恋は二度目のアネモネ -23ページ目
いまわたしたちは、
穏やかな色合いで、ゆるりと混ざり合っている。
筆先の水彩絵の具を、
水に溶かしたときみたいに。
曖昧に。
使用する言葉の種類が違うから、
繰り出す単語の上に理解を乗っけてみるだけで、
それはわかったことには、ならない。
理解なんて、しなくていいの。
ただ、
いちどは飲み干してほしいだけだよ。
お互いに、
飲んだり出したりしながら、
するっと肌を寄せあうことが、
シンプルで正しいお作法なのだと思う。
自分のものでしかない時間の中に、
他人を組みこんで生活するのは、
とても面倒だし、とてもくたびれる。
単色の水で泳ぐのは、
とても穏やかで、とても退屈だ。
だけどそんなのはまっぴら。
あなたの顔が水面に揺れる。
この日々は、
紛れもないマーブルだ。
わたしの恋人にそっくり。
ああ
可愛すぎる。
だけど、
大人になっても、
ハッカ味なんて全然好きになれないわ。
わたしはピンクの、
すもも味が好き。
ますます、
ぴたりと閉じてしまった。
我にかえる細胞たち。
ばかだなあ
もっともっと、
騙されていれば幸せなのに。
相変わらずの可愛さだったけど、
恋は幻。
もっと真剣に、
夢を見られないものかしら。
あなたは
ピスタチオのチョコレートを半分、
かじりかけの三日月のまま残してくれていた。
わたしがあげた、チョコレート。
あなたがかじった、三日月。
なんておいしいの。
ハートが行ったり来たり、
実体もないのに忙しいったらありゃしないよ。
近ごろはまた、
船の上でゆらゆら。
ここではいつも、
さめない夢が見られて居心地がいい。
お酒がなくなると、
さみしい気持ちになる。
楽しい時間が、
終わりに近づいてしまうから。
わたしは、
目の前の人が煙草に火をつける瞬間が好きだ。
その煙の間は、
一緒に時間を過ごせるから。
飲み干さないで。
火を消さないで。
って、
いつも思うの。
夜ふけといっても過言ではない電車に揺られて、
彼女の失恋を知る。
すてきな彼女。
うつくしい彼女。
好きな人の好きな人には、
もう好きな人がいたみたい。
失恋がどういうものなのか、
わたしもきちんと、知っている。
あなたは、
今どうしているの。
並べた毛布の片側で、
わたしだって恋をしていたい。
カナレットの夜がとても素敵で、
あなたが死んだら、
何度も何度も
思い出すだろう。
だけどわたし、
思い出だけじゃ、
まだ生きられない。
文字を吐くのは
デトックスだと宣いますが、
これっぽっちも痩せないの。
ああ、無情。
昨夜流しこんだアルコールは、
一体わたしの何を形成するんだろう。
会話の断片と、
あなたの冷えた体が、
もうすでになつかしい。
言葉がうまれる。
高級なチョコレートを4粒。
そのくらいがいいの。
甘いのは、上質なものを少しだけがいい。
恋人を登場させるしょうもないきみは、
舌にへばりつく甘さに辟易しているはずだわ。
ギブミーチョコレート。
わたしはゴンチャロフの、メッセ神戸が好き。
摂取しすぎた、いけない水が
水面を揺らして、とけてゆく。
わたしを包み込む鳳凰の間より、
物理的なあたたかさがないと寝られない。
何でも、何事も、
たちまち体に馴染んでしまう。
許さなくっても、
許すのね。
いけない水が、あらゆる穴からあふれだす。
アドレナリンも、余裕の表情。
ふたくちめのチョコレートは、
チェリーのボンボンがいいな。
泡の中に隠した、
あなたの秘密をわたしが飲み干す。
隠しごとがあるなんて、すてきなことでしょ。
あなたはわたしに、とても優しい。
2月の夜の生暖かさなんて、
とても興ざめだから、
寒くていいの。
このくらい。
体によくないものもたくさん摂って、
不真面目に拍車をかける。
名前のつかない行動を首尾よく重ねて、
わたしはとても効率的に生活している。
だからときどき、
ちょっとつまずきたいの。
完璧は崩壊のはじまり。
不完全じゃないと、縁起が悪いでしょ。
息をひそめたキャンディたちにさよなら。
数々の素晴らしい甘さも、
もう賞味期限切れなの。
おやすみなさい。
夢でまた会いましょう。

