『裁判官!当職そこが知りたかったのです。』(岡口基一 中村真 共著) | 今日も花曇り

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業界では知らない人のいない、岡口基一裁判官と中村真弁護士の対談です。

民事訴訟で裁判官がどんなことを考えているのか、教科書には出てこない裁判官の本音を弁護士が聞く、という企画です。

ただ、なにせこのお二人なので、内容は全く堅苦しいものではなく、中村先生のマンガを眺めながらニヤけて読む感じです。

 

ただ、ブログ等での情報発信と比べると、やはり書籍ということからか相当おとなしい内容なので、本当はもっと面白い内容を話せる方たちなのになあと、そこは少し残念でした。

 

内容もそんなに密度はないのですが、なるほどと思った点としては(以下、本書の表現をできるだけそのまま書くと)・・・

 

① 裁判官は忙しいので、書面は短いほうがいいに決まっている。

1ページにまとめてくれるのが一番いいくらい。

長い書面はそれだけで読む気を失う。

大した内容じゃないのに分厚いというのは、もうそれだけでダメ。

 

② 訴状はとても重要。

訴状はなるべく短く、すぐ読めるようにして、ベストエビデンスをあげて、原告の主張を裁判官に刷り込む。

裁判官は忙しいので、訴状審査の段階で「ああ、これはこっちの勝ちね」とインプットしてしまう。

 

③ 周辺事情は意外に重要。

当事者がどういう人なのかがわかると、イメージがふくらむ。

要件事実だけバンバン書かれても、その人がどういう人か裁判官はわからない。

 

④ 当事者の陳述書なんて、全く証拠価値はない。

尋問で端折りたいところを書いておくのためのツールにすぎない。

 

⑤ 裁判官は尋問で、動機を中心に話を聞いている。

つまり、同機はあったか、その動機に従って動いたと考えておかしくないか。

 

⑥ 主張をまとめる系の最終準備書面は、あまり必要ない。

ただ、反対の間接証拠のつぶし方を書いてくれる書面は、とてもありがたい(判決を書くときその作業がとても大変だから)。

 

あと、とても重要な指摘だと思ったのが、控訴審での結審後の和解勧試の問題点。

 

ほとんどの控訴審は一回ですぐ結審するのですが、結審したすぐあとに、原審の判決を変更する心証を示されて、控訴審が和解を押し付けようとすることがしばしばあります。

つまり、「このままだとあなたは負けるので、それより多少はいい条件で和解しなさい」と裁判所が言ってくるのです。

 

こうした場面自体は原審でもあり得るのですが、控訴審が卑怯なのは、すでに結審しているので、控訴審が原審を変更する理由となる点について、もはや追加の主張も立証もできない状態であることです。

したがって、言われた当事者としては、手足を縛られている状態で脅迫されている気になります。

 

そんな状態でした和解は、当事者は当然納得できないし、和解しないで変更された判決にも、十分に反論できなかったために納得いきません。

手続のなかで当事者が納得して紛争にケリをつける機会を奪っているのです。

 

私自身、こうした和解勧試を何度かされたことがあり、裁判所への信頼をひどく失ったし、人の人生なんだと思ってるのかと、裁判官を非常に憎みました。

 

この問題点を岡口裁判官も指摘していて、この点は裁判所に本当に変わってもらいたいと思います。