離婚調停などの家事調停については、よく「手続が簡単で本人でもできる」と言われます。
これは事実です。法律的な主張を書いた書類をたくさん提出する必要はありません。
でも調停はとても難しい。
調停はあくまで話し合いなので、言いたいことを全部言って、たとえそれが正論そのものでも、相手が「うん」と言わない限りは調停が成立しません。
また、調停を仕切る調停委員は、裁判官に比べ資質も能力も性格も偏りがものすごく大きいので、下駄を預けっぱなしにすると、とんでもないことになる場合があります。
だから調停では、話し合いの場を壊さず、しかも自分が望む解決に近づけるようにするために、準備が重要です。平たく言えば「作戦」です。
その大切さは訴訟の場合よりも大きいと私は思っています。
訴訟はその点、いわば殴り合いなので、気を遣う必要はそんなにないんです。言いたいことは全部言う、出すべき証拠は全部出す。最後は裁判所が判断してくれる。
結局これは「交渉術」一般の話とだいたい一緒になってしまう(本もたくさん出ている)のであまり書きませんが、その中では、自分と相手の両方について、どの点をどこまで譲れるまたは譲れないのかという整理は、ぜひ始めの段階でやっておいた方がいい重要な点だと思います。