5年前、かかりつけの病院でがんが見つかったとき、私は一体何をしたのでしょうか?
 
答え「先送りにした」(笑)
 
いやいや、がんを放置した、というわけではありません。
 
入院待ち手術待ちが当たり前の病院に予約を入れてくれたのですから、もちろん、診察を受けに行きましたよ。
 
一人で。
 
つまり、先送りにしたのは嫁さんへの告知です。
 
何であのとき嫁さんに隠したのか、いまだに分かりません。
 
正直、がんと言われてもまったくピンとこなかったですし、早期発見だと勝手に思い込んでたし、これからどうなるのか、どう治療するのか全く分からなかったし、つまりは、面倒くさかったんです(笑)。
 
翌日の朝、絵に描いたようにコソコソと紹介状を用意し、会社に行くふりをして病院に行きました。
 
ちゃんとがんの専門医の話を聞いて、それから嫁に話そうと思ったわけです。
 
以前から書いているように、私は不確かなものについて考えたり、説明するのが苦手です。
ふわっとしたことを伝えると、誤解や間違いが起こりがち。
 
なので、自分が理解できるだけの説明が欲しかったのです。
 
 
病院に行くと、受付に案内され、紹介状を渡します。
そこでしばらく待つのですが、ものすごい人の数。
 
次から次へと紹介状を持った人がやってくる。
ほとんどが60代以上に見える。というか、若いのは私だけ。
 
そして、みんな付き添いの人がいるのです。
 
一人でいたこともあって、なんだか劇か舞台を見ているようで、自分ががんである、という実感が全くわきません。
 
だんだん、がんという診断は間違いじゃないかと思えてくるほどです。
 
後から考えれば、検査結果の翌日に診察を予約するなんて、緊急事態以外のなにものでもないんですがね。
 
かかりつけ医は浸透性のがんである、ということ以外の説明はしませんでした。
詳細は専門の病院で、ということでしたが、最後に一つだけ言われたんです。
 
「胃を摘出することになるけど、頑張って」
 
今思い返せば、この時点で重大な状況であって、当然のことながら嫁さんにもすぐに話すべきだったんです。
ネットで胃がんの検索もしてないし、紹介された病院のことも調べてない。
 
脳天気にもほどがある。
 
現実を直視せずに、逃げた、という事なのかもしれません・・・。

<つづく>