スピッツのアルバム「ひみつスタジオ」の冒頭1曲目です。
そして、1曲目にしてもう落涙の名曲。
スピッツのアルバムがこうした穏やかな曲で始まるのは意外に珍しい気がします。
自分を壊れたロボットに見立て、修理してくれた君と一緒に生きて行こう、という歌。
歌詞も、「愛をくれた君と 同じ荒野を歩いていくよ」という、草野さんにしては珍しいくらいストレートなもの。
ちなみにタイトルの「i-O」は「アイオ」と読み、ジャケットに写っている黄色いロボットの名前だそう。
女の子に肩を抱かれて嬉しそうに笑っています。
まさにこの1曲目がアルバムのイメージそのものなんですね。
自分を閉じた暗い場所から連れ出してくれたことに感謝するという、スピッツで繰り返し歌われるモチーフが、この歌でも中心です。
歌詞で一番近いのは『テクテク』(2005)でしょうか。
でも『テクテク』は、あたたかく牧歌的な曲調とはうらはらに、
ふりむきつつ僕は歩いてく
雨の中を日差しの中を
闇の中を思い出の中を
と、(見るたびに泣いてしまうPVのアニメのせいもあり)胸が痛くなるような別れの歌、というイメージが強いのですが
『i-O(修理のうた)』は一緒に「黄色い光につつまれながら」生きていこうという、より明るい印象です。
以前に別の記事でも似たようなことを書いたことがありますが、草野さんの近年の歌詞は、同じモチーフを扱っていても、以前より自己肯定的な内容が多くなったように感じます。
たぶんそれが、こんな世の中で、ますます多くの人がスピッツの作品に魅力かれる理由のひとつなのかなと思います。
スピッツの曲は中間部(いわゆるCメロ?)がとても美しく切ないものが多いのですが、この曲もまさにそう。
そのメロディの後ろの田村さんのベースラインがものすごくかっこいい・・!
曲は最初のメロディを静かにリフレインしてさりげなく閉じられるのですが、最後の歌詞
ちょっと得意げに鼻歌うたってる
頼もしい君に会えてよかった
ここを聴くと、どうしてだか涙が出てしまいます。
なんでなのか、自分でもよくわからないのですが・・・。
この短いなかに、相手の幸せを願う気持ちと、「よかった」という感謝の気持ちを感じるからでしょうか。
本当にさりげない、何も格好つけていないこんな短い言葉のなかに、こんなに微妙な感情を込められた曲を書けるなんて、なんてすごい才能だろうと、改めて思います。
今まで、スピッツのアルバムの好きな1曲目は『夜を駆ける』と『僕のギター』が双璧だったのですが、この曲も同じくらい好きになりました。