夜明け前。 -286ページ目

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随意。



今夜は、どうするんだったっけ。と、君のヒトコト。

僕の返答は、決まってる。随意。と。

すると、君は、わかった。と、ヒトコト返して電話を、切る。

そして僕は切れたケイタイデンワを、いつまでも見つめて、微笑むんだ。

君も、きっと、同じ仕草をしてると想像しながらね。ツー、ツー、ツー、ツー、プツリ。














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逢いたかったと、君の頬を触れ、君の、髪の毛を撫でたんだ。

人目も気にせずに、君の唇に、自分の唇を押し付けた。唇と、唇が重なった瞬間、君の、匂いが、した。

見た事のない、洋服に包まれた君は、僕の知っている君じゃないような、そんな気がした。

どんな洋服を着てたって、裸になったら、いつもと変わらない君だった。いつもの、僕の、君だった。

東京が、寝静まった真夜中に、静かに珈琲を飲みながら、僕らは、抱き合ったんだ。





僕らは、世界中で一番幸せな朝を、迎えたんだ。












01054








北風小僧が、東京の街を、ケラケラと笑いながら、駆け回っているんだ。

冷たい朝の風の中、背中を丸めて、歩く僕。

ショーウインドゥに、映る自分の姿を見て、やれやれと、想う。こんなに背中を丸めて歩いてたら

年寄りなんだか、若いんだか、わかんないじゃないか。寒いけれど、背筋を伸ばしてシャンとして

冷たい風に立ち向かう。ああ、そういうや、太陽と風って絵本があったっけ。

冷たい風にさらされたり、熱い太陽の日差しに照らされたりする話だったっけ。

あの、主人公が着ていたマントは、どこに売っているんだろう。僕も、あのマントを羽織ったら、

こんな風に背中を丸めずに、いつだって、颯爽と歩けるってのに。北風小僧と、一緒に、駆け回って

君の元まで、飛んでいくのに。な。



すっかり、寒くなったよ、夜なんか特に。人肌、恋しく、ありませんか?僕で良かったら、暖めてあげるよ。