恋は二度目のアネモネ -14ページ目


雨は、
いつのまにかやんでいた。

チョコレートをひと粒、
口にいれそこなって、
わたしは所在なく佇む。

早くあなたに会いたい。
もしくは、
もっと雨が降ってくれればいいのに。

今日何度目かのアルコールを流しこんで、
きみのことを思い出してみるけど、
馨の記憶ばかりが鮮明で、
存在はぼやけてしまう。
汗ばんだてのひらと、
体温。
鼻腔に残ったきみだけが消えない。

食事が終わると、
あらゆることがとても億劫で、
鏡の中のわたしは、
さめた眼をしている。

早くあなたに会いたいと思うけど、
あなたがいないときのほうが、
あなたのことが好きなの。
見慣れた洗濯物が、
静かにそこにいる。

もっと雨が降ればいいのになあ。
すてきな日曜日の、
しめくくりとして。








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ネイルもファッションも、
自分のテンションのため。
ご機嫌のためのギミックなの。


あなたと2人、街をうろうろしながら
お寿司と麻婆豆腐と餃子とポテトとハンバーガーとたこ焼きとバナナを食べてビールを飲む。
やりたい放題で、お腹いっぱいの休日。

気づいたら、
時計の針はくるくる回っていて、
驚いてしまう。
待って、
まだ今日にいたいのに。
お腹がまだいっぱいのまま。
馬鹿だなあ。


もうすぐ、
君がやって来る。
瞳の奥のエゴイズムと、
甘い舌が魅力なの。
目に見えないどこかが、
絡まってほどけないから、
もっともっと、って
もどかしい。
わたしに書かれるのは嫌かしら。
食べられてしまうのは、
嫌かしら。
ああ。
何ひとつ信じてなんていない。
ページの上だけで恋していたいのに、
実感したりも、
痛感したりも、したい。

耐震偽装してるの、わたし。

あらゆることを全部、
打ち明けてみたくなる。









ほんの少しだけ肌寒いのは、
嫌いじゃない。
ほんの少しだけ。

季節が行ったり来たり、
千鳥足。
何か心残りがあるのかも。
それとも何か、
忘れものがあるのかもしれない。

肌寒いの。


あなたは今朝、
普段決してしないような、
乱暴な言葉づかいをしてみせて、
アウトレイジのことを考えていたからこんな喋り方になった。
と、なぜか得意げに言った。
怖かった?と聞かれたから、
うん、と答えたら
またすやすや眠ってしまった。
怖いはずがない。

可愛いひとと暮らすのは楽しい。




















あぁ。
わたしは、
何という映画の中に生きているのだろう。
ロマンチックが過ぎる。
素朴で甘い、昔ながらのお菓子みたい。

ああ、だけど、
こんなヒロインはいなかったから、
きっとわたしは脇役なのだろう。
素敵なきみと、
絵にならないわたし。
タイトルのない映画。
だからわたし、
躊躇なく台詞を言える。
「    」の中なら、
どんなことも美しい虚構なの。

可愛いきみに、
可愛いなんて言われたら、
羽根のように舞い上がってしまうよ。
ふわふわ
ほら。
好きになる。
やわらかい皮膚を揺らして。

身体がどんどん、作用する。
正しい女になってしまうよ。
いけないよね。















きみは、
わたしに言葉を孕ませる。
適切な単語を思い通りに繋げるのは、
とても気持ちがいい。 
そして産みっぱなし。
その無責任さと軽薄さも、
わたしはたのしい。
愉しいの。

あの隠れ家に朝からこもって、
わたしたちは食べつくす。
あらゆるものを。
あらゆる本能を利用して。
それはとても正直で、ただしい行為だ。


今日は、
とても寒い。
寒い日にした恋の記憶がよみがえって、
細胞がざわつく。
何だか物語の世界を生きているよう。
とてもドラマチック。
素面じゃいられない。
だけど、
もっと生々しい感情にふれたい。
実感したいの。

きみは、今どこにいるのだろう。
もう一度、
恋ができたらすてきなのに。