妄想恋愛シミュレーション -34ページ目

FRATELLI 第5章ー11

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第5章ー11



(尋弥)


俺が提案して、次回号の【FBRUR】の対談相手は河西社長になった。


何度かの交渉でようやくOKが出たらしい。


ジュ・ルーテの社長室で行う事が条件。


俺、相当嫌われてるみたいだ。


あんな挑発的な態度を取ったからだろう。


あの時は、本当に嫌な女だと思っていた。

でも、あれから数回、ジュ・ルーテの事務所に行き、女性社員に囲まれて笑っているあの人を見ていたら、悪い人じゃないんじゃないかって思えてきた。


内山さんの話も気になる。


社長室。


真っ赤な革張りのソファが、黒いタイルの床に映えている。


そのソファに向かい合って座る。


最初の数分、スチールを撮影し、カメラマンは社長室を出て行った。


マイク付きのレコーダーをセットし、対談を始める。


二人きりとはいえ、オフィスからは大きなはめ込み窓をはさんでいるだけで、丸見え状態だ。


別に構わないけど。


「対談、OKしてくれてありがとうございます」


「いえ」


「俺が頼み込んだんですよ。どうしてもちゃんと話をしたくて」


「そうですか」


「俺、多分、嫌われてますよね?」


社長は鼻で笑っただけで、答えなかった。


それから、一通り、会社の事、男性下着の昨今の事情、事業を始めた理由、など、コラムの基礎になる部分を聞き、その後で、軸となる彼女の生き様に迫って行く。


「経営者として、女性であることにハンディを感じた事はありますか」


この質問で、彼女はしばらく考えた。


「ハンディを感じる事は良くあります。でもそれは私の卑屈な感性のせいかもしれません」


「卑屈な感性?」


「そう、女性だから甘く見られてるんじゃないかとか、逆に、女性だから甘やかされてんじゃないかとか。自分が作り出したハンディかもしれない、ということです」


意外な気がした。こんな風に、自分の核心をさらけ出すなんて、思ってもみなかったから。


「素直なんですね」


「だって、これを読んで下さるのは間違いなく女性の方でしょう?その読者のみなさんに、嘘を付くことなんてできませんから」


あくまでも、女性にはまっすぐに当たっていく人だ。




対談が終わり、俺はレコーダーのスイッチを切った。


「もう暫くいいですか?ここからはオフレコで」


社長の目つきが鋭くなる。


途端にだ。


今からは対・読者ではない。


対・俺。


警戒してるな、間違いなく。


「今度、食事でもどうですか」


暫く俺を見据えた後、形のいい唇がゆっくりと開いた。


「そんな時間、あなたにはないでしょう?」


「そんな事ないですよ。時間なら作ります。いつにしますか?」


「じゃぁ・・・」


斜めに俺を見る。


「今度の水曜の午前10時に。そこのホテルに席を用意しておきます。どうかしら?」


窓から見えるシティホテルを指差した。


あくまでも挑戦的だ。


俺は携帯を開いてスケジュールを確認する。


「その日は夜の生放送だけですね。ラッキーだ。食事は1対1ですよ。逃げないで下さいね」


「逃げる?どういう意味?」


俺も顎を上げて社長を見下ろした。


「仕事が入ったとか、急用が出来たとか、いざとなるとそんな言い訳しそうだから」


社長の表情がさらにきつくなる。


「そのままそっくりお返しするわ。言い訳は男の本領でしょ?あなたこそ、必ずいらっしゃいね。逃げずに」


ったく、可愛くない人だ。



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