどれも教科書に書いてある(と思う)ようなことばかりだからだ。(しかし経済学部の学生といえども、著者によると本書に出てくる簡単な問いにちゃんと答えられる人が少ないようだから、やはり読んだ方がいいのかもしれない。)
ということでべた褒めしてしまったが、実際これは意外な掘り出し物だった。平積みしてある(=誰かがむやみに推薦している)ということから、世に多くあるやっつけ本かなと思ってあまり期待しないで買ったのだが、なかなかどうして良書も良書だ。おそらくレベルがわたしにちょうど良かったというものあるのだろうが、広くお勧めしたい一冊である。経済学は、「役に立つ」のである。