ドイツ流かフランス流か | 久蔵

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落語と歴史のブログ

明治憲法はドイツ流だったのに対して民法は当時としては先進斬新なフランス流だったという


 

フランス人法学者ボアソナードの民法草案を批判する目的で穂積八束が発表した論文の表題が『民法出デテ忠孝亡ブ』だった

ドイツ留学もした憲法学者の穂積八束は民法について意見が合わなかったという、ような内容が民法典論争

近代民法は他の法律に遅れて制定されたのは民法典論争の収束に時間を要したためだという、明治に制定された民法は長きに渡って漢字カタカナ表記のままだった

 

民法大改正があったのは記憶に新しい、そのくらい当時は斬新だったのだろうが21世紀の世には古臭く感じたのも覚えている

 



アメリカ・ロシア・イギリス・ドイツ・フランス・イタリア…への留学者が帰国後、それぞれの国家の思想の相違対立が日本国内で起こったという

欧米思想が日本に与えた影響は大きく大正期には狭い日本という一つの国内に米文化と露文化と英文化と独文化も仏文化も伊文化も同時に存在したという

明治政府の軍部・医療など官営事業はドイツ流で民間事業はフランス流になったという

 

教育はフランス流やアメリカ流を試行錯誤し男女皆学の義務教育を短期間で成し遂げた


 

江戸末期には読み書きができた人は限られていたが明治末期には識字率は飛躍的に向上した

 

欧米の文化は文豪達によって近代文学となり平民も日本語で知ることとなった

 

北海道の開拓は旧武士の士族の雇用先とし屯田兵として広大なアメリカ農営方式で大規模開発をしたという

 

北海道の開拓指導はケプロンからクラークに引き継がれた、殖産興業の鉄道・建築技術はイギリス式で富岡製糸場の運営はフランス式だった

 

 

工業機械はイギリスとアメリカから大量に輸入した、美術・工芸分野は主にイタリア式だったという

あらゆる分野において欧米全域からお雇い外国人を破格的な高待遇で数年間のみ雇い明治初期の短期間で日本人が修得していった

 

影響力があったのは幕末に最初に接近してきたロシアとアメリカ、江戸時代から交流があったが撤退したイギリス(エゲレス)とポルトガル

 

南蛮貿易時から継続しているオランダ、そして幕末開港に参加した二番手国のフランス・ドイツ(プロシア)・イタリア

 

 

特にフランスとドイツの二か国は以降も敵味方となる、留学や書物での教育もしたものの何年もちんたらやっている暇はなかったという

 

欧米が百数十年かけて築いた事を日本は十数年で日本流にしていったことにお雇い外国人はやがて黄禍となるだろうと驚き脅威に感じたという

 

それが起こったのが明治晩年の日清・日露戦争の勝利と韓国併合して中国分割に参入してきた

かつての中世フランスは帝政でフランク王国から分割した軍事大国だった、ヨーロッパ大陸全域を制覇してナポレオン帝国を築いた

 

 

しかしフランス国民は王政を廃し皇帝の赤も教皇の黒も否定して欧州では野蛮だった軍事国家から

 

自由・平等・博愛というオシャレなイメージのある共和制国家になった、が近代日本には浸透せず民法典論争として表面化した

日本は天皇と共存する民本主義だった、共和制のフランスの主流政党は左派(左翼)で近代日本には馴染まなかった

ドイツ流が主流だった近代日本は中江兆民の民主運動や桂園時代のフランス贔屓の西園寺公望あたりから左派が出現したという

 

 

近代欧州のジンクスとして「ドイツと手を組んだ国は必ずドイツと共に不幸になる」と「フランスは必ず大英帝国が居る方につくようになってる」があるという

英国のEU離脱による今後の独仏の動向は興味深い、近代日本は欧化し戦後はアメリカナイズした

 

遡れば遣隋使・遣唐使や日宋・日明の朝貢貿易という漢流の時代があり平成には韓流があった

どの時代も外圧でぬるま湯の日本を刺激するのは好ましく想う、外国文化にかぶれるのはいいにしても反日で魂まで売るような日本人には違和感がある

 

 

明治の欧米文化は合理簡便経済的だったことは想像できる、当時の文化人は欧米の文化は華族や士族ではなく一般平民にこそ普及すべきという意見もあったという

「華族は和風のままでよいではないか、パンや肉などの栄養価の高い食事は労働者の平民にこそ必要で洋服や西洋家具はお手伝いさんのいる華族にはむしろ不要だ」

 

近代欧米は貴族のいない平民国家なのだから、という意見があった、日本の欧化は華族・士族からでその象徴が鹿鳴館だったという
 

昭和の大戦でもパンで闘わず米騒動が起こるほどコメが主食だったことから近代の国際派は表面だけで中身は和魂だったようだが

 


 

戦後は戦勝国の英米ソ中に影響され単独統治したアメリカ一色となり日本は国際社会から離脱し大和魂を奪われていくことになった