さてさて、しばらくすると胃外科で待つように促されて、場所を移動しました。
 
おそらく初診じゃない人たちもたくさんいる中で、一人っきりで来ているのはやはり私だけ。
 
なんだか一人であることに不安を感じてきました。
 
この時、まだ自分のがんが早期だと思い込んでます。
何なら、無い知識の中で、お腹を切らない手術とか、そんなことを想像し始めています。
 
持ってきた小説を読みながら、ふん、ふふん、って感じで待っていました。
 
しばらくして、呼び出し音が鳴り、診察室に入るように指示が来ます。
 
コンコンッ
 
やっぱり第一印象が大事だよね(?)と思って、しっかりドアを叩いて、「失礼します」と大きな声で部屋に入りました。
 
中には後に主治医となる先生と、看護師さんが一人。
 
いすに座り、メモ帳を取り出します。
詳細を記録しないと、嫁さんにちゃんと説明できないし。
 
形式的な挨拶をして、早速診断へ。と思いきや、意外な質問が。
 
「あれ?今日は一人?家族の方は・・・?」
 
あれ?一人ってやっぱりおかしいのか?
 
「まだ嫁さんにも誰にも話してないんです」
 
正直にそう言うと、またもや意外な反応が。
 
「そうか、話してないのか・・・」
 
そう言いながら、紹介状に入っていた胃カメラの写真を見て、おもむろに頭を掻きむしりました。
 
え?
 
この反応は予定外。ワイルドだなぁ(笑)。
 
「今日は時間ある?検査受けられる?」
 
血液検査と、大腸がん検査の説明、それから、CTと胃カメラの予約を入れますと。
 
??なんだこれ?看護婦さんも慌ただしく出たり入ったりしてる。
先生も携帯でいろんな所に電話してる。明らかに無理を言って予約を入れてるのが分かる。
 
「月曜日にCTと胃カメラ。火曜日から入院、金曜日に退院でいい?」
 
え?今日は金曜日でしょ?そんなにすぐに?
昨日、がんって分かったばかりなのに、入院って?
 
あまりのスピードに脳がついて行けない。
疑問を感じる隙も無い。
 
「来週の検査は、手術ができるかどうかの検査手術だから」
 
!?
 
やっと、このときヤバい事態だと理解できました。
頭の反応遅いよ!
 
私の状況について、主治医は丁寧に説明してくれました。
いや、してくれたはずです。
 
が、家に帰ってメモ帳を見ると、検査の日付と大腸がん検査の注意点しか書かれてない。
 
理解できていたのは、スキルス胃がんであること。
かなり症状は進行していること。
 
そして、がんを取り出す手術すらできない可能性があること。
 
けれども、思ったほどショックを受けることなく、家路についたのです。
ふーん、そうだったんだ・・・って(笑)。
 
自分の身体のことよりも何よりも、嫁さんになんて説明したらいいのか、そればかり考えていました。

<つづく>