新聞リテラシー | One of 泡沫書評ブログ

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すでに多くの方が書いているにもかかわらず、なぜ書評を続けるのか。
それは、クダラナイ内容でも、自分の言葉で書くことに意味があると思うからです。

久しぶりに新聞を買ったらある記事が目に入った。


【日本経済新聞(日刊)2009年7月22日 13版 5面】


「厚年基金の代行部分の保険料率 据え置きを容認

 来年度以降 厚労省方針


 厚生労働省は厚生年金基金の代行部分の保険料率について、来年度以降も現行のまま据え置くことを認める方針を固めた。公的年金の予定利率が4.1%に引き上げられることに伴い、本来は料率を引き下げるはずだった。運用難で財政が悪化した基金が多く、料率の据え置きを認める特例措置を導入し、基金の保険料収入を底上げする。

(中略)

 厚生年金基金は大企業の会社員ら約473万人が加入する企業年金。公的年金の「2階部分」にあたる厚生年金の運用や給付を代行している。代行部分の保険料と企業独自の上乗せ給付である「3階部分」の保険料を一体で運用し、より手厚い年金を給付する仕組みだ。

 代行部分の保険料率は厚生年金の予定利率(現在は3.2%)に基づいて国が定める。厚労省は2月に実施した5年に1度の財政検証で、来年度から予定利率を4.1%に引き上げることを決めた。通常であれば、これに連動して全国の基金の代行部分の保険料率が下がる計算だった。

 しかし、料率が下がると加入者が基金に払い込む保険料が2割程度減り、運用難で悪化した基金の財政が一段とひっ迫する懸念がある。このための5年間の特例措置として一定の財政要件を満たした場合には現行の保険料率のまま据え置くことを認める。」


これを読んで頭に入った方はどれくらいいるだろうか?


厚生年金基金の代行部分?

公的年金の「2階部分」?

上乗せ給付である「3階部分」?

保険料率?

予定利率の引き下げ?


で、結局、この記事は何を言ってるのか?


わたしも前まではそうだった。このあたりの仕組みは何度説明されてもよくわからない。その辺の「わかる! 企業年金」みたいな本を読んでもぜんぜん頭に入ってこないのは、その欺瞞性を隠ぺいしつつ説明をしようとしているからだと最近気づいた。やはり真実は端的に語られなければならない。


しかし、このところこのへんの勉強を続けてきたので、少しはわかったように思う。自分の勉強のためにも、少し背伸びをして「解説」をしてみたい。


この記事が言っているのはこういうことである。(と思う)


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その昔、各企業はこぞって「~厚生年金基金」という運用機関を設立しました。これは、ひとつには、厚生労働省のお役人が安心して天下りできるよう、理事長のポストを用意するためだといわれています。

これらの基金は、企業年金の「3階部分」を独自に運用して加入者(=年金を受け取る人)に資するという目的のもと、「2階部分」である厚生年金保険の一部を原資に運用したりしていました。この仕組みのことを「代行」といいます。ありがたくも運用のプロたちが社員の年金を代行して、運用してくれているわけです。おかげで年金制度はどんどん複雑になってしまいましたが、昔は景気も良かった上、年金を受け取る世代も少なかったため、比較的容易に利益をあげられていたようです。


ところで、予定利率というのは「これからはこういう利回りで運用していけるはずですよ」という予測の利回りのことで、これが高いほど運用成績が良い、すなわち将来のリターンが高いことになります。したがって、当然ながら予定利率が上がるということは、その分払い込むべき保険料率は下がるはずなのです。


ところが、少子高齢化や金融危機などの影響を受けて、厚生年金は軒並み逆ザヤ(運用で稼ぐ利回りよりも多くの損失を出している状況)が続いていたため、今更、予定利率を上げられてしまうと、とてもじゃないけど損失をカバーできなくなってしまいました。それに加え、今のような難しい経済状況では、基金の運用者も予定利率通りの運用成績を残せるかどうかも難しいわけです。予定利率を下回る運用成績だと、下手をすると厚生年金基金自体が破綻してしまいます。よって、基金としてはなるべく低い予定利率にして、保険料率を高くしておきたいわけです。


こうした基金側の思惑と、無用な混乱を避けたい厚生労働省の思惑が一致し、みごと、企業年金基金は特例を認められ保険料率を据え置くことが認められました。要するに「保険料を払う人が余計に払うことで損失を補てんすることになった」ということなのです。厚労省はこれまで通り天下り先を確保できますし、基金のほうも引き続き損失の補てんを加入者に転嫁することができる、非常に優れた発想です。もちろん、「基金自体が破たんしたら元も子もない」という大義名分もあります。


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と、言うことで少し冒険して新聞記事の解説を試みてみた。合っているだろうか? 大筋では合っていると思うが、細かい点で認識が誤っているかもしれない。最終的には各人で正否を確認してもらいたい。この他にも賦課方式の話とか、代行返上とか、年金にかかわる話はまさに官僚制における腐敗の見本市のようで興味は尽きない。皆さまにおかれても、引き続き興味を持ってウォッチしてみてはいかがだろうか。



こういうことを常々勉強しておくと、政治にも興味が出てくる。たとえば次のような記事をみてほしい。


4000万円も損している日本の若者たち


いつまでも不毛な世代間闘争をしていないで、選挙に行って政治家をビビらせないといけない。若者の投票率が上がることで世の中は変わる。まずは一回投票率で示さないといけない。政策がよくわからない人は、誰に入れてもいいし無記名でもいいから、とにかく投票してくるとよい。年齢別の投票率で若年層が老人を上回れば、候補者もずいぶんとまともになるだろう。20~30代の諸君、目標は「投票率を上げること」である。8/30にはとにかくどこかに投票しよう。