- 日本のお金持ち研究/橘木 俊詔
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多忙を理由に更新をサボっていたら、ブログをやっていることを忘れてしまっていた。
久々に立ち上げたPCで、いつものように「ニコニコ動画」につなごうとしたときに、「お気に入り」にアメーバブログがあることに気付き、「ああ、そうか」という感じである。まったく、知的怠惰もはなはだしいが、ニコニコ動画のすばらしさの前には時間が過ぎるのも矢の如しである。
冒頭から話が逸れすぎているが、この本はこれまで学問的に研究がなされていなかった、日本の富裕層についてその実態を明らかにしようとした本である。「いかにして富豪になるか」という方法を論じた本は雨後の筍のように量産されているが、そもそも、日本における富豪というのはどういう人なのだろうかという問いに答えようとした本はなかったのではないだろうか。そういう意味でなかなか貴重な本といえよう。
しかし問題がないわけではない。おそらく著者も自覚のうえであろうが、とりあげたサンプルが少なすぎる。統計学についてとくに造詣が深いわけではないが(学生時代の「熱統計力学」は三年間連続で落としたくらいだ)、あまりに母集団が少ないサンプルをもとに論じているのではないか? という感想をもった。しかし、これは致し方の無い面もある。なぜならば日本ではこうした「高額所得者」たちの実態について、明らかにできるような白書の類が公開されていないそうであるから。そういえば本書(単行本)が書かれた2005年時点ではまだ長者番付は公示されていたが、現在(2008年)は既に廃止されている。まあ、こうしたセンシティブな情報を軽々しく閲覧できるのもどうかと思うが、一方で実態を把握できないのもどうかと思う。難しい問題であろう。
さて、こうした問題を踏まえたうえで、著者らの結論によれば、日本のお金持ちは大別して「都市圏の企業経営者、および全国の開業医」に集中しているという。前者の資産平均は72億円、後者は18億円だそうだ。わたしのようなヘボリーマンからすれば、想像もできない額だが・・・。
この本ではさらにもう一歩踏み込んで、ただのお金持ちの分析から、「パワーエリート」いわゆる金を持っているわけではなく権力をもっている階層(=超大企業の経営層、政治家、キャリア官僚)などとの対比も学問的に解説してくれている。このあたりが、おそらく著者の専門分野なのだろう。筆も軽やかに(?)感じる。ただしこのくだりは社会学や経済学の専門知識が無ければ軽く読み飛ばせない。
5章以降はもう完全に学問の世界、税制などの議論にいたっては源泉徴収される身にとっては難解極まりなく、何が書いてあるか実感として理解できない。このあたりはもう少しゆっくりできるようになってから、再読したい。
日本の「成功モデル」としては、これまで「一流大学に入って、一流企業に入り、出世すること」というようなことがまことしやかに語られてきた。すごろくでいえば、東芝や松下のような一流企業のトップになることか、キャリア官僚の最終地点である事務次官、もしくはその先の政治家になること、などが「上がり」に相当していたわけである。「末は博士か大臣か」などというとあまりにも牧歌的過ぎるかもしれないが、いまや長者番付をみるまでもなく、カネを手にしているのは消費者金融やパチンコ製造業などを始めとする、いわゆるメインストリームからはずれた業界のオーナー経営者である。任天堂の岩田氏や楽天の三木谷氏などの巨額な収入も、そのほとんどが持ち株からの配当であることはいうまでも無い。
まさに、現在の日本における階級というのはまさに混沌としてきているといえよう。たとえば、(犯罪を犯してしまったとはいえ)堀江氏と三木谷氏の違いというのが、このカオスっぷりを象徴しているとしか思えない。いずれも「どこの馬の骨?」には違いないと思いきや、かたや東大中退の愚連隊みたいな経営者、方や日本興業銀行出のエスタブリッシュメントであったというオチ。しかしながら、銀行を定年まで勤め上げても三木谷氏ほどの富は得られない。しかし、三木谷氏では日本経団連に巨大な発言権はなく、政治化とのつながりもあまり深くならない。
目に見えない「階級」を強く再認識させられる本でした。というか再読したあと、再度書評にかけます。これじゃ何を書いているか自分でもわからん。中学生の読書感想文かwww