恋は二度目のアネモネ -24ページ目


かわいいエトピリカ。
声を聞かせて。

わたしたちは、
今からソウルフードのたこ焼きを焼きながら、
スパークリングワインをあけようとしている。
3分とか、5分とか、
もうわたし、待てないの。
待たされるの大嫌い。
家中をきれいにして、
きれいにお化粧までして
あなたを待っていたのだから、
あとは上げ膳据え膳じゃなくちゃ嫌なのだ。


あと2分、だなんて
わたしとあなたの人生があと何分あるのかも知らずによく言うわね。








いつまでたっても、
上手な大人になれない。
体の内側は凪のように静か。
だけどいつもより1℃、
よくない温度が上昇している。

あなたは雲隠れ中。
わたしはとても穏やか。
自意識過剰なんじゃない?
もうそんなに、異性じゃないのよ。
右下の歯が、しくりと痛む。
あなたが恋をしていたら、
すてきだなあと思う。

洗濯物を干して、掃除をしたら
サロメを抱えて出かけよう。
ああ
だけど、
この羊水のようなぬるい湯から、
一向に出られる気がしない。
休日の午後のバスルームには
魔物がひそんでる。


いちごのスムージーを飲みたい。
甘くないやつ。
わたしがいなくなったら、
あなたはどうするだろう。


穏やかに過ぎる、
濃度の高い午後。











わたしはときどきとてもちゃんとしているけれど、
そのときどき以外は、ろくでもない。


ふざけた体調不良のせいで
目覚めたときには日が高く、
体は、捨ててしまいたいほどに重い。
回復の兆しもなく、
楽しみにしていた約束も反故にした。
(ほんと、ごめんなさい…!)
美しい金曜日を台無しにした罪は重い。
体も重けりゃ罪も重いなんて。

ああ、ろくでもない。
そして気持ち悪い。
ろくでなしの二日酔いなんて、
ろくでもなさすぎてデビルも寄ってこないでしょう。
許して。
許されたいの。
優しく頬を撫でてくれなきゃ
わたし死んじゃうわ。

靄がかった内臓をもてあましながら、
お酒なんてもう二度と呑むもんかと思うけど、
明日のお昼にはきっと、
料理をしながらグラスを傾けるだろう。
なぜならわたしは、ろくでなしだから!


ぽん酢を飲んだら、
少し元気になった。

おしゃべりの間も。

優しさに包まれてる。
こんなろくでもないわたくしを、
愛してくれてありがとう。

わたし自身はろくでもないけど、
わたしの人生は素晴らしい。
ああ
でも今は絶不調。

おやすみなさい!









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可愛い女の子と2人で、
おいしいドーナツを食べた。
なんという正義。
写真のわたしは20歳だ。
なんという不条理。
ドーナツの穴から見る世界も、
あの頃と今とじゃまったく様変わりだ。
ああ、なんともいえない。
ただ無常。
そして流浪。


落下する夕方は、
涙なしには読めない小説だ。
清潔は孤独。
なんて、
的確すぎて息が止まる。

どんなに求めても、
どんなにお金を出しても、
けして得られないものが当たり前にある。
わたしは今まさに、
そんな幸福にどっぷりと浸かっている。
何年も何年も。
それが当たり前みたいに。

おそばのおつゆをもらうとき、
ページのすきまからため息が聞こえるとき、
無意識に手を繋ぐとき、
ただいま、の声を聞くとき、
ふと立ち上がる。
感情。
うれしくも悲しくもない。
ただ、泣いてしまいそうになる。
ふと。
意識もせず。
細胞が、
思い出したかのようにさわぐの。


よろめいたって、
抱きしめたって、
思い知るだけだった。
結果論だけど。
はじめからわかってた。
すてきな行間で、
ゆらゆら遊んで楽しかったなあ。

さあ
次は、
ただ会話をしたい。
わたし、人間になるの。
複雑怪奇で優しくて、慈悲深い。
ただの人。

ドーナツの適切な食べ方を、
きみにも教えてあげたいよ。












顔も心も名前も、
いくつも持ってるって思っていたけれど、
それは大きな勘違いだったかもしれない。
ゆらゆら、
陽炎みたいなもんだ。
ひとつだけ、
夢中になれたらそれでいいの。
だからきみのことなんて、
もうあんまり思い出せない。

細胞のときめきは、
発泡性の夏みたいだ。
しゅわしゅわはじけて、消えてしまう。
泡の中に隠した
こんにちは、や
好き、は
たちまち思い出になってしまって、
なんて予定調和なんだろうと思う。
思い出だけがきれいに残るなんて、
調子いいんだから、って、
そう思うよ。

行方知れずのまま、
行方知れずで終わったな。
だけど、とてもすてき。

近づきすぎると、いけないの。
どこからどうするのが1番きれいなのか。
わたしはもうとても大人で、
そういうことが、わかるようになってしまった。

なんてね。

なあんてね。


可愛い女になりすましたあなたは、
わたしのことなど知らんぷりだ。
ああ。
可愛く知的で、優しい。
あなただって陽炎だ。
わたしたちは、ゆらゆら世界と繋がって、
きちんとここへ帰ってくる。
マーブル模様の魂。
だから、誰かと恋したっていいの。
わたしも、あなたも。

いつか消えてなくなる瞬間は、
あなたの思い出だけで脳を満たそう。